帰国生の小学校受験海外滞在時からおさえておきたい5つのこと~おさえておきたい2・3~
近年、日本国内では英語力や思考力、表現力、そしてグローバルな視点を重視する小学校が増加しています。 また、海外赴任者の低年齢化に伴い、幼い子どもを帯同する家庭も増えています。 こうした変化を背景に、海外赴任家庭のあいだでは「受験を経て入学・編入学する小学校」が、帰国後の進路の有力な選択肢として定着しつつあります。そこで今回は、小学校受験に関する基礎知識や最新事情を、専門家監修のもとわかりやすく解説。 さらに、実際に小学校受験をした帰国生の保護者たちの体験談も掲載。 受験前に「やってよかったこと」や「やればよかったこと」など、体験者ならではのリアルな声をお届けします。
Q. 海外から帰国した子どもが受験で入れる小学校の種類は?
⇒ A 受験を経て入れる学校は、大きく下の4つに分けられます。我が子の性格や適性を見極め、「どんな環境なら幸せな学校生活を送れるか」を考えながら志望校を選ぶのがおすすめだといいます。
国立(帰国生枠なし)
カリキュラムは先進的、通学範囲に制限あり
教育学部を持つ大学に設置され、教育実習や教員養成、教育研究の場としての役割を担う。また、通学範囲(学区)が定められている。「『答えを教えてもらう』のではなく、『自ら考え、発見するプロセスを楽しむ』ことを重視した、実験的な授業や探究型の学びが多く行われています。好奇心旺盛で、自分から考えたり試したりすることを楽しめる子に向いていると思います」(伸芽会 谷原氏)。
国公立(帰国生枠あり)
首都圏でも国立2校、公立1校と限られる
東京都内では全7校ある国立小のうち、帰国生を対象とした制度があるのは2校。「1校はIB(国際バカロレア)を取り入れ、帰国児童募集を行う東京学芸大学附属大泉小学校。もう1校は4・5年生を対象とした『帰国児童教育学級』を設置するお茶の水女子大学附属小学校。公立では立川国際中等教育学校附属小学校が唯一『海外帰国・在京外国人児童枠』を有します」(駿台NY校 町長氏)。
私立(帰国生枠なし)
共学・女子校・男子校、教育理念や特色も様々
日本全国には約250校の私立小があり、共学・男子校・女子校という形態から、教育理念、特色まで様々だ。「大きくは、創設者の理念に基づき自ら考え行動する力を育む『伝統・自主・自律系』、道徳心や人間性を育む『ミッション・宗教系』、感性や個性を伸ばす『個性・体験・自然教育系』、英語教育や探究学習に力を入れる『国際・進学特化系』の4つに分類できます」(駿台NY校 町長氏)。
私立(帰国生枠あり)
基本的に編入での募集 受け入れ方法は多様
首都圏だけでも私立小は約100校あるが、帰国生枠を設けて入学試験や編入試験を実施する学校は一部に限られる。「基本的には編入での募集で、受け入れ学年は学校によって異なります。帰国後の適応を支えるため、帰国生のみのクラスを設置する学校や一定期間を帰国生のみで学ぶ学校、入ってすぐに一般生と同じクラスで学ぶ学校など、受け入れ方法も様々です」(駿台NY校 町長氏)。
小学校受験を考えるにあたって、最初に押さえておきたいのが学校の種類だ。受験が必要な小学校は、大きく「国立」「私立」、そして「帰国生向けの受け入れ枠の有無」で整理できる。ただし、東京都には、都立でありながら帰国生枠を設け、小学1年生から児童を募集している立川国際中等教育学校附属小学校という例外もある。
帰国生の受け入れという観点では、国立・私立の帰国生受け入れ校が中心となるが、帰国生枠のない国立・私立小にも、帰国生が多く在籍する学校は少なくない。また、前述の1校を除く公立小には帰国生枠はないものの、国際都市や大都市圏では海外から帰国した家庭が多く暮らすため、結果として帰国生が多い学校もあることを知っておきたい。
では、保護者は何を基準に学校を選べばよいのだろうか。判断の軸となるのは、「我が子に合った環境での充実した小学校生活」を具体的にイメージできるかどうかだという。
「学校選びの段階で、まずは、海外で培った経験を学校がどのように受け止めてくれるのか、日本語力をどの程度求めるのか、入学後にどのようなサポートが受けられるのかを確認しておきたいところです。パンフレットや募集要項だけでは分からないことも多いため、説明会や公開行事にできるだけ足を運び、学校の雰囲気や教育方針を実際に確かめることが大切です。『ここで小学校生活を過ごすことが、我が子の幸せにつながるか』という視点が、学校選びの最も大切な判断基準になると思います」(駿台NY校 町長氏)。
column 日本の小学校のイマ②
ICT教育が特別ではなくなった
「ICT(Information and Communication Technology)教育」とは、インターネットやデジタル教材、タブレット端末などの情報通信技術を活用した学びのこと。かつては1台の端末を複数人で共有する学校も多く活用場面も授業の一部に限られていたが、2019年、文部科学省がGIGAスクール構想を打ち出したことで状況は一変。
児童1人1台端末の整備が進められ、今では全国の小学生約600万人のもとに端末がほぼ行き渡っている。授業での活用はもちろん、課題の提出までクラウド上で行われ、ICTは毎日の学びを支える基盤になっている。これを目の当たりにして驚く保護者も少なくないという。
