海外は子どもに「成長と社会貢献」を期待、さて日本は?
海外は子どもに「成長と社会貢献」を期待、さて日本は?
教育に関する調査研究事業などを行う公益財団法人スプリックス教育財団(東京都渋谷区)は、「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」を実施。調査項目は多岐にわたりますが、今回は「保護者の『子ども観』と『将来への期待』の国際比較」に焦点を当てた発表を見てみましょう。
日本を含む世界11カ国の小中学生の保護者2313人に「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」と質問しました。その結果、日本の保護者は「家族や友人、自分の意見を大事にしてほしい」と身近な幸せを子どもに期待する傾向が強い一方で、 海外の保護者は「社会に貢献し経済的に自立すること」など、将来の社会的な役割を子どもに期待する傾向が明らかになりました。詳しくご紹介します。
【「基礎学力と学習の意識に関する保護者・子ども国際調査2025」調査概要】
調査時期:2025年4~8月
調査対象:世界11カ国の小学4年生および中学2年生相当の子どもを持つ保護者
調査方法:
(1)インターネットパネル調査 小計1500人
アメリカ、イギリス、フランス、中国、南アフリカ(各300人)
(2) 学校調査(1カ国あたり1~数校の学校および自宅での調査)小計813人
エクアドル(173人)、ペルー(75人)、エジプト(86人)、インドネシア(87人)、ネパール(104人)、日本(288人)
調査主体:スプリックス教育財団
子どもの存在、日本は喜び・かすがい・心配の種
「あなたにとってお子様はどのような存在ですか」という質問に対し、各国の保護者に下記11の選択肢から、当てはまるものをすべて選んでもらいました。
選択肢
①喜び:私の人生に幸せと笑いをもたらしてくれる存在
②かすがい:配偶者・パートナーと私をつなぐ存在
③心配の種:苦労や心配が多い存在
④自立:子自身が自立した存在
⑤社会貢献:将来の社会を担ってくれる存在
⑥将来への希望:自分の夢を託すことのできる存在
⑦経済的責任:お金のかかる存在
⑧相続人:先祖や家を受け継いでくれる存在
⑨将来の介護者:将来、自分の面倒を見てくれる存在
⑩自由の制限:私の自由を束縛する存在
⑪あてはまるものがない
その結果を日本の保護者の回答が多い順に示したものが下図。さらに、日本と他国の回答率の差が大きい6項目について、その回答率の差をグラフにしたのが下図右上の挿入図。

日本の保護者は、子どもの存在を「喜び(私の人生に幸せと笑いをもたらしてくれる存在)」(90%)とする回答が圧倒的に多く、次いで、「かすがい(配偶者・パートナーと私をつなぐ存在)」(32%)や「心配の種(苦労や心配が多い存在)」(26%)といった感情的な家族のつながりを認識していることがわかります。かたや、「自立(子自身が自立した存在)」(23%)や「社会貢献(将来の社会を担ってくれる存在)」(16%)は他国と比べて低い結果となりました。
他国10カ国の保護者も、日本よりは少ないものの「喜び」(パネル70%、学校59%)が最多でした。しかし、2位「社会貢献(将来の社会を担ってくれる存在)」(パネル44%、学校49%)、3位「自立(子自身が自立した存在)」(パネル45%、学校44%)も強く認識されていました。
日本は子どもの存在を「親の喜びであり、家族の絆であり、心配の種である」といった『感情的な関係』として強く認識していました。一方、他国は「親の喜びであるが、子どもは独立した存在であり、将来の社会の担い手である」と認識する傾向が強く、『社会的役割への期待』が日本より強いことがわかりました。
子どもの将来、日本は「身近な人間関係」を重視
「お子様に、将来どのような人になってほしいと思いますか」という質問に対し、各国の保護者に下記の11の選択肢から、当てはまるものを3つまで選んでもらいました。
選択肢
①自分の考えをしっかり持つ人
②自分の家族を大切にする人
③他人に迷惑をかけない人
④友人を大切にする人
⑤仕事で能力を発揮する人
⑥経済的に豊かな人
⑦社会のために尽くす人
⑧周りから尊敬される人
⑨リーダーシップのある人
⑩のんびりと生きる人
⑪あてはまるものがない
その結果を日本の保護者の回答が多い順に示したものが下図です。さらに、日本と他国の回答率の差が大きい6項目について、その回答率の差をグラフにしたのが下図右上の挿入図。

日本の保護者の特徴として、子どもの将来には「自分の考えをしっかり持つ人」(68%)を最も重視し、「自分の家族を大切にする人」(58%)「他人に迷惑をかけない人」(46%)「友人を大切にする人」(38%)といった身近な人間関係を重視する回答が続く一方で、「社会のために尽くす人」(7%)「周りから尊敬される人」(6%)「リーダーシップのある人」(4%)などの社会的な成功への期待は他国と比べて極端に低いことがわかりました。
一方、他国10カ国の保護者の回答は、日本よりは少ないものの「自分の家族を大切にする人」(パネル46%、学校48%)が最多。そして、日本の保護者の回答と比較したときに特に特徴的多いのが「経済的に豊かな人」(パネル47%、学校26%)「社会のために尽くす人」(パネル34%、学校37%)で、社会的・経済的な成功を重視する傾向が表れました。
日本は子どもに「自分の考えをしっかり持ち、他人に迷惑をかけずに家族や友人を大切にする」といった「身近な人間関係」を大切にすることを期待しています。一方の他国は「家族を大切にし、社会のために尽くして経済的に豊かになる」といった「社会的・経済的な成功」を期待していることがわかりました。
日本は身近な関係重視で付和雷同気味?
公益財団法人スプリックス教育財団は調査結果を受けて、次のようなコメントを寄せています。
「日本と海外の“子ども観”と“将来への期待”の違いは、子どもの学習動機づけにも影響を与えている可能性があります。
例えば、日本では『友達が塾に通っているから行く』『友達がやめたから私もやめる』といった、身近な人間関係に基づく学習行動が見られることがありますが、これは保護者の価値観が反映された結果かもしれません。
一方、他国では『家族の期待に応える』『社会的地位を獲得する』といった目標が学習の動機になりやすいと推察されます。こうした違いを理解することは、各国の文脈に適した教育環境を考える上で重要な視点となるでしょう」
(取材・文/大友康子)







