学校長インタビュー1|関東学院六浦小学校/校長 黒畑勝男氏

古い教育観から子どもたちを解放し、本来持つ「自己教育力」を伸ばします

―初めに、黒畑先生が教師の道に進まれたきっかけを教えてください。

大学時代に家庭教師を経験しました。普通の教科を教えるだけではなく、本を一緒に読む勉強をしました。「わかった!」という笑みにも動かされましたが、考えて意見をまとめていくという学びの過程への関り、その仕事に興味を持ったのです。

-なぜ、英語だったのですか?

1972年に札幌オリンピックが開催されたとき、私は選手村の近くに住んでいました。そして、世界中からいらした選手や様々な人たちと交流することができて、その経験が大変楽しくて。「英語を使えると、世界が広がって、どこに行っても怖くない」と感じ、英語教室に通い始めたのです。それ以降、英語がずっと好きでした。

-そして大学を卒業後に、教員生活をスタートなさったのですね。

最初は北海道北広島市(日ハムの本拠地)の公立高校に4年間勤務し、その後、40年以上にわたって3つの私立中高で務めてきました。その歩みの中で、私自身の教育観を大きく変える出来事がありました。2000年に開学した立命館アジア太平洋大学(APU)の高校生向けサマープログラムの開発に7年間携わった際、留学生たちの主体性と学ぶ意欲の高さに強い衝撃を受けたのです。この経験を通じて、日本の子どもたちの内向きな視野や考え方を、世界へ向けて実践的に広げていく必要があると強く感じました。つまり、単に英語を教えるだけでなく、国際化に向き合うための本質的なマインドセットの重要性を子どもたちに伝え、実践へつなげる活動をしていかなければならないと考えたのです。

―2014年に勤務校4校目、関東学院六浦中学校と高等学校の校長先生に就任なさいました。

関東学院六浦は長きにわたり探究型の教育を行っていて、そうした点に強く共感したこともあり、校長職をお引き受けしました。日本の教育は暗記中心の行動主義的学習に偏っているケースが多く、そのやり方だと自分で問いを立てて解決に導く力はなかなか身に付けられません。そうではなく、探究心や思考力を育てる構成主義的学習が必要なのです。

―現在は、関東学院六浦小学校の校長先生をお務めです。小学校の教育の特色をお聞かせください。

関東学院六浦には、学力テストでは測りにくい意欲や協調性、主体性といった非認知能力を育むプログラムが数多くあります。たとえば、自分の興味・関心のあるテーマを長期に渡って調査でき、同じテーマを3年間継続して研究することもできます。実際に、タカラトミーのリカちゃん人形を3年間研究した児童がいました。その児童はリカちゃんの歴史を辿るだけでなく、社会状況がリカちゃんに与えた影響、リカちゃんが社会に与えた影響についても探究しました。そして最後に、「このプログラムがなければ、私にとって、リカちゃんはただのリカちゃんにすぎませんでした」という印象的な言葉を残しました。自分の好きなことを深く探究すると、新たな発見や気づきが生まれます。その喜びこそ、子どもたちにぜひ味わってほしいと願っています。

―最後に、海外在住の読者の方々へメッセージをお願いします。

親御さんにお願いしたいのは、子どもたちにたくさんの経験をさせ、多くの本物に触れる機会を作っていただきたいということです。モンテッソーリ教育が重視する「自己教育力」の考え方にもあるように、子どもたちは本来、自ら学び、成長する力の芽を持っています。しかし、日本の高度経済成長期に形成された知識習得中心の教育観や学習方法は、「教えられることが学び」という考え方を定着させ、子どもたちの力を十分に発揮しにくくさせてしまいました。だからこそ、今、大切なのは、子どもたちをそうした枠組みから解放することです。気づきや発見の機会を増やし、自ら学ぶ喜びや、生きることへの自信を育める環境を小学生時代から整えることが、何より大切だと思うのです。

左上:自由に本に出会える開放的な図書館 左下:毎日の礼拝の様子 右:金沢八景ののびやかな環境

SCHOOL DATA

  • ・関東学院六浦小学校
  • ・住所:〒236-0037 横浜市金沢区六浦東 1-50-1
  • ・TEL:045-701-8285(代表)
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編集・文 本誌編集部、田中亜希/学校長撮影 浜田啓子(浜田啓子写真事務所)※その他写真素材は学校提供