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間食のだらだら食べがむし歯の原因。10歳前後までは仕上げ磨きを!

子どものむし歯予防

6月は小学校でむし歯予防の取り組みが多く行われる時期だが、その甲斐もあって子どものむし歯は減少している。

『平成29 年度(2017)学校保健統計(学校保健統計調査報告書)」(文部科学省)によると、むし歯のある小学生の割合が最も多かったのが1979年の94.76%、2017年は47.06%なので、ほぼ半減しているのだ。とはいえ、現在でも決して少ないとはいえない。

そこで、子どものむし歯予防について、『鶴見大学歯学部小児歯科学講座』助教、船山ひろみ先生に話を聞いた。

「むし歯のおもな原因は、“歯の質や唾液”、“細菌”、“食べ物”で、この3つが関わる時間が長いほど、むし歯になりやすくなります。子どものむし歯予防では、朝食後と就寝前に歯磨きをして細菌を落とすことと、間食の食べ方がポイントになります」。
成長期の子どもは栄養素を補うためにも間食が必要だ。

ただし、甘い物を食べると、糖分が細菌をエサに酸をつくりだし、口の中が酸性に傾く。口の中は通常、pH(ペーハー/酸性・中性・アルカリ性の度合いを示す。7が中性で、それ以下は酸性)6.8程度でほぼ中性だが、酸性のpH5.4を下回ると、歯の表面のエナメル質から歯の成分が溶けだし、むし歯になりやすくなってしまうのだ。

「糖分を摂取するとすぐに、口の中のpHは5.4以下に下がってしまいます。そこからpH5.4に戻るまでに約20分、ほぼ中性に戻るまでには40分以上かかります。ですから、間食を何回も食べていると、口の中が常に酸性に傾いている状態になるため、むし歯ができやすくなってしまうのです」(船山先生)。

間食はだらだらと食べないこと。そして、間食と一緒に摂る水分は、糖分を含まないお茶や水にすることも大切だ。

また、子どもは自分で歯磨きをしっかりと行うことが難しい。
「小学校に上がる頃に“仕上げ磨き”をやめてしまう人が多いのですが、実は、歯が生え変わるその時期こそがもっとも必要なのです。小学校3、4年生までは、就寝前の仕上げ磨きをぜひ続けてください」(船山先生)。

このほか、フッ化物配合の歯磨き剤を使ったり、歯科でフッ化物歯面塗布を受けるのもむし歯予防に効果的だという。

読者の中には、海外在住あるいは海外赴任予定の人も多いだろう。その場合に知っておきたいことを、船山先生に尋ねた。
「海外では、水道水にフッ化物が含まれていることがあります。フッ化物の過剰摂取を避けるため、日本で購入したフッ化物配合の歯磨き剤などを使う場合は、現地の水道水についても調べておきましょう」。

フッ化物の過剰摂取は、主に6歳以下の子どもの場合、歯に斑点やシミが現れる「フッ化症」を引き起こすことがある。子どもは歯磨き剤を飲み込んでしまうことも多いので、注意が必要だ。不安があれば、現地の歯科医に相談するとよい。

「これから渡航するのであれば、日本でむし歯治療を済ませておくことをおすすめします。日本では健康保険の適用内で良質な治療を受けられることが多いからです。そして渡航後は、一時帰国の際にかかりつけの歯科で定期健診を受けるとよいでしょう」(船山先生)。

歯の健康は、全身の健康につながる。子どものうちから、しっかりとむし歯予防・対策をしておきたい。

出典:「小児の口腔外科 第4版」(学建書院)をもとにグラフ作成
10%グルコース液で洗口した場合のプラークのpH(StepHan&Miller)
出典:「小児の口腔外科 第4版」(学建書院)をもとにグラフ作成

ブドウ糖(グルコース)の液を口に入れた後に口の中のpH値の変化を調べた「ステファン曲線」と呼ばれるグラフ。甘い物(ブドウ糖)を摂ると、すぐにpH値が5.4以下に下がり、元に戻るまで40分以上かかることがわかる。

(取材/文:中山恵子)