デジタルテクノロジーで教育を面白く、効率的に!
EdTech(エドテック)とは、Education(教育)とTechnology(技術)を合わせた造語で、主にデジタルテクノロジーを活用した新しい教育手法のこと。具体的にはタブレットやスマートフォンなどのITデバイスを用いて、ゲーム感覚で学べる知育アプリや好きな時間に好きな場所で学べるオンライン学習、AI(人工知能)、IоT(モノのインターネット※1)、VR(仮想現実)を活用した教材など、その定義に含まれる教育手法は多岐にわたる。
日本におけるEdTechの先駆者であり、経済産業省「未来の教室とEdTech研究会」座長代理の佐藤昌宏(さとう・まさひろ)氏は、「そうした手法を用いて教育をより面白く、効率的にする世の中の動き(イノベーション)自体を、EdTechと呼ぶこともあります」と話す。
日本での普及の始まりは2017年の国の提言
EdTechが誕生したのは2000年代初頭のアメリカ。数学者のサルマン・カーン氏が2006年にカーンアカデミーという教育系の非営利団体を設立し、オンラインで講義を動画配信するサービスを世に送り出したことによる。このサービスが世界の教育業界に大きなインパクトを与え、認知度や活用人口は欧米を中心に急速に広まっていった。
同氏がこれを生み出したきっかけは「遠方で暮らす親戚の子どもに数学をわかりやすく教える方法はないか」と考え、解説動画を作ってみたら評判になったこと。動画だからわかりやすい、何度も見直して自分のペースで学べるといったメリットは、当時から15年近く経った現在でも、EdTechの根幹をなす。
日本では2017年、政府が発表した経済産業政策に関連する提言のなかに初めてEdTechという言葉が登場し、先進的な教育ソリューションとして国内での普及に力を入れていくことが明言された。背景にあるのは、内閣府が提案する「Society(ソサエティ)5・0(※2)」の実現。この実現には、少子高齢化、富の集中、地域格差など、社会と経済の課題解決に期待する国の強い思いが込められている。
※1…離れた場所にあるモノを、インターネットを介して見守ったりコントロールしたりすること
※2…狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)の次。最新テクノロジーを最大限に活用しながらも、中心には人間がいるという社会
EdTechのここがすごい!
①授業の理解度が増し思考の幅も広がる
授業中にタブレットなどのITデバイスを児童・生徒が自由に使えるケースでは、わからないことをその場でパッと調べられるため、授業の理解度が増す。また情報量増加により、思考の幅も広がる。
②情報リテラシーが向上する
早くからコンピューターやインターネットに親しむことで、ITデバイス上にあふれる大量の情報を目的に合わせて精査する方法や、トラブル回避法などがわかるようになる。情報活用力も高まる。
③時間や場所に縛られずに学べる
講義の動画を観るにしても、アプリを使って授業の予習や復習をするにしても、場所や時間は自由。決められた時間に決められた場所(塾など)に足を運ぶ必要がなく、時短にもなる。
④習熟度に沿った学びでムダがない
AIが個々の習熟度を測って得手不得手をあぶり出してくれるので、「アダプティブラーニング(個別最適学習)」が可能に。子どもたちはそれぞれに合った進度や方法で効率的に学ぶことができる。
⑤教育ビックデータで授業改善が実現
アダプティブラーニングの実施によって残る児童・生徒の学習ログ(記録)は、各校の大変貴重なデータに。ログを使って授業内容と成績の関係などを分析すれば、授業の改善等もしやすくなる。
お話を伺った方
佐藤 昌宏(さとう・まさひろ)氏
経済産業省 未来の教室とEdTech研究会座長代理
インターネットを使う学習形態「e-Learning」の開発会社を設立。現在はデジタルハリウッド大学大学院でEdTechの研究と学生指導を行う。また、上記ほか、数々の国の委員を務める。
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