インターで学ぶケンブリッジ国際と国際バカロレア ~比較ポイント② 学び方編ー2~

徹底的に比較します

ケンブリッジ国際と国際バカロレア――
日本のインターナショナルスクールで主流となっているこの2つの教育プログラム。どちらも同じ「国際教育」という枠組みにありますが、教育哲学や学びへのアプローチが大きく異なるのをご存じでしょうか。
今号では、その違いを徹底比較。母体や学び方の特徴、評価方法、大学進学へのプロセスなどを、それぞれの専門家の監修のもと詳しく解説します。
さらに、実際にプログラムを履修中の現役生や修了した卒業生の“生の声”も掲載。科目の選び方から心に残った授業まで、経験者ならではの具体的なエピソードをご紹介します。

お話を伺った方

ケンブリッジ国際について
中川 千穂(なかがわ ちほ)氏
ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス副校長。都内私立一条校勤務を経て、現職。日本のケンブリッジスクールコミュニティボードのメンバーとしてケンブリッジ国際教育に関わる。

国際バカロレア(IB)について
ドカティー 博美(ひろみ)氏

アオバジャパン・インターナショナルスクールに勤務。シンガポールと日本でIBの指導とリーダーシップの経験がある。子どもは2人ともIBでの学びを経て、現在はイギリスの大学に在学中。

比較ポイント、学び方

では実際に、どのような授業を通して、どのような力をつけていくのでしょうか。
その過程から、それぞれのプログラムに向いている学習者像も見えてきます。

ケンブリッジ国際

心に残っている授業は?

現役生:スペイン料理店に行って実践的に学んだ「Spanish」の授業

とにかく楽しかったのは、「Spanish」の授業で先生がスペイン料理店に連れていってくれたこと。ごちそうを食べながら、スペイン語を実際に使う経験ができました。僕はオランダのIB認定校に6年間通い、Year8から日本のインターに編入してケンブリッジ国際で学んでいます。それまでなかった科目が選択科目内にあり、チャレンジできるのも嬉しいです。Y・Oさん(IGCSE/Year10)

現役生:様々な背景を持つ人物を演じた「English」の授業

「English」の授業で、スキット(短い劇)に参加したときのことが、これまでで一番心に残っています。国籍や文化が違う人物を友人たちと一緒に演じ、思い切り楽しむことができました。また、同じ「English」の授業でよくするディベートも、いつも楽しみにしています。これからもこのディベートを通して、人前で話すスキルを高め続けていきたいと思っています。M・Hさん(IGCSE/Year9)

現役生:クラス全員でアプリを開発した「Computer Science」

「Computer Science」の授業では、コーディングプロジェクトに取り組む機会があります。クラス全員がチームとなってノートアプリ(様々な情報をデジタルで集め、整理し、保存・検索できるアプリ)を開発したこともありました。共同作業の際には、プロフェッショナル向けのソフトウェアも使わせてもらい、難しさと同時に楽しさも味わいました。L・Tさん(AS & A Level/Year12)

向いてるのはこんな人かも!

得意分野を深く掘り下げ、専門性を最大限に高めたい人

問いに対して論理的な思考を深めたい人

明確な目標に向かって着実に学び進められる人

授業の特徴

大きな特徴の一つは、選択科目が圧倒的に多いこと。IGCSEでは通常「英語」「数学」「理科」が必修科目として設けられているが、それ以外の2〜5科目は、5つのグループ「言語」「人文・社会科学」「科学」「数学」「クリエイティブ・専門・職業」に分類された約70種類以上の科目から選択できる。さらにその先のAS & A Levelに至っては必修科目がなく約55種類の科目から通常3〜4科目を選ぶ。そしていずれも理系・文系のバランスを意識する必要はなく、純粋に自分の興味や将来の進路に応じて科目を決められる。

