帰国生の小学校受験海外滞在時からおさえておきたい5つのこと~おさえておきたい1~

近年、日本国内では英語力や思考力、表現力、そしてグローバルな視点を重視する小学校が増加しています。 また、海外赴任者の低年齢化に伴い、幼い子どもを帯同する家庭も増えています。 こうした変化を背景に、海外赴任家庭のあいだでは「受験を経て入学・編入学する小学校」が、帰国後の進路の有力な選択肢として定着しつつあります。そこで今回は、小学校受験に関する基礎知識や最新事情を、専門家監修のもとわかりやすく解説。 さらに、実際に小学校受験をした帰国生の保護者たちの体験談も掲載。 受験前に「やってよかったこと」や「やればよかったこと」など、体験者ならではのリアルな声をお届けします。

Q. 日本の小学校受験、ここ数年で何が変わった?

⇒ A. 国際化やAIの進展、少子化、共働きの増加などを背景に、小学校受験を取り巻く環境に大きな変化が見られます。具体例をテーマごとに見ていきましょう。

変化 ① 入試内容 & 評価基準

記憶力や知識量偏重から総合的な評価へシフト

記憶力や知識量だけでなく、子どもの力を多面的・総合的に評価する傾向がますます強まっている。「近年、思考力や表現力、主体性を重視する学校が増えています。得た知識を活用して自分の頭で考え、自分の言葉で表現できる子どもは、入試において高く評価される傾向にあります」(伸芽会 谷原氏)。

多様性や個性重視の評価基準がさらに広がりつつある

行動観察や面接で重視されるポイントにも変化が。「『みんなと同じことができるか』だけではなく、『自分の考えを持って行動できるか』『他者の意見や個性を尊重できるか』といった点も評価されるようになっています。これは、多様な人と関わっていく姿勢が実社会でこれまで以上に求められているためと考えられます」(伸芽会 谷原氏)。

親子面接に加え親子課題を取り入れる学校が増加

親子同席で受け答えをする従来型の面接に加え、近年は親子課題を取り入れる学校が増えているという。「なぞなぞやブロックなどの課題に親子で取り組む様子を通して、普段の親子の関わり方(相談の仕方や声かけの仕方、子どもへのまかせ方)、距離感、信頼関係などを見極めることができるからでしょう」(伸芽会 谷原氏)。

面接では「正解」よりその家庭ならではの考え方をより重視

面接での質問内容が具体的に。「『学校に行きたくないと言われたらどうするか』『幼稚園でのトラブルのエピソードを、加害者・被害者どちらの立場でも構わないので教えてほしい』など、ネガティブなできごとについて具体的に尋ねる質問が増えたと感じます。そのご家庭ならではの考え方を引き出すことが目的だと思います」(伸芽会 谷原氏)。

帰国生枠では英語力より国語力が問われることも

昨今では、帰国生だからこそ国語力を重視し、入学後に一般生と同じ授業についていけるか確認する学校も少なくない。「例えば、東京都立立川国際中等教育学校附属小学校では発問言語を日本語と英語から選べますが、英語を選んでも必ずしも有利とは限りません。現地校やインターの在籍者は補習校などで対策を」(こぐま会 廣瀬氏)。

父親の育児への関わり方も問われる時代に

面接で父親の育児への関わり方などが問われるケースも増加。「これは父観個人を評価するためではなく、家庭全体の子育てのあり方や子どもの育ち方を確認するためでしょう。慶應義塾幼稚舎の元舎長が『小学校受験は子育ての総決算』という言葉を残されていますが、まさにその通りだと思います」(こぐま会 廣瀬氏)。

作業課題では実社会で生きる力が見られるように

作業課題では折り紙などひとりて取り組むものだけでなく、積み木を使ってグループでひとつの作品を完成させるなど、共同作業を求める内容が増えている。「知識で答えを出す力だけではなく、『他者と協力する力』などをつけて学校生活や実社会で生きる力を育てたい、という教育現場の考えが出題の背景にあるようです」(伸芽会 谷原氏)。

運動課題で問われる力が多様化している

年齢相応の運動能力や指示理解力を確認する運動課題。近年ではさらに、「状況に応じて動きを切り替えられるか」「集団のなかで落ち着いて行動できるか」といった点も重視されている。「学校や社会生活のなかで必要となるお子さんの総合的な力を、運動を通して見極める傾向が強まっています」(こぐま会 廣瀬氏)。

変化 ② 学校選び & ニーズ

大学入試の複雑化などを理由に附属校志向が強まる

内部進学ができる附属校は長年支持されてきたが、近年はその傾向がより顕著に。「高校や大学までの一貫教育制度を持つ小学校へ進学すれば、将来の進路に過度な負荷や不安を抱えることなく過ごせます。昨今の大学入試制度の複雑化を受け、『早いうちに確実な進路の確保を』という保護者の思いも強まっているようです」(伸芽会 谷原氏)。

一貫校か受験対応校か、学校選びは二極化

近年、学校選びの考え方は二極化しているという。「一方は大学までを見据え、一貫した教育環境で腰を据えて学べる『一貫校』を選ぶ家庭。もう一方は中学〜大学受験を見据えた指導に力を入れる『受験対応校』を選ぶ家庭。どちらも長期的な安心を求めた結果であり、家庭の教育方針によって選択が分かれます」(伸芽会 谷原氏)。

