帰国体験記3|サレジアン国際学園世田谷中学校 1年生 Kさん

将来の夢は音楽で世界にみとめられること ピアノに情熱を注いでいます。

インクルーシブな環境で過ごしたマレーシアの4年

幼い頃からピアノを学び、現在は全国コンクールなどで数多くの受賞歴を持つKさん。世界での活躍を視野に入れ、毎日数時間にわたるピアノの練習を積み重ねる一方で、オールイングリッシュ授業も数多く展開している中学校で学校生活を楽しんでいる。父親の仕事の都合で生後8カ月から2歳までは中国・北京で暮らしたが、その記憶はない。7歳からはマレーシアのクアラルンプールで生活した。

「マレーシアではIB認定校のインターナショナルスクールに通いました。印象に残っているのは、国籍、障がいの有無を超えて本当に色々な人と自然に学びあえる環境だったなぁということ。そうした環境で学ぶことで、世の中にはいろんな人がいることが当たり前だと心から理解できました。この経験があるから、僕は今でも物事にあまり動じないのかもしれません」

ピアノのために帰国を決意 将来のためにも英語力を

ピアノを第一に考えてきたKさんは、日本でさらにレベルの高いレッスンを受けるために、小学校高学年で帰国を決心した。

「もともとはマレーシアに住み続けるつもりだったのですが、ピアノのために予定を変更。日本に帰ることにしました」

帰国後は、東京都内の公立小学校5年に編入。友だちには恵まれたものの、いくつか問題が発生する。

「漢字の学習が数年遅れていたので、母親と一緒にワークシートで必死に勉強しました。それと、理解できないルールが多くて……。例えば、給食のときにマスクをするのはいいんですが、喋ってはいけなくて。マスクをしているのになぜ喋っちゃいけないのか、しかもNGなのは自分のクラスだけ。理解できませんでした」

中学選びでは、土曜日をピアノの練習日に充てたかったため、公立で考えていた。しかし、そのための学校見学をしたときに「英語」の授業のレベルを知って愕然。もっと高いレベルで英語を身に付けられそうな私立中学に方向転換することにした。そこで探したのが、現在通う中高一貫のサレジアン国際学園世田谷中学校だった。

「数学とか理科や社会をオールイングリッシュで学べるインターナショナルクラスがあったので、帰国生入試で挑戦することにしました。受験を決めてから試験日まで、たった2週間しかなくて焦りましたが、小学生のうちに取っておいた英検準1級のおかげで英語の筆記は試験免除になり、英語と日本語の面接と英語のエッセイでの入試になりました。あまり準備期間もなくて大変でしたが、なんとか合格することができました」

海外の音楽大学入学を目指して忙しい日々を送る

現在所属するインターナショナルクラスには帰国生も数多くいるため、友だちとの日常会話もほぼ英語。これまで培った英語力を保持するのに適した環境だ。

「英語の授業はハイレベルです。それと、同じような境遇の仲間ばかりだから落ち着きます。漢字の練習は今でも続けていて、テストではいい点数を取れるようになってきました。しかし、口語や省略形にはときどき戸惑います。例えば『百円均一』を『百均』と略されてしまうと、何のことか全然わからなかったり」

将来のために、すべきことは山ほどあるが、大変だと思ったことはない。

「将来は音楽を仕事にして、世界で活躍できる人になりたいです。そのために、音楽の基礎となるピアノの練習は毎日欠かせませんし、英語もハイレベルで身に付けていかないといけません。大学はオーストリア、ドイツ、アメリカなどの海外の音楽大学に入学したいので、ソルフェージュという受験科目の一つでもある相対音感レッスンにも取り組んでいます」

滞在歴

日本0歳~8ヶ月
中国8ヶ月~2歳
日本3歳~6歳(小2・7月)、公立小
マレーシア7(小2・8月)歳~10歳(小5・8月)、インター
日本10歳(小5・9月)公立小、私立中

取材・文/本誌編集部、竹部伸(株式会社ニイモモクリエイト)