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渡航前とは大きく違う!?帰国前に知っておきたい日本の小中学校の学習環境|叶いそう?難しそう?帰国生の望む学校生活Q&A

グローバル化、デジタル化、少子高齢化が進みゆくなかで、働き方改革もスタートして5年。様々な要因が絡み合い、義務教育は転換期を迎えています。今回は数ある変化のうち、「学習環境の変化」に着目。私立校だけでなく、公立校でも、時代に合わせた試行錯誤が始まっています。

日本の学校に通う帰国生たちに「学校生活で変わってほしい点」を伺うと、様々な願いが集まりました。これらの願いは4つの変化で叶うのでしょうか。専門家の皆さん、教えてください!

変化1|ICT活用機会の増加で願いは叶う?

情報教育を推進する福田晴一氏の考え

調べたり発表したりする授業が少ないと思う。増やしてほしい

情報教育を推進する
福田晴一氏の考え

N.Y.さん(メキシコほか4~6年、中2女子)

「学習指導要領の改訂に伴い、小学校でICTを使った調べ学習や発表の機会が増加。中学校ではICTを使った地域密着型のPBL(※)が活発化。また探究的な学びの表現を重視する大学入試方式が増え、その備えとしても、この希望に合う授業はより多くなるはず」

日本の小・中で習ったことを前提に授業が進んでいくのがつらい。どうにかならないかな?

情報教育を推進する
福田晴一氏の考え

K.O.さん(アメリカ2~4年、高1男子)

「未習範囲の学習をサポートするアプリを、学校の端末に導入するケースが増加。そうしたものを活用するのがおすすめです。また、授業中に端末を使用できれば、わからないことをその場でサッと調べられるため、先生に事情を説明して許可してもらうのも手です」

小テスト、中間・期末テスト…テストが多すぎる。減らしてほしい。

情報教育を推進する
福田晴一氏の考え

Y.S.さん(ドイツ2~4年、中1男子)

「漢字・英単語・計算等は、繰り返しの取り組みを大事にするためにも、学習の定着度を見るためにも、継続されるでしょう。定期考査に関しては“知識量を計るもの”から“課題にどう向き合い表現できるかを見るもの”へ。記述式の問題が増えていくと思います」

ヤル気が出るので日本でも飛び級制度を導入してほしい。

情報教育を推進する
福田晴一氏の考え

S.H.さん(フランスほか2~4年、中1男子)

「才能を突出させることでなく、公平性を担保することを一番に考えるのが明治から続く公教育制度。近年ではICTによって個々に合う学習がしやすくなってきてはいます。それでもやはり飛び級導入のための学校教育法改正となると、まだ先のことと推察されます」

※…「Project Based Learning」の略。問題解決型学習のこと。

変化2|小学校での教科担任制導入で願いは叶う?

何時間も同じ教室の同じ席で授業を受けると飽きるし疲れる。教科ごとの教室を作ってほしい。

明治学院大学専任講師
星野真澄氏の考え

Y.A.さん(オーストラリア4~6年、小4女子)

「音楽、図工、家庭科、理科など専門の機材や教材を扱う授業は教科の教室で行う学校が多いですが、ほかは現状維持でしょう。日本では職員室での教員間の繋がりが重視されており、生徒は教室を動かず教員が移動することが効率的とも考えられているためです」

先生が一人で話し続ける授業が多い気がする。自分ももっと授業に参加したい。

明治学院大学専任講師
星野真澄氏の考え

R.S.さん(シンガポール4~6年、小6男子)

「教科担任の教員は同じ単元の授業を複数のクラスで行うため、様々な児童の反応を見られます。反応が薄ければ別のアプローチを考え、授業改善につなげることもあるでしょう。もちろんそこには、主体的・対話的な学びの実現に向けた授業改善も含まれます」

授業がいつも決まった内容や流れのように感じる。より面白い授業をしてほしい!

明治学院大学専任講師
星野真澄氏の考え

J.K.さん(タイ2~4年、小5女子)

「教科担任制になると、教員には授業を担当しない空き時間ができ、そこで授業準備や教材研究ができます。主体的・対話的で深い学びに向けて教育方法を刷新したり、多様な教材を取り入れたり…。高度な学びを叶えるための授業の質的改善も大いに期待できます」

先生と生徒の上下関係がはっきりしすぎている。もっと楽しく、先生と話せたらいいな。

明治学院大学専任講師
星野真澄氏の考え

S.N.さん(アメリカ2~4年、小5女子)

「教科担任制によって児童は一人の先生から全教科を学ぶのではなく、複数の先生から様々な教科を学びます。楽しく話せる相性のよい先生と出会うチャンスも増えますね。また、『あの授業でこんなことをしたよ』というように学級担任の教員との話の種も増えます」

変化3|不合理な校則の見直しで願いは叶う?

