渡航前と帰国後では、同じ日本でも全く違って見えると聞きます。では帰国後、何に喜び、怒り、悲しみ、苦労しているのか。海外駐在を経て日本に帰ってきた保護者の皆さんに本音を明かしてもらいました。
今回は、「帰国後に嬉しいと思うこと」についての回答をランキング形式で見ていきます。
【アンケート概要】
有効回答数 | 713人(女性=592人、男性=103人、性別回答なし=18人) |
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対象者 | 海外赴任の経験か海外赴任同行の経験があり、帰国子女の保護者にあたる方 |
調査期間・方法 | 2020年10~12月、WEBアンケート |
【ランキングの選択肢とした項目】
◆食生活 ◆居住環境 ◆ファッション ◆収入や貯金 ◆子どもの学校生活 ◆子どもの習い事 ◆子育て環境 ◆親子関係 ◆夫婦関係 ◆自身の親との関係 ◆自身の友人との関係 ◆ママ友・ご近所づきあい ◆自身の仕事、働き方 ◆自身の仕事での人間関係 ◆余暇 ◆医療 ◆その他
嬉しいと思うことランキング
1位 食生活 611人(85.8%)
近場で何でも手に入り、口に合うものばかり!
- 旬の野菜が安くて新鮮。スーパー1ケ所でほしいものが何でも手に入る。M・Sさん(シンガポール3~4年、女性)
- スーパーで薄切り肉をパックで買える。R・Sさん(ベルギー2~3年、女性)
- 立ち食いそばのうまさが身に染みる。M・Sさん(アメリカ2~3年、男性)
- 日本は惣菜天国。デパ地下バンザイ。Y・Sさん(カナダ2~3年、女性)
- 滞在国ではお肉に対しての制限があったので、帰国直後はお肉が食べたい、焼き肉店に行きたいとしきりに感じた。R・Tさん(インド7~8年、女性)
- 料理がラク。高地では圧力釜じゃないと米もうまく炊けない。Y・Nさん(ペルー&メキシコ6~7年、性別回答なし)
- 外食が安くて美味しい。種類が多いし、季節感もあるから飽きない。F・Mさん(アメリカ3~4年、男性)
2位 医療 440人(61.8%)
診療面でも費用面でも安心感が大きい
- 通院時、医師からの説明が全て日本語だからちゃんと理解できる。N・Aさん(アメリカ5~6年、男性)
- 最先端の医療を受けられる幸せ。Sさん(イギリス9~10年、女性)
- 国民皆保険は素晴らしい。アメリカでは盲腸の手術と入院で500万円の請求がきてしまい、絶叫した。日本では病院食も美味しく至れり尽くせり。M・Mさん(アメリカ4~5年、女性)
- 診てもらえないことがない。スウェーデンには「かかりつけ医」という概念がなく、電話で症状を伝えて診てもらえるかが決まる。A・Nさん(スウェーデン&シンガポール5~6年、女性)
- 腕のいい歯科クリニックが多くある。Dさん(ベトナム6~7年、女性)
- 人間ドックがきちんと受けられることに安心する。K・Nさん(オーストラリア&シンガポール3~4年、女性)
3位 居住環境 199人(27.9%)
安全で快適な生活を当たり前のようにできる
- 家のあちこちが故障しない! N・Yさん(アメリカ3~4年、女性)
- ボタンひとつでお湯が出る。さらにお風呂場では潤沢なお湯を使える。すごい。Aさん(イスラエル8~9年、女性)
- 海外では電気フェンスに囲まれ、警備員常駐の家で暮らしていたため、帰国後は子どもだけで小銭を握りしめて買い物に行ける治安のよさに感動した。Wさん(インド&南ア6~7年、女性)
- 公園で遊べる。(インド3~4年、女性)
- 歩道があり安全に散歩できる。K・Kさん(メキシコほか3カ国8~9年、女性)
- 大気汚染が少ない。海外では天気予報よりも汚染度数をチェックする日々だった。N・Cさん(中国5~6年、女性)
- イギリスでは丸1日すっきり晴れるのがまれ。日本では外に布団を干せる。R・Aさん(イギリス5~6年、女性)
4位 自身の親との関係 165人(23.2%)
- 高齢の両親が体調を崩したとき、助けに行ける。海外ではできない親孝行。M・Yさん(中国・香港ほか4カ国10年以上、女性)
- 父親を看取れた。T・Eさん(カナダ10年以上、女性)
5位 自身の仕事、働き方 163人(22.9%)
- 自分の選択で自由に働ける。M・Iさん(中国&シンガポール5~6年、M・Tさん(インドネシア1~2年、女性)
6位 ファッション 153人(21.5%)
7位 子どもの学校生活 150人(21.1%)
8位 余暇 90人(12.6%)
9位 自身の友人との関係 87人(12.2%)
10位 子どもの習い事 75人(10.5%)
6~10位からの抜粋&その他
- 子どもが学校をエンジョイ
- 熟知した場所で将来の見通しを立てられる
- 公共交通機関の利用が容易
- 通販天国、買い物天国
- 受験塾に熱意を感じる
- 転居がなくペットを飼える
など
~1位の「食生活」について~ しみじみとした旨みは日本の食ならではのもの
ユネスコ無形文化遺産に登録されている和食をはじめ、日本の食は総じて優秀とされる。その理由を栄養士の松丸奨氏は次のように話す。
「強い味付けをせずとも食材を美味しくいただけるのは、出汁を生かして旨味を引き出す調理法あってこそ。お米、野菜、魚、肉など各々の食材自体も高品質です。給食や病院食も、食材の持ち味や栄養価を大事にしながら、身体を労わるように考えて作られています。また、お店に並ぶ旬の食材や行事食からは、季節の訪れや変化を感じられます。視覚と嗅覚と味覚で得られる『これこれ!』という感動が、余計に日本人の日本の食への愛着を深めているのかもしれません」(松丸氏)
松丸氏は「一時帰国時には保存のきく食材の入手を」と続ける。「海外でもぜひ日本の食を食卓へ。例えば乾物なら高野豆腐がおすすめです。栄養価が高く、味噌汁にも煮物にもよく合いますよ」(松丸氏)
「食生活」についてお話を伺った方
栄養士、栄養教諭
松丸 奨(まつまる すすむ)氏
好き嫌いが多かった幼少期の気持ちや経験を活かし、東京都文京区の小学校栄養士、栄養教諭、フードスタイリストに。著書は『日本一の給食メシ~栄養満点3ステップ簡単レシピ100~』(光文社)ほか。
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