中学受験に対応する学校の人気がさらに高まる

高校や大学までの一貫校が支持を集める一方で、卒業後の中学受験を手厚くサポートする小学校の人気も高まっているという。「質の高い先取り学習ができることに加え、同じ目標を持つ友人や保護者が集まる『安心して受験に向き合える環境』が最初から整っていることも、人気の理由になっているでしょう」(伸芽会 谷原氏)。

AI時代となり家庭での学習法にも変化が

苦手分野に合わせた問題作成や作文の添削など、AIが受験準備のヘルプ役として活躍するように。「ただし、海外での生活環境や志望校、子どもの性格によって必要な準備は異なります。AI任せにはせず、我が子に合った進め方を家庭で考えていきましょう。必要があれば、幼児教室や塾に相談することも大切です」(こぐま会 廣瀬氏)。

共働き家庭は増えていても放課後対応は限定的

共働き家庭の増加を背景に、放課後の預かりや送迎サポートへのニーズは高まっている。「しかし学校側は人的配置やコスト、施設面などの課題を抱えており、放課後対応の拡充は容易ではないのが実情です。学校選びの際は放課後対応だけにとらわれず、教育方針や環境を含めて総合的に判断したいところです」(こぐま会 廣瀬氏)。

変化 ③ 社会背景 & 受験環境

少子化を背景に学校ごとの特色化や差別化が加速

少子化が進むなか、学校側は生き残りをかけて独自の魅力づくりに力を入れている。「特に中堅と言われる学校で新たな特色を打ち出すケースが増加。オールイングリッシュ授業などの英語教育、海外研修旅行や海外提携校との連携による国際教育の充実、系列中学〜大学との連携強化などがその例です」(こぐま会 廣瀬氏)。

志望校選びに最も影響を与えるのは学校の公式SNS

伸芽会実施のアンケート(※1)では、志望校選びで保護者が最も影響を受けたのは小学校の公式SNS、次いで幼児教室の案内、友人・知人からの話…と続いていたという。「一般の方による情報発信も増加。学校側は正確な情報を直接届けようと、幼児教室でのセミナーなどの機会も増やしています」(伸芽会 谷原氏)。

父親も主体的に参加!家族で取り組む受験が定着

共働き世帯は増加を続け、約72%(※2)を占めるまでに。「『経済面は父親、子育ては母親』といった固定観念は薄れ、学校説明会や学校見学に主体的に参加する父親も多く見られるようになりました」(伸芽会 谷原氏)。「『受験プロジェクト』として、夫婦が良いチームワークで受験に臨む家庭は、合格をつかみやすい印象です」(こぐま会 廣瀬氏)。

column 日本の小学校のイマ①

英語イマージョン教育が広がる

2020年度から日本全国の公立小で英語教育が全国実施され、3・4年生で外国語活動、5・6年生で英語が教科化されたことなどを背景に、国公私立問わず、英語教育そのものへの意識が底上げされている。その象徴と言えるのが、英語を使って教科の内容を学んでいく「英語イマージョン教育」の存在だ。

公立小では、ALT(Assistant Language Teacher、外国語指導助手)によって英語の授業を英語で行う取り組みが見られる。国際的な教育を取り入れている国立小や私立小などでは、そこから一歩進んで、英語で他教科を学ぶ取り組みが展開されている。 例えば、算数では自分の考えを英語で伝える、社会では英語でプレゼンテーションを行う、理科では実験の手順や結果を英語で説明する、体育では「run」「jump」といった英語の指示で体を動かすといった具合だ。こうした流れがより進めば、海外で英語力を培った帰国生も、その力を保持・伸長しやすくなるだろう。

※1…2026年4〜5月に実施。対象は年中・年長児の保護者で、有効回答数は676件 ※2…共働き世帯と専業主婦世帯の合算に占める共働き世帯の割合。総務省「労働力調査(詳細集計)」2024年平均結果をもとにした独立行政法人労働政策研究・研修機構公表データ(共働き世帯1,300万世帯、専業主婦世帯508万世帯)から編集部算出

文・編集/本誌編集部、庭野真実 イラスト/Okuta

お話を伺った方

小学校受験指導の専門塾
伸芽会
谷原 優子 氏

幼児教育歴約30年、慶應幼舎、早稲田実業学校初等部、雙葉小学校などへの豊富な合格実績を持つ。現在は教育研究所でカリキュラム監修や後進の指導、長年の経験に基づく情報発信などを行っている。


小学校受験指導の幼児教室
こぐま会
廣瀬 亜利子 氏


こぐま会の元教育部長、帰国子女・小学校受験指導に35年携わり、学習院初等科や聖心女子学院初等科などへの合格者を多数輩出。現在は海外在住者の受験準備から帰国後の学習サポートまで行っている。


帰国生入試・編入試験に対応する
駿台NY校
町長 扶実子 氏


2001年よりNY州で小学校受験指導を開始。小学校編入から高校受験まで、幅広い指導経験を持つ。元ena北米副社長。2026年9月から駿台NY校にて、海外で子育て中の保護者に寄り添う「親塾」を開講。