日本への帰国を前提とした海外での暮らしの中で、帰国後の子どもの教育に疑問や悩みを持っている保護者も少なくないようです。そこで、海外に住む保護者からの様々な質問に、帰国子女対象の英語塾「帰国子女アカデミー」の英語ネイティブの先生が答えてくれました。
Q. 数年後に日本に帰り、帰国生入試を受ける予定のある7歳の息子と10歳の娘がいます。勉強を見てあげること以外に子どもたちに対して保護者ができることはありますか?(アメリカ在住・保護者より)
A. 意外かもしれませんが、「家をユーモアであふれさせること」。これが思いもよらない効果を生みます。
パパ、なんで(数字)の6は7が怖いと思う?だって、7、8(=ate)、9…。7は9を食べちゃったから!――6歳の娘が言うジョークは、ときに、私にとって可愛いだけではありません。「よくそこまで複雑な言葉遊びができたな」と感心させられることがあります。彼女は「”エイト”という響きは数字の8でもあり、ate=食べるという動詞の過去形でもある」ということを利用したジョークを言うことで、自分の知的さを示すだけでなく、「日常の些細なものに斬新な視点を加えて喜びを得る」ということを皆と共有しようとしています。
今まで、心理学者などによって否定的な見方がされることの多かった“ユーモア”ですが、昨今は、人間が自らの人生を軽やかに生きていく術として注目されています。これから長い人生が待ち受けている子どもたちにとってのユーモアとは、社会性や想像力を与えてくれるほか、洞察力や決断力を伸ばし、ストレスをやわらげ、自分自身を尊重する気持ちを与え、取り巻く環境との結びつきを強くしてくれる存在です。このほか、ユーモアの恩恵は計り知れません。
こうした恩恵は「教育」の世界でも同じです。ユーモアは語彙力や読む力を高めます。私の娘のような「言葉遊び」では、同音異義語を状況によってどう使い分けるか、文章をどう構成するかといった力がつき、理解力が増していることも可視化できます。
また、読書があまり好きじゃない子どもも、ユーモアのある本であれば読書を楽しむきっかけになるでしょう。そして読書をする中で特に面白いと思った場面を繰り返し読んだり、誰かに話したりといったことを通じて、新しい単語を使ったり、普段の行動と結び付けて新しい概念を生み出すこともありえます。ユーモアは考えることが必要で、創造性が高められるのです。
これは今後、帰国生入試などを受けるときにも役立つはずで、独創性のあるエッセイは他と一線を画すものになるでしょう。面接での独創性あふれる受け答えは面接官を驚かせ、面接の成功につながるでしょう。ジョークを通じてコミュニケーションを円滑にすることで面接での緊張はほぐれ、それは将来の自信にもつながっていきます。
鋭いユーモアのセンスを持ち合わせることはそれ自体がすでにご褒美のようなものですが、それだけでなく学習面でも様々なメリットを与えてくれます。これは、帰国生を受け入れる人気校が面接で生徒にジョークを言わせる機会を与えていることからもわかります。
保護者ができること
では保護者として、子どもが受験に限らず人生で待ち受ける様々な挑戦の場でユーモアを持ち合わせ、明るい気持ちで挑むことができるよう支援するにはどうしたらいいのでしょうか?
ユーモアを持つためのヒントは、大きく笑うこと、ときには取るに足らないような小さなことでも楽しむ時間を作ること、面白い話をすること、些細なことが思い通りにいかなくても笑い飛ばすことです。そして楽しい本で家をいっぱいにし、ゆかいな映画やテレビ番組を一緒にたくさん見ましょう。楽しい家族でありましょう。
ユーモアは社会活動にほかなりません。これらを続けることで、子どもたちに自分たちの潜在能力に気づかせてあげましょう。そしてそのことは、世界をもっとハッピーにする原動力となり得るはずです。
お話を伺った方
帰国子女アカデミー
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