私大が人気、地方の国際卓越研究大学採択校が全国区に。高校生の大学選び最新動向

『進学ブランド力調査2025』結果と解説を紹介
このほど、日本の高校生の大学選びの動向がわかる『進学ブランド力調査2025』が発表されました。この調査は、株式会社リクルートが運営する「リクルート進学総研」が2008年より実施しているものです。今年の調査結果と、「リクルート進学総研」所長・小林浩(こばやし・ひろし)さんによる解説を紹介します。また、小林さんに、現役高校生へのアドバイスもうかがいました。
「志願したい大学」ランキングでは私大が人気
全国を7エリア(関東甲信越、東海北陸、関西、北海道、東北、中四国、九州沖縄)に分けて調査したところ、北海道、中四国では国立大学が1位となりましたが、ほかの関東甲信越、東海北陸、関西、東北、九州沖縄の5エリアでは私立大学が1位となり、私立大学人気の高まりが見える結果になりました。

「知っている大学」ランキングでは総合大学が上位

「国公立」「私立」の志向は?
国公立の大学に「ぜひ行きたい」と「どちらかといえば行きたい」の合計(46%)の方が、私立の大学に「ぜひ行きたい」と「どちらかといえ行きたい」の合計(41%)よりも5ポイント上回る結果に。前年と比較すると、「どちらかといえば」「まだわからない」が1~2ポイントずつ増加しており、決め切れていない層が増えていることがわかります。
Q. 国公立の大学に進学することをどのように考えていますか(単一回答)

進学先検討時に何を重視する?
上位3項目は「交通の便が良い」、「学びたい、興味ある学部や学科がある」、「教育内容のレベルが高い」となりました。前年と比較すると、1位「交通の便が良い」は4位から、3位「教育のレベルが高い」は9位から順位が上昇しています。
Q.進学する学校を選ぶとき、あなたが重視するのはどのようなことですか(複数回答)※全体の降順

「興味のあることを高いレベルで学びたい」という思いが反映
今年の調査結果について、小林さんは次のように解説します。
「知名度ランキングと志願度ランキングを比較すると、知名度では関東や関西などの都市圏の総合大学がどのエリアでも上位に入っています。一方、志願度では20位以内のほとんどを自エリアの大学が占めており、知名度と志願度の傾向の違いが見えます。ただし、7エリアのうち、東北と中四国では、志願度ランキングにおいても半数近くが他エリアの大学となっています。
高校生が進学先を選ぶ際の重視項目を見ると、上位3項目は<交通の便が良い>、<学びたい、興味ある学部や学科がある><教育内容のレベルが高い>でした。高校3年生の4月時点では、通いやすく、自分の興味のあることを高いレベルで学びたい、という高校生の思いが垣間見えます」
東北大学は全国区に、関東の高校生からも人気
私立大学のランキングが全体的に上がった背景には、何があるのでしょうか。
「まず、私立大学は改革に力を入れているところが多く、その取り組みがさまざまな情報を通じて高校生にも伝わってきているのではないかと思います。さらに、就学支援制度が充実してきたことも、私大人気を後押ししているといえます。返済不要の給付型奨学金の拡充や、企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度なども利用できるようになったので、経済的な理由から国公立しか選択肢がなかった生徒も、私大を選択肢に入れられるようになったのです」(小林さん)
一方、国公立の人気も根強い。「志願したい大学」の東北エリアで2位になった「東北大学」は、順位だけ見ると昨年の1位から下がっているが、「むしろ全国区になりつつある」と小林さんは評価しています。
「東北エリアで今年1位になった東北学院大学は、東北エリアでは最大の私立大学で、キャンパスは仙台にあり、アクセスも良く、人気が高いです。一方、2位の東北大学は長年の1位から順位は下がったものの、政府が創設した“10兆円規模の大学ファンド”で支援する<国際卓越研究大>の第一号に認定され、注目を集めています。『進学ブランド力調査2025』のプレスレターには掲載していませんが、実は関東エリアの理系大学志望者で、東北大学を志願したいという人が増えているのです。つまり、東北の大学から全国区の大学へと位置づけが変わってきたといえるでしょう」
授業の内容、入試方法などを調べて、自分に合う大学選びを
大学の改革や入試方法の多様化など、親世代の大学受験とは大きく変わってきているなか、長年本調査に関わっている小林さんは、現役高校生に向けてこうエールを送ります。
「現在の高校生は中学校3年間をコロナ禍で自粛生活を送りながら過ごしたこともあり、リアルな授業や先生・友人と対面での交流を通じて、充実したキャンパスライフを送りたいという強い思いを持っているように見受けられます。また、大学もプロジェクト型授業やフィールドワークを多く取り入れるなど体験型の学びを増やしている傾向があります。入試方法の多様化により、志望大学の受験チャンスが1回きりではなく複数回あることも多いので、そういった情報も事前にチェックして、ぜひ自分が望む大学生活を叶えていただきたいと思います。できれば実際にキャンパスに足を運び、偏差値やネームバリューにとらわれず、自分に合った大学かどうかを見極めておくことが重要かと思います」
お話を伺った方

所長 小林浩さん
(取材・文/中山恵子)
調査目的 | 高校3年生の大学に対する志願度、知名度、イメージを把握し、関係各位の参考に供する。 |
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調査対象 | 全国の高校に通っている2026年3月卒業予定者(調査時 高校3年生)計20万人 ※令和6年度学校基本調査の「全日制・本科2年生生徒数(県別)」、「中等教育学校・後期課程2年生(県別)」を基に、リクルートが運営する『スタディサプリ』会員より調査対象とする数を抽出 |
エリア区分 | 関東甲信越エリア(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、 山梨県、長野県の1都9県) 東海北陸エリア(静岡県、愛知県、岐阜県、三重県、富山県、石川県、福井県の7県) 関西エリア(大阪府、京都府、奈良県、和歌山県、兵庫県、滋賀県の2府4県) 北海道エリア(北海道のみ) 東北エリア(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の6県) 中四国エリア(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県の9県) 九州沖縄エリア(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の8県) |
有効回答数 | 1万6,850人 回収率 8.4% ※各エリアそれぞれにおいて令和6年度「学校基本調査」(文部科学省)の2年生(本調査の母集団:2026年3月卒業予定の高校3年生)から男女構成比を算出し、エリアごとの男女構成比を補正している。 |
集計対象数 | 1万5,140人 ※分析対象は上記有効回答のうち大学進学希望者 |
調査期間 | 2025年4月1日(火)~5月6日(火)23:59 |
調査方法 | インターネット調査 ※2024年調査からインターネット調査に変更。また2025年調査で選択肢を一部追加、変更している。 |