考え方に関しても、見た目に関してももう少し個性を尊重してほしい。

名古屋大学大学院教授
内田良氏の考え

M.S.さん(中国8~10年、中3女子)

「校則改革の機運は社会的に高まっています。校内にも問題意識を持つ先生が増えつつあるはずです。“この先生ならきっと私の個性を尊重してくれる”と感じられる先生を見つけて、要望を具体的に使えると、それをきっかけに校則の見直しが進む可能性もあるでしょう」

家族と連絡をとりたいときもある。学校へのスマホ持ち込みがOKにならないかな?

名古屋大学大学院教授
内田良氏の考え

H.O.さん(アメリカ4~6年、中3男子)

「スマートフォンの利用は学校にとって新しい課題。各校で議論が交わされています。全国的なトレンドとしては“徐々に解禁されつつある”といったところ。持ち込みをOKとしている近隣の学校の例を調べていくと、具体的な可能性が開けてくることでしょう」

授業中にお腹がすいて、昼食まで待てない。スナックタイムの導入希望!

名古屋大学大学院教授
内田良氏の考え

E.K.さん(フィリピン6~8年、中2男子)

「日本ではその習慣がないだけに、導入を希望しても学校側がひとまず抵抗を示すはず。ただし、議論の余地はあります。ルールの原則とは“人に迷惑をかけなければ自由にしてよい”ということ。この原則に立ち返って、スナックタイムの是非を議論すべきでしょう」

生徒たちが委縮せず、校則に対して自由に意見を言える学校になってほしい。

名古屋大学大学院教授
内田良氏の考え

H.H.さん(シンガポールほか8~10年、中3女子)

「そもそも校則と呼ばれるものには、正式なものから噂レベルのものまで様々な形態があるため、各校での整理と見直しが先決です。そして、生徒が意見を言える学校の実現には、そのためのルールの明確化が不可欠。今まさに専門家の間でこの方法が議論されています」

変化4|部活動の地域移行で願いは叶う?

土日や長期休みを含めて部活が忙しすぎる。もう少し活動を少なくしてほしい。

日本部活動学会初代会長
長沼豊氏の考え

K.K.さん(オランダほか6~8年、中3男子)

「地域移行が進めば、選択できるクラブが増 加。活動のゆるいクラブに入ることによって、 “土日や長期休みは休む”といった活動形態を 選べるようになるでしょう。 逆に“もっと頑 張りたい”と考える生徒も、それが叶う活動 場所や活動形態を見つけやすくなります」

上級生たちは技術が高くなくてもコンクールに出られる。年功序列の部活文化はなくなってほしい。

日本部活動学会初代会長
長沼豊氏の考え

H.N.さん(フランスほか4~6年、高1男子)

「地域移行が進めば、これまでの学校部活動とは異なる価値観や習慣が生まれるでしょう。例えば個々に焦点が当たるようになるなど、大会やコンクールのあり方も変わる可能性があります。そうなると、年功序列の文化を気にせずに活動できるようにもなるでしょう」

私の部の顧問の先生は命令が多い。生徒と先生が一緒に部活をもっと楽しめたらいいのに…。

日本部活動学会初代会長
長沼豊氏の考え

S.N.さん(ニュージーランド2~4年、中2女子)

「顧問の先生は“〇〇地区での優勝”など、学校としての目標を達成しようと必死なのかも。地域移行が進めば、個々の目標を見据えつつ、地域のクラブの指導者と楽しく活動できるでしょう。ただし、クラブが高い目標を掲げている場合もあるため、入る前に確認を」

部活の仲間とはタメ口で話したい。敬語を使ったり使われたりすることに、いつまでも慣れない。

日本部活動学会初代会長
長沼豊氏の考え

S.K.さん(タイ10年以上、中3女子)

「先輩・後輩関係など、日本特有の厳しいしきたりは撲滅すべきと考える指導者も増えてきており、変化が予想されます。それに伴い、敬語の使い方も変わっていくのではないかと思います。地域移行後の部活動は、これまでの学校部活動とは異なるものと考えましょう」

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