STEAM教育とは? 内容やメリットを分かりやすく紹介!

皆さんは、「STEAM教育」について、見たり聞いたりしたことはありますか? 日本では、最近、さまざまな場所でSTEAM教育という文言にふれる機会が増えています。私立の中高一貫校での説明会や学校案内、プログラミングスクールのパンフレットに書いてあったり、知育教材のパッケージにも「STEAM教育対応」などという記載のシールがついていたります。「なんだかすごそうだけど詳しくは知らない」という方へ、STEAMの内容やメリットについてご紹介します。

目次

STEAMって何の略?

STEAMは「スティーム」と読み、次の5つの頭文字をとった言葉です。

S…Science(科学)

T…Technology(技術)

E…Engineering(工学)

A…Arts(人文社会・芸術・デザイン)

M…Mathematics(数学)

以前は「A」を除いた理数系の4分野(Science、Technology、Engineering、Mathematics)の頭文字を組み合わせた「STEM(ステム)」とされていましたが、2020年頃からArts(人文社会・芸術・デザイン)が加わり、現在のSTEAMになっています。

STEAM教育での学び方

STEAM教育では、この5つの分野を重視し、授業の中でさまざまに組み合わせながら学んでいきます(教科と教科を組み合わせながら学ぶので、教科横断学習と言います)。一例を挙げると、こんな感じです。

「理科の実験」STEAMで学ぶとこうなる(一例)

今まで…先生が黒板に手順の説明を書き、それをノートに書き写し、生徒が説明通りに行う。知識偏重で単調。

STEAM…先生が生徒へ、テコの原理や構造について、物理や数学などあらゆる側面から知識やヒントを与える→生徒たちの発想の引き出しが増える→「遠くに重いものを飛ばす投石機を作ろう」といった課題を出す。生徒は、得た知識や自らの発想を総動員して投石機作りに没頭できる!

STEAM教育の目的

STEAM教育の目的は、AIやIoT(住宅・建物、車、家電製品、電子機器などさまざまなモノをインターネットにつなぐ技術)などが急速に進む現代社会で、問題を発見し、解決する力を子どもたちに養ってもらうことです。

複雑に物事が絡み合う時代で問題を発見し、解決していくためには、今までのように「文系」「理系」といった単純な分け方をせず、5分野の教科の学びを集結させて、さまざまな情報を活用しながら挑む必要があるからです。

STEAM教育の始まりはアメリカ

STEAM教育の前身であるSTEM教育が誕生したのは、IT化やグローバル化に対応する人材育成の必要性が叫ばれつつあった2000年前後のアメリカです。その後、2009年に、STEM教育の質を上げるために、多額の民間投資が始まりました。そして、2013年に、当時のオバマ大統領が発した「新しいゲームを買うだけではなく、作ってみよう!最新のアプリをダウンロードするだけではなく、創造してみよう! スマホで遊ぶだけではなく、プログラミングしてみよう!」という言葉によって、全米に浸透しています。

ちなみにイギリスでは、2004年に「科学とイノベーションにつながる投資に関する10ヵ年計画」を打ち出しています。そしてEUでは、2015年に「EU STEM Coalition」というプラットフォームを創設し、産官学で連携してSTEAM教育を支援しようと動いています。

日本でのSTEAM教育

日本では、STEMとSTEAMの混在が見られるなどの混乱がありつつも、2018年の文部科学省発表の「Society 5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが 変わる~」という人材育成方針でSTEAM教育が取り上げられるなどした結果、次第に広まっていきました。

そして今では、一部の先進的な私立学校だけだったSTEAM教育の実施が、公立校へも広がりつつあります。日本でのSTEAM教育の広がりについて、その一例をご紹介しましょう。

広がる日本でのSTEAM教育(一例)

●STEAMを取り入れた新しい学習指導要領がスタート
幼稚園では2019年、小学校では2020年、中学校では2021年、高校では2022年に、STEAMを取り入れた新しい学習指導要領が全面的にスタート。日本全国でSTEAMを取り入れた授業が行われています。

●「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」が200校以上に拡大
スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは、科学技術関係の人材を育成するための文部科学省の事業。先進的な理数教育を実施する学校を認定して、支援を行っています。この事業を開始した2002年の認定校は26校でしたが、25年近く経って230校以上に拡大しています。

