⾼専⽣による事業創出コンテスト「DCON2026」の最優秀賞が決定

●豊⽥⼯業⾼等専⾨学校のチームが1位に

去る5月8日・9日、全国の高等専門学校生(高専)を対象にしたコンテストで、豊⽥⼯業⾼等専⾨学校のチーム名「Kanro AI」が最優秀賞に選ばれました。

そのコンテストは、「第7回 全国⾼等専⾨学校ディープラーニングコンテスト2026」〈主催:DCON実⾏委員会(⽇本ディープラーニング協会、全国⾼等専⾨学校連合会、NHK、NHKエンタープライズで構成)/以下、DCON2026〉の本選です。通称「DCON(ディーコン)」として知られています。高専生が、ものづくりと AI(ディープラーニング)の技術を活用し、社会課題の解決や新たな価値創出につながるプロダクトやサービスを考案し、ビジネスとしての価値を競います。最大の特徴は、事業性を「企業評価額」という投資価値で評価する点です。コンテスト内の評価だけでなく、現実のビジネスの世界と同じ基準で評価することで、⾼専⽣が生み出す成果の価値を正当に評価し、その可能性を社会へ広く発信することを目指しています。

2019 年のプレ大会からスタートし、7回目となる本年度は、過去最多となる40高専、91チーム、119作品の応募のなかから、一次審査・二次審査を通過した10チームが本選の会場となった東京・渋谷ヒカリエホールに集結。1日目の技術審査と2日目の舞台上でのプレゼンテーション審査を経て、最優秀賞や大臣賞などの各賞が決定しました。

●最優秀チームの企業評価額は5億6,000万円

最優秀賞(1位)に選ばれたのは、豊⽥⼯業⾼等専⾨学校(チーム名:Kanro AI)で、作品名は『Pipe Eye』。⾃動⾛⾏・リアルタイム画像認識・報告書作成機能を備えた下⽔道の⾃動点検ロボットで、企業評価額5億6,000万円という高い評価を受けました。

審査員の松本真尚氏のは、「今回の時価総額5億6,000万円という数字は、AIの進化に即した『メーター単位の課⾦』という⾰新的なビジネスモデルのポテンシャルを正当に評価した結果です。ハードウェアへの初期投資さえ済めば、事業の成⻑とともに⾃然と⿊字化へ向かう極めて合理的な設計であり、今のAIトレンドにこれほど合致した稀有な事業案は他にありません。「これで終わらせてはもったいない」と確信していますので、⼀刻も早く起業に踏み切って欲しいです」と称えました。

2位には、企業評価額は4億円という評価を受けた、沖縄⼯業⾼等専⾨学校(チーム名:Rewave)による『通信の空⽩地帯を消す! AIで被災地を可視化する災害デバイス「アドフォン」』が選ばれました。通信途絶下でも安否確認等が可能な被災地を繋ぐ次世代防災通信システムで、審査員の佐藤真希⼦氏は「災害⼤国⽇本において、デマに惑わされない正確な情報を「国産」かつ「誰もが⼿に取れる価格」で届けるという解決策は、特許に裏打ちされたディープテックとしての凄みと⾼専⽣らしい発想⼒が⾒事に融合している」とコメント。 企業評価額3億円で3位となったのは、沖縄⼯業⾼等専⾨学校(チーム名:Seesar Labs)による作品『HIKES』です。 AIカメラと地上⾛⾏型ロボットを⽤いた初期消⽕特化型の次世代消防プラットフォームで、審査員の関美和氏は、「⾸⾥城の全焼という強烈な原体験を、初期消⽕技術という確かなソリューションへ昇華させた着眼点が⾒事でした」と評価しました。

●スタートアップにおける真の「勝利」とは

DCON実⾏委員⻑で東京大学大学院工学系研究科教授の松尾豊氏は、「本⽇、渋⾕に集結した163名の⾼専⽣による熱意あふれる発表は、どれも⾮常に素晴らしいものでした。今⽇という⽇が、参加した皆さんにとって⼈⽣の⼤きな転機となることを⼼より願っております。⼀⽅で、スタートアップにおける真の「勝利」とは、単なるコンテストの順位ではありません。実際にプロダクトを作り、それが社会で成功して初めて価値になります。今⽇の結果を一つの糧とし、実際の社会という⼤きな舞台でチャレンジし続けてください」とエールを贈りました。

●7回目を終えて「時代が追いついてきた」

本選終了後には、最優秀チームの豊⽥⼯業⾼等専⾨学校のチーム「Kanro AI」と松尾豊氏が囲み取材に応じました。

チームのリーダーを務める生徒は、高専に通っているメリットとして、「5年間の教育で専門知識がつきますし、大学受験がないので、こういったこと(研究やコンテスト出場)に熱中できるというのが強みだと思います」と話し、受賞の感想や今後の目標については、「まだ実感がないけれど、僕たちの着眼点や技術を評価していただけて嬉しいです。まだ知識が不足しているので、知識をつけながら着実に進めていきたいと思っています。学生のうちに1回は起業してみたい」と笑顔を見せました。

松尾氏は、「2019年にプレ大会を始めた時は今ほど高専や起業が注目されていませんでしたが、時代が追いついてきたように思います。文部科学省でも高専生にスタートアップ育成をするという取り組みも始まり、機運も盛り上がってきたので、この7年間やってきてよかったなと思います。今の課題は、成功例を出すことです。DCON卒業生によるスタートアップ企業のなかから上場する企業が一社でも出てくると、さらに盛り上がると思います」と本大会の手ごたえを述べました。

また、高専と大学の教育の違いについては、「高専の教育は実践型で、自分で手を動かしてプロジェクトをやってみて、試行錯誤するなかで学んでいきますが、大学の教育では基礎や理論を重んじる傾向があるので、だいぶ違いますね。AI時代においては、高専型の実践的な面が合ってると思います」と話しました。

なお、「DCON2026」本選の模様は、JDLA公式YouTube チャンネルで視聴可能です。(視聴URL:https://www.youtube.com/live/5LCJDsg9ejw?si=czlExvXR60bYBcyI

●公式サイト/https://dcon.ai/

(取材・文/中山恵子)