もう一つの特徴は、自ら選んだ科目を徹底的に深く学べること。特にA Levelでは、日本の高校の学習指導要領の範囲を超え、大学の教養課程に近い内容にまで踏み込むこともある。身につける知識は膨大だ。しかし、それだけでは終わらない。それらの知識をもとに、簡単には答えの出ない問いを考え抜き、ときには議論を重ね、根拠を示しながら結論を導き出し、それを論理的かつ明確に伝える力を磨いていく。知識は単に覚えるものではなく、使いこなすものという大前提のもと、アウトプットを軸とした学びが展開される。

「ケンブリッジ国際が何よりも大切にするのは、問いを立てながら学びを深めていく姿勢です。高い英語運用力を活かし、問いに対して根拠を示して論理的に説明できたときには、格別な達成感を感じられると思います。好奇心を原動力として学び、得意分野を深めることが好きな生徒にとっても、楽しい環境となるはずです」(ローラスの中川氏)。

国際バカロレア

心に残っている授業は?

現役生:映画の一場面を仲間たちと再現した「English」の授業

映画『Hunt for the Wilderpeople』を観て分析し、劇で再現した「English」の授業。各自が映画の一場面を選び、自分ならどう動くか、どう見せるかという独自の工夫や創造性を盛り込みながら演じました。作り上げる過程も楽しかったですが、仲間の個性あふれる作品を観るのが本当に感慨深く、学校生活の素晴らしい思い出としてずっと心に残ると思います。M・Iさん(MYP/Grade9)

現役生:チョコレートの販売に向けて戦略を練った「I D U」の授業

「I D U(※)」で取り組んだ、チョコレートのカンパニープロジェクト。3Dプリンタでチョコを成型し、商品化・販売に向けた準備をシミュレーションしました。ブランドコンセプトの設定、ターゲット層の分析、パッケージデザイン、マーケティング戦略など、企業活動に必要なプロセスを1から自分たちで考え、形にする経験は刺激的でした。K・Tさん(MYP/Grade9)

現役生:否定されない学びの場と感じられた「English」と「Japanese」

自分の考えを伝える機会の多い「English」と「Japanese」の授業。あるとき、課題図書の解釈で的外れとも思える発言をしてしまったのですが、先生は「その視点は考えもしなかった」と肯定し、褒めてくれました。多様な視点が尊重され、否定される恐怖がない環境だからこそ、内気だった私も堂々と自分の言葉で発信できるようになりました。M・Mさん(DP/Grade12)

向いてるのはこんな人かも!

自分とは何者か、グローバルな視点で自己理解を深めたい人

・教科の枠をこえて学び、社会で使えるスキルを高めたい人

・グループワークやプロジェクト型学習を楽しめる人

授業の特徴

学びの柱となるのは、教科の枠を越えたアプローチだ。例えばMYPの「IDU(※)」では、2つ以上の教科の知識や考え方を理解し、それらの見方を合わせて新たな知識を生み出していく。数学の論理的な法則と視覚的な表現を結びつけて学ぶ「Mathematics × Arts」や、現実社会の様々な課題を科学的な視点から分析する「Individuals & Societies × Sciences」などがその一例となる。

また、プロジェクトやグループワークの多さも大きな特徴だ。生徒たちは日常的に課題を設定し、資料やデータを収集・分析し、討論や発表を重ねていく。そこでは多様な見方が尊重される。様々な視点を取り入れ、批判的思考を使って、結論を構築していくのだ。

「MYPの『Language and Literature』の授業でも、チームで協働するプロジェクト形式を取り入れ、地域の人々にも協力していただきながら、現実社会に近い形で学びを進めることが多いです。例えば沖縄に1週間滞在した修学旅行の機会を有効に使って、3〜4名のチームに分かれ、プロジェクトを実施。『沖縄について』『方言について』など基本的なことを事前に調べて学びの基盤を整えたあと、チームごとに独自の問いを立てました。沖縄に到着してからは、政府による言語政策が施行された当時について年配の方3名にインタビューを行ったり、地元の文献を調べたりしました。そうして、『母語や方言はなぜ継承すべきか』『自分にとって母語や方言とは何か』を探究していきました」(アオバジャパンのドカティ氏)。

※…Interdisciplinary Unit。学際的な学習。学問の垣根を越えて、複数の分野を組み合わせる学習のこと