●プログラミング教育の必修化・充実
小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化。中学校では2021年度から「技術・家庭科」の技術分野でプログラミングに関する内容が充実。高校では2022年度から全員共通の必修科目「情報Ⅰ」と、選択科目の「情報Ⅱ」でプログラミングを学ぶことになりました。

●私立校で教科横断型授業が拡大
私立の中学校や高等学校では、「数学×物理」や、「化学×世界史」など教科横断型授業を行う学校が増加しています。また、「数学」や「物理」を英語を使って教える学校、STEAM教育を軸に学ぶコースのある学校も増加しています。こうした流れによって、世界最大の科学コンテストに参加したり、賞をとったりする日本人生徒も少しずつ増えてきていて、国際的にも一定の成果が出始めています。

●公立校でも教科横断型授業が増加
高校では、例えば「技術科」と「理科」を組み合わせてSTEAM教育を行うなど、公立校でも教科横断型授業を行う学校が徐々に増えています。また、ロボット教材を準備して、生徒にセンサー・モーターの制御をプログラムさせたりする先生も増えています。

STEAM教育は何かすごいの?

国際的な広がりを見せるSTEAM教育ですが、学ぶ側としては一体、何がすごいのでしょうか? その代表的な効果をご紹介します。

AIやIoTが進む未来を生きる子どもたちを育てるために、今後も拡大を続けるだろうSTEAM教育。拡大を続ける中で、『勉強は、受験攻略を目的にしたもの』ではなく、『勉強は、自分が創りたいものを創るためのもの』『勉強は、自分なりに答えを見出していくためのもの』というような、発想の転換が進むかもしれません。

STEAM教育のスゴさ5つ

①興味重視だからとっつきやすい

例えばプログラミングで何かを改造する課題では色や音、仕掛けなど、個々で好きなところにこだわることができます。理数系の分野が得意でない子どもも、興味に沿って課題を進められます。

②教科横断型授業で応用力がアップ

教科の枠に捉われず、さまざまな教科の知識や発想を組み合わせてひとつの目標を達成する学びを基本とするため、応用力、さらには物事を多角的に捉えて問題解決する力も高められます。

③失敗を恐れず挑戦できるように

使用する教材はブロックや電子教材など、失敗してもすぐに組み立て直せるものが多いので、スピーディーな試行錯誤が可能になります。失敗もたいしたことではないと思えて、チャレンジ精神が養えます。

④正解のない課題で個性が尊重される

課題にテーマはあっても正解はなく、みんなが同じ答えを出す必要ももちろんありません。このため、周りを気にせずに取り組むことができ、それによって自然と個を認め合う力が付いていきます。

⑤イノベーションを起こす力が付く

課題に取り組み続けていると新しい切り口を考える習慣が定着し、小さなイノベーションを起こすのが得意になっていいきます。ゆくゆくは社会で、大きなイノベーションを生み出す源にもなりうるでしょう。

親子でできるSTEAM教育とは?

理数系の知識や考え方を総動員させて問題を見つけ、解決できる力を身につけるSTEAM教育ですが、日常生活でも、その一部を実践できます。方法は、「問題点の発見と解決」を繰り返す声からをお子さんへすることです。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

STEAM教育につながる家での声かけ

●お子さんが小学生の場合…

小学生段階では、まずは理数的な領域に興味・関心を深めてもらうことが大切です。そこで、「物理現象に気づかせる声かけ」をしてみましょう。お子さんがいつも「あって当たり前」と感じているものに疑問を持てるような声かけがおすすめです。

【例】
コンビニで → 「冷蔵庫からペットボトル飲料を取り出したら、すぐに次のペットボトルが下りてくるのって便利だよね。どうしてそうなるのか、冷蔵庫の中を見てみよう」
公園で → 「落ち葉が木からゆらゆら落ちているね。不思議な落ち方だよね。葉っぱと同じように、薄くて軽い紙も不思議な落ち方をするかもしれないから、家で試してみよう」

●お子さんが中高生の場合…

中高生には、問題解決まで行きつく声かけをしましょう。コツは「日常生活の中から困った事情を探すこと」です。それを見つけたら、次の順に聞き、話をふくらませていきます。

1. どうして?
2. どうする?
3. 他に、この「どうする?」を活かしている場所やモノはないかな?

【例】
困った事例:瓶の飲み物のフタが手で開かない
1. どうして?…手で出せる力には限界がある
2. どうする?…テコの原理を活かした栓抜きを使えば、簡単に開けられる
3. 他に、この「どうする?」を活かしている場所やモノはないかな?…公園のシーソー、ハサミ