大学のSDGsへの貢献度をランキング化
昨日は、イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(以下、THE:ティー・エイチ・イー)」が3月24日に発表した「THE世界大学ランキング日本版2022」で、東北大学が3年連続で1位となったことをご紹介した。
本日はTHEが4月28日に発表した「THEインパクトランキング2022」の結果を見てみよう。同ランキングは国連が提唱した持続可能な開発目標(SDGs) に対する大学の貢献度を測定する世界で唯一の格付け。「研究」「管理責任」「アウトリーチ」「教育」といった4つの分野にわたる大学の持続可能性への取り組みを評価する。
世界の高等教育機関におけるSDGsの重要性の高まりを反映して、今年は世界106の国・地域から1406大学がランクイン。このうち日本からは84大学がランクインした。このランクイン数は世界で2番目に多い。
総合トップ200に7大学ランクインはアジアで最多
ランキングは、「総合ランキング」と「SDGsの17種類の目標ごとのランキング」が発表される。
総合ランキングでは北海道大学が世界トップ10、京都大学が19位に入った。さらに、神戸大学・慶應義塾大学・東北大学・広島大学・筑波大学が世界のトップ200にランクインした。これは、アジア諸国の中でランクイン数が最も多い成績だ(タイと同位)。
2022ランキング | 教育機関 | 国/地域 |
---|---|---|
1 | ウエスタンシドニー大学 | オーストラリア |
2 | アリゾナ州立大学(テンペ) | アメリカ |
3 | ウエスタン大学 | カナダ |
=4 | キングアブドゥルアズィーズ大学 | サウジアラビア |
=4 | ユニバーシティセインズマレーシア | マレーシア |
6 | オークランド大学 | ニュージーランド |
7 | クイーンズ大学 | カナダ |
8 | ニューカッスル大学 | イギリス |
9 | マンチェスター大学 | イギリス |
10 | 北海道大学 | 日本 |
11 | アルバータ大学 | カナダ |
12 | ビクトリア大学 | カナダ |
=13 | ブリティッシュコロンビア大学 | カナダ |
=13 | 慶北大学校 | 韓国 |
15 | シドニー工科大学 | オーストラリア |
=16 | チェラーロンコーン大学 | タイ |
=16 | グエルフ大学 | カナダ |
18 | インドネシア大学 | インドネシア |
=19 | グラスゴー大学 | イギリス |
=19 | 京都大学 | 日本 |
=19 | ラトローブ大学 | オーストラリア |
101ー200 | 神戸大学 | 日本 |
101ー200 | 慶應義塾大学 | 日本 |
101ー200 | 東北大学 | 日本 |
101ー200 | 広島大学 | 日本 |
101ー200 | 筑波大学 | 日本 |
201ー300 | 熊本大学 | 日本 |
201ー300 | 岡山大 | 日本 |
201ー300 | 大阪大学 | 日本 |
201ー300 | 立命館大学 | 日本 |
201ー300 | 早稲田大学 | 日本 |
201ー300 | 名古屋大学 | 日本 |
201ー300 | 九州大学 | 日本 |
201ー300 | 神戸大学 | 日本 |
インパクトランキング2022:総合トップおよび日本の成績
北海道大学は「SDG2(飢餓をゼロに)」ランキングで世界1位!
日本は、「SDG の17種類の目標ごとのランキング」においても、各トップ100大学の中に合計でのべ74校がランクイン。
北海道大学はSDG2(飢餓をゼロに)において世界でトップを獲得、京都大学が3位、神戸大学が25位。
SGD 14(海の豊かさを守ろう)では、京都大学(15位)と北海道大学(17位)がトップ20に入った。
神戸大学はSDG16(平和と公正をすべての人に)で8位に初ランクイン。SDG 11(持続可能な都市とコミュニティ)では東北大学が52位タイにランクイン、慶應義塾大学が87位タイ、筑波大学が90位タイとなった。 SDG13(気候変動に具体的な対策を)では東北大学が97位だった。
順位 | 名前 | 飢餓ゼロ | 全体 |
---|---|---|---|
1 | 北海道大学(日本) | 91.4 | 96.2 |
2 | ウェスタン大学(カナダ) | 89.8 | 97.8 |
3 | 京都大学(日本) | 89.3 | 94.9 |
4 | オークランド大学(ニュージーランド) | 88.0 | 96.7 |
5 | ゲルフ大学(カナダ) | 87.4 | 95.2 |
6 | アイオワ州立大学(米国) | 86.8 | 82.1~88.5 |
ラヴァル大学(カナダ) | 86.8 | 93.3 | |
ミシガン州立大学(米国) | 86.8 | 93.4 | |
9 | アルバータ大学(カナダ) | 86.3 | 96.0 |
クイーンズ大学(カナダ) | 86.3 | 96.6 |
THEインパクトランキング2022:飢餓/北海道大学が堂々の世界トップ
THEチーフ・ナレッジ・オフィサー、ランキング結果に「胸が高鳴る」
THEチーフ・ナレッジ・オフィサーのPhil Baty(フィル・ベイティ)氏は「THEインパクトランキング2022」発表に際し次のコメントを寄せている。
「Times Higher Educationによるインパクトランキングは、富や学術的名声などの従来の尺度ではなく、大学が私たちの世界をどのように改善しているかに基づいて、グローバルな高等教育の卓越性を再定義しています。 すべての大陸からのこのように大きく多様で急速な成長を遂げている大学のコミュニティが、自らを精査し、その影響を測定して実証し、持続可能な開発目標を達成するためのベストプラクティスの紹介に取り組む姿は刺激的です。 学生だけでなく政府もますますそのような取り組みを要求しており、これらの要求は今後も高まるでしょう。
伝統的な西洋のエリート以外の大学が、大学ランキングへのこの新鮮なアプローチの旗振り役として輝き、多様なセクターに刺激的な新しい視点を提供し、学生の選択肢を広げている姿を見ることに特に胸の高鳴りを覚えます」
【原文】
“The Times Higher Education Impact Rankings are re-defining excellence in global higher education – based on how universities’ are improving our world, not on traditional measures such as wealth and scholarly prestige. It is inspiring to see such a large, diverse and rapidly-growing community of universities from all continents committed to subjecting themselves to scrutiny, to measure and demonstrate their impact and to showcase best practice in delivering the Sustainable Development Goals. Students, as well as governments, are increasingly demanding such commitments and these demands will strengthen.
It is particularly exciting to see that universities outside the traditional Western elites are shining out as beacons in this fresh approach to university rankings, giving an exciting new perspective on a diverse sector and broadening student choice.”
(取材・文/大友康子)