授業での活用例としては、AIドリルで一人ひとりの理解度に合わせた問題に取り組む、理科の実験を端末で撮影し振り返りをする、音楽で楽器アプリを使って演奏をするといったことが挙げられる。欠席時にオンライン授業に参加する、録画した授業動画を予習や復習に活用するといった実践も広がっているという。
Q. 小学校入試ってどんな内容?評価方法や難易度は?
⇒A. 言語力や思考力を問う「ペーパーテスト」、巧緻(こうち)性や生活力を見る「個別テスト」、社会性を見る「集団テスト」、「運動テスト」、「面接」を基本とし、組み合わせや難易度は学校ごとに異なります。
国立(一般入試)
考査は比較的基礎的だが倍率は高い傾向に
考査内容は学校によって大きく異なり、昨年度の横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校のように、ペーパーテストを実施しない学校も一部見られる。ペーパーテストは多くが基礎中心となるが、考査の前後に抽選が行われ、受験の可否や合否が運に左右される学校もある。募集人数が限られるうえ人気も高く、学校によっては20倍を超える倍率に。
国公立(帰国生入試)
学校生活への適応力重視か、帰国生としての経験重視か
日本語力や学校生活への適応力を重視する場合も、海外での経験や帰国生としての考え方を評価する場合もあり、考査内容は学校によって大きく異なる。例えば昨年度の東京学芸大学附属大泉小学校ではペーパーテスト、面接、作文が実施された。なお同校の一般入試では考査前後に抽選が行われた一方、帰国生編入試験(※2)では抽選は行われなかった。
私立(一般入試)
求める児童像が様々だから内容・難易度も多岐にわたる
伝統校、宗教校、進学校などによって学校の教育方針や求める児童像が大きく異なるため、考査内容や難易度は非常に幅広い。「共通点としては、近年『非認知能力』や『家庭の教育環境』がよりシビアに見られるようになっていること。例えば課題や行動観察で思い通りにいかないときも、あきらめずに前向きに取り組める子が好まれます」(伸芽会 谷原氏)。
私立(帰国生入試)
募集が少ないため一般入試で受験する選択も
帰国生枠は募集人数が少ない場合が多く、人気校では競争が激しくなる傾向がある。「帰国生枠での募集がない、あるいは募集枠が少ないことから、一般入試で志望校を受験するケースも多く見られます」(駿台NY校 町長氏)。帰国生編入試験では学年相応の学力を確認するため、国語・算数などのペーパーテストを設けている学校も多い。
column 日本の小学校のイマ③
STEAM教育で変わる子どもの学び
STEAMはScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Art(芸術)・Mathematics(数学)の頭文字を取った言葉で、「STEAM教育」とはこれらを組み合わせながら課題の発見・解決や新たな価値の創造につながる力を育てる教育のこと。日本では2020年度の学習指導要領改訂を機にSTEAM教育の考え方が広がった。
その一環として、まず「総合的な学習の時間」などを活用したプログラミング教育が必修化された。
具体的な学びの姿は様々で、例えば理科の実験では、食塩を水に溶かしながら溶ける量や温度の変化を記録し、グラフにまとめて分析。理科の観察に算数の視点を重ねることで、実験を「見て終える学び」から「考えて確かめる」学びに変える。ほかにも、ロボットを組み立ててプログラムを組み動かす授業や、地域の課題の解決策をプログラミングと総合学習を組み合わせて考える授業なども登場している。自分で考え手を動かす経験こそが、STEAM教育の核となっている。
掲載問題/2問とも、伸芽会「有名小学校入試問題集 2026年度版」より抜粋
※1…小学校入試では、問題文を文字で読ませるのではなく、音声による指示や絵・図、手本などを用いて出題する形式が一般的。解答も文字を書くのではなく、「○をつける」「線で結ぶ」といった方法で行う
※2…1・2年生(一般学級へ混入)と3〜6年生(国際学級)が対象
文・編集/本誌編集部、庭野真実 イラスト/Okuta
お話を伺った方

小学校受験指導の専門塾
伸芽会
谷原 優子 氏
幼児教育歴約30年、慶應幼舎、早稲田実業学校初等部、雙葉小学校などへの豊富な合格実績を持つ。現在は教育研究所でカリキュラム監修や後進の指導、長年の経験に基づく情報発信などを行っている。

小学校受験指導の幼児教室
こぐま会
廣瀬 亜利子 氏
こぐま会の元教育部長、帰国子女・小学校受験指導に35年携わり、学習院初等科や聖心女子学院初等科などへの合格者を多数輩出。現在は海外在住者の受験準備から帰国後の学習サポートまで行っている。

帰国生入試・編入試験に対応する
駿台NY校
町長 扶実子 氏
2001年よりNY州で小学校受験指導を開始。小学校編入から高校受験まで、幅広い指導経験を持つ。元ena北米副社長。2026年9月から駿台NY校にて、海外で子育て中の保護者に寄り添う「親塾」を開講。









