受験生が重視するタイパ勉強法、その効果と弊害は?
保護者は聞きなれぬ「タイパ勉強法」とは?
タイムパフォーマンス(時間対効果)の略である「タイパ」。2015年頃から若者の間で使われ始め、2022年頃からメディアでも広く使われるようになってきました。
生まれたときからインターネットやスマートフォンが身近にある環境で育ったデジタルネイティブであるZ世代(1990年代後半~2010年代前半生まれ)は、ネット上に溢れる情報から、必要なものだけを迅速に効率的に選別・消費する行動が身についており、常にタイパを意識しています。それは勉強をするときも同様であり、現在の受験生は時間対効果を狙って「タイパ勉強法」を重視しているようです。
全国で小中高校生および浪人生を対象に展開している学習塾「武田塾」は、大学の一般入試を受験した高校3年生102名を対象に、勉強するときのタイパに関する実態調査を行いました。その調査結果を見てみましょう。
【現役高校3年生の「タイパ勉強法」に関する実態調査】
調査方法:インターネット
調査期間:2026年3月4~11日
有効回答:一般入試を受験した現役高校3年生102名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
受験生の7割以上がタイパ勉強法を重視
「受験勉強をするときにタイパを重視していたか」聞いたところ、「かなり重視していた」が25.5%、「やや重視していた」が47.1%という回答となりました。合計すると、高校3年生の7割以上が受験勉強において、タイパを重視していたことになります。
タイパを「かなり重視していた」「やや重視していた」と回答した人に、その理由を聞くと、「受験までの残り時間が限られていたから」が62.2%、「無駄な勉強に時間を使いたくなかったから」が56.8%、「覚える量や範囲が多すぎたから」が37.8%という回答となりました。
タイパ勉強法の最たる「学習動画の倍速視聴」
実践したタイパな勉強法を聞くと、「授業動画や解説動画を倍速で視聴する」が39.2%、「スキマ時間(通学中・休憩中など)を活用する」が39.2%、「苦手分野だけに集中して勉強する」が27.5%という回答となりました。
スキマ時間の活用や苦手分野だけに絞るのは保護者世代でも実践していた方がいるでしょうが、「倍速視聴」はいかにも現代らしい回答です。
最も効果を実感したのは「スキマ時間の活用」
前問で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した人に、「タイパ勉強法の中で、最も効果があったもの」を質問したところ、「スキマ時間(通学中・休憩中など)を活用する」が28.4%、「過去問から逆算して勉強範囲を絞る」が17%という回答となりました。
実践している人が一番(「スキマ時間の活用」と同率1位)多かった「授業動画や解説動画を倍速で視聴する」は3位に下がってしまい、保護者世代も行っていたであろう「過去問から逆算して勉強範囲を絞る」が順位を上げています。やはり昔ながらのタイパ勉強法のメリットも見過ごせないようです。
タイパ勉強法は「常に時間に追われている感覚」
タイパ勉強法のメリットは「特にない」「わからない/答えられない」と回答した人に、「タイパを意識した勉強を続けた結果、感じている弊害を教えてください。(複数回答)」と質問したところ、「常に時間に追われている感覚になった」が35.2%、「じっくり考える問題に取り組む忍耐力が落ちた」が21.6%、「効率ばかり気にして勉強を楽しめなくなった」が19.3%という回答となりました。
保護者世代が受験生の頃には「タイパ」という言葉もなく、純粋に学習効果を狙ってスキマ時間の活用をしていたと思います。「タイパ」に意識を向けすぎると、時間に追われるような感覚になるようですし、勉強を楽しめなくなるのは残念です。
タイパ勉強法で失敗した受験生は35.2%
タイパ勉強法のメリットとして「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した人に、「タイパを重視した勉強法で失敗したと感じた経験はあるか」を聞いたところ、「はい」が35.2%、「いいえ」が52.3%、「わからない」が12.5%という回答という結果に。
そのうち、「はい」と回答した人に「どのような失敗を経験したか(複数回答)」を質問したところ、「内容の理解が浅くなり、すぐに忘れてしまった」が51.6%、「焦って色々手を出した結果、どれも中途半端になった」が51.6%、「要点だけ覚えて全体の流れが掴めなくなった」が35.5%という回答となりました。
さらに自由回答として、下記のような声も寄せられました。
<自由回答・一部抜粋>
・効率よくやるためにどの順番で取り組むべきかで迷い、結局手を付けなかったこと。
・形式だけおぼえて深く理解できなかった。
・共テ対策で効率ばかりを重視した結果、基礎を十分に身につけることができず、二次試験で躓いた。
・時間を気にしすぎて逆に集中できなくなった。
・短い時間で効率的に学べば大丈夫と思い込み、少し勉強を疎かにしてしまったことがあること。 ・燃え尽き症候群になった。
受験生の3割超「タイパと学習の質を両立できていなかった」
タイパ勉強法のメリットとして「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した人に、「タイパと学習の質を両立できていたか」を質問したところ、「あまりそう思わない」が27.3%、「全くそう思わない」が4.5%という回答となりました。
タイパ勉強法のメリットを答えた人を対象にした質問ながら、両立できていなかった人が3割以上いたことになり、タイパ勉強法は意外と難しいのかもしれません。
質をともなうタイパ勉強法が大事
今回の調査を行った武田塾の調査担当者は、調査結果について、次のように分析しています。
「本調査から、現役高校3年生の多くがタイパを意識した勉強法を実践している一方で、効率を追求するあまり学習の質が犠牲になるケースも少なくないことが浮き彫りになりました。効率よく勉強したい気持ちは自然なことです。しかし、倍速視聴やスキマ時間活用で『こなした感』を積み上げても、理解が浅ければ本番で得点にはつながりません。大切なのは、速さではなく『何が定着したか』です。
限られた時間の中で成果を最大化したいという切実なニーズに応えつつ、理解度や定着度を担保する『質を伴うタイパ勉強法』の確立が求められます。教育関係者や学習サービス提供者には、効率と深い理解を両立させる学習設計の提案が期待されるでしょう」
(取材・文/大友康子)














