頑張る気持ちや世相などを詠みこんだ受験川柳を鑑賞
AIを詠み込んだ川柳なども登場
『大学入試シリーズ』(通称『赤本』)で知られる株式会社世界思想社教学社(京都市左京区)は「受験川柳」を毎年募集しており、昨年度は第11回。現役受験生やその家族、かつての受験生など、さまざまな立場の人から、2877句の作品が寄せられました。その中から特に優れた7句を優秀作品として選定。
受験勉強の悲喜こもごもや、AIを詠み込んだ世相を反映した句など、入賞作品をご紹介しましょう。

最優秀賞:諦める? いつも答えは反語形
作者のしおりさん(17歳)は「志望校の判定はE。頑張っても届かないかもしれないという不安でいっぱいになる。だけど諦めるか? と自分に聞いてみればいつも開いている漢文の句形が頭をよぎる。どうして諦めようか、いや諦めない」とコメント。
頑張る受験生の姿に、素直に応援したくなる川柳です。応募締め切りは毎年9月下旬ですが、おそらくしおりさんは受験本番まではもう少し間がある時期に応募したのではないでしょうか。となればE判定から合格へと進むことも十分可能で、これだけひたむきに頑張れるしおりさんはきっと合格を勝ち得たことでしょう。落ちる? いや、落ちようはずがない。

高校生特別賞:自分よりAI様が受かりそう
zakoさん(17歳)は、「自分が解けない問題をAIに聞いて答えがすぐ返ってくるのが、AIさまさまだなと思いながら、自分より受かりそうだと思った自分の情けなさを川柳にしました」とコメント。
弊サイトでも、ちょうど先週、「最新AIが大学入学共通テストで満点9科目」という記事を公開。AIの大学入学共通テストの得点率がは90%に達し、東大文1ボーダーライン(86%)を優に超えていることを紹介しました。
選者を務めた尾藤川柳(びとう・せんりゅう)氏(川柳家、女子美術大学特別招聘教授)はzakoさんの不安に対し、「あなたの可能性は、AIよりも遥かに広い世界を持っているだろう。この川柳が、しかり」と選評を寄せています。

中学生特別賞:気が乗らずその前にまず部屋掃除
まっちゃさん(15歳)は「受験勉強のやる気が全く出ず、気晴らしに部屋の掃除をする様子を書きました」とコメント。
「勉強前にまずは部屋を片付ける」「定期試験期間中はなぜか読書がしたくなる」などなど、勉強をしなければならないと思いながら、何かに逃げてしまうのは、もう何世代も前の受験生から変わらぬ“あるある”ですね。
物理や化学をうまく詠みこんだ優秀賞
優秀賞4作品と尾藤川柳氏の選評は下記の通り。
●いつもより濃い目に塗った選択肢
(kota 20歳)
マークシートでしょうか。「濃い目」は、ある意味自信の現れでしょう。その気持ちが、作者自身の合格への思い。意識がイメージ化されたいい句です。
●受験書をひらけば問の大銀河
(ヘミング舞衣ウエイ 21歳)
これは大きな句。「人生の問」…「大銀河」のように見えてきます。人生にとっては、ほんの一瞬である受験も当事者にとっては、大銀河への冒険だったでしょう。
●焦りだけ摩擦係数0みたい
(じじじ 18歳)
受験という異空間では、ただ時間ばかりが過ぎてしまうといった感覚を「摩擦係数0」とは、素晴らしい比喩ですね。物理に文学に「才能あり」といった一句。
●掴み取れスイへーリーべボクの夢
(三嶋 ふく 17歳)
なつかしい周期律の一節。私も化学系専攻でした。その元素の構成する宇宙が、受験後の未来。その夢は、元素や原子の概念から量子の夢へと拡がるかもしれませんね。
受験川柳でカタルシスと共感を味わう
選者を務めた尾藤川柳氏は「第11回受験川柳」総評し、次のように述べます。
「毎年拝見している川柳から受験生の生の声が伝わってきます。もちろん、毎年似た思いもありますが、時代とともに変わる受験生の心理も句に現れているようです。
受験勉強にAIというツールも入ってきたのでしょうか。そんな句も少なくありませんでした。
私の頃は、偏差値至上主義のところがあり、今は大学ごとの特色が際立ち、受験生にとっては自身の適性を見極める力が求められる時代。何時の時代も、受験生は、与えられた受験システムの中で一時期を過ごさざるを得ません。『摩擦係数0』という感覚もまた、受験期という特別な時間の現れでしょう。
川柳を作ることで、多少はカタルシスを得たことでしょうし、また入選句を読むことによっても『私だけでなかった』という共感も得られるでしょう。
さあ、これからが本番です。川柳と合否は別物。皆様の夢の成就を願っております」
最優秀賞と特別賞の紹介で割愛した尾藤氏の選評は、「受験川柳」特設ウェブサイトをご参照ください。
(文/大友康子)







