高校生の大学選び最新動向と教育の課題とは? 担当者に取材
『進学ブランド力調査2026』の結果発表
日本の高校生の大学選びの動向がわかる『進学ブランド力調査2026』が発表されました。この調査は、株式会社リクルートが運営する「リクルート進学総研」が2008年より実施しているものです。今年の調査結果を紹介するとともに、詳しい解説や最新情報を「リクルート進学総研」所長・小林浩(こばやし・ひろし)さんに伺いました。 ※調査について。2026年4月1日~5月6日までインターネット調査を実施。全国の高校に通う2027年3月卒業予定者(調査時高校3年生)20万3,360人を対象とし、リクルートが運営する「スタディサプリ」会員より抽出。有効回答数は1万7,257人で、分析対象は有効回答のうち大学進学希望者1万5,263人。
「志願したい大学」は6エリアで私大が1位
全国を7エリア(関東甲信越、東海北陸、関西、北海道、東北、中四国、九州沖縄)に分けて調査したところ、関東甲信越、東海北陸、関西、北海道、東北、九州沖縄の6エリアで私立大学が1位、中四国では国立大学が1位となりました。関西の近畿大学は初の単独1位(2017年に関西大学と同率1位)に。北海道も北海学園大学が初の1位となりました。
「知っている大学」は総合大学が上位に
関東、関西などの都市圏の総合大学がどのエリアでも上位にランクインする結果となりました。
「国公立」「私立」の志向は、国公立が微減
「国公立の大学にぜひ行きたい」と「どちらかといえば国公立の大学に行きたい」の合計が、昨年の46%から44%に微減した一方で、「私立の大学にぜひ行きたい」と「どちらかといえば私立の大学に行きたい」の合計は41%から42%と微増。前年と比較すると、わずかに「国公立大学」と「私立大学」の志望層の差が詰まりつつあることがわかります。
進学先検討時には「学びたい学部・学科がある」を重視
進学する学校を選ぶとき重視するのはどのようなことか、を聞いたところ、上位3項目は「学びたい・興味ある学部や学科がある」(57%)、「就職に有利である」(38%)、「学生生活が楽しめそう」(37%)でした。昨年最重視されていた「交通の便が良い」は(52%)から(31%)まで大きく下がりました。
学びの中身と就職の有利さに加えて、親しみやすさも重視
今回の調査結果について、小林さんはこのように解説します。
「知名度ランキングと志願度ランキングを分析すると、例年同様に、知名度では関東、関西などの都市圏の総合大学が7つのどのエリアでも上位にランクインしています。一方、志願度では上位20位のうち、東北で7校、中四国で8校を他エリアの大学が占めており、自エリア以外が選択肢に入っていることがわかります。高校生が進学先を選ぶ際の重視項目で、上位3項目は『学びたい・興味ある学部や学科がある』『就職に有利である』『学生生活が楽しめそう』でした。また、進学したい大学のイメージで、上位3項目は『親しみやすい』『活気がある』『おもしろい』でした。高校3年生の4月時点では、学びの中身と就職の有利さという条件に加えて、親しみやすさや活気を求めたい、という高校生の思いが垣間見えます」
文系理系の傾向はあるが、文理分断の解消が今後の課題
進学先を選ぶ際の重視項目では『学びたい・興味ある学部や学科がある』が1位ですが、文系・理系の志願者にとってやや傾向が異なるといいます。
「入試が多様化して進路の選択肢が増えたので、偏差値だけで考えるのではなく、学びたい内容で選ぶという声が多くなっているように思います。文系理系の志願者別に見ていくと、文系志願者は『就職に有利である』『自分が成長できそう』が上位に入り、理系志願者では『学びたい・興味ある学部や学科がある』『専門分野を深く学べる』などが上位でした。ただし、現在、日本の教育では文理分断の解消が大きな課題となっているので、こうした分け方も変わっていくと思います」
文理分断の解消を目指すことで、入試や高校の学習方法は変わっていくのでしょうか。
「いまでも多くの高校で高2の時点で生徒に文系か理系かの選択をさせますが、早期にこのような分け方をしているのは世界中で日本だけです。文部科学省では、今後、理系人材が不足することに備えて理系の大学や学部に多くの予算をつけていますが、思うように学生が集まらない大学もあり、その一因として高校で文理選択をしていることが挙げられます。また、理系といっても単にその分野だけができればよいのではなく、現代に求められているのはAIを使いこなせる文理融合型の人材です。理系の技術を持ちながらも、それを伝えるには日本語力が必要、海外に発信するには英語力も必要、さらに表現方法としてアートの分野の知識も必要です。いわゆるSTEAMという考え方です。
一般入試が主だった時代は文理分けが成り立っていましたが、現在はかつてAO入試と呼ばれていた総合型選抜や推薦入試も増えています。同時に、知識を覚える学習から探究型学習へと移り変わってきています。自分で問いや課題を見つけて、その解決方法を考えるというプロセスが重要視されるようになってきたのです。そこで必要になるのが、先ほども述べたように文理を横断した学習になります。現在、探究型学習に力を入れている高校も増えてきています。
興味深いことに、難関大学の大学院に進む学生たちを調査したところ、一般入試で入ってきた学生より、総合型選抜で入ってきた学生の方が多いことがわかりました。大学入学がゴールになってしまうのではなく、自分の興味ある分野をもっと学びたいという意欲があるかどうかの違いかもしれません」
帰国生ならではの有利な点を大事にしてほしい
最後に、長年にわたり高校生の大学選びの動向を見続けている小林さんに、保護者に伝えたいことを伺いました。
「小さい子どもはあらゆることに興味を持って目をキラキラさせて『なぜ?』と聞いてきますが、あのような好奇心を大切に育み続けてほしいと思います。現在、教育現場では、先生から知識を教わるだけではなく、自分で学んでいく力を育むことが重要視されるようになりました。そのことを念頭に置きながら、進路選びや日々の学習をサポートしてあげてほしいと思います。また、帰国生の方々については、せっかく得た英語力を磨き続けてほしいと思います。翻訳アプリがあるから英語はできなくてもよい、と言う人もいますが、やはり瞬時に自分の言葉で伝えられるコミュニケーション能力は重要です。そして、社会で活躍するには異文化理解が欠かせないので、帰国生のみなさんが海外生活で多かれ少なかれ感じたであろうカルチャーギャップの感覚を大事にしてほしいと思います」
(取材・文/中山恵子)
調査の詳細は、リクルート進学総研サイトに掲載されています。
https://souken.shingakunet.com/research/2012/07/post-66a6.html
お話を伺った方

リクルート進学総研 所長 小林浩さん















