周囲の見え方を重視する「見栄就活」が早期退職を招く!?

周囲の見え方を気にした「見栄就活」は正解か?

大企業や有名企業に就職するとなれば、家族は喜び、友人はうらやましがり、異性からモテるようになるかもしれません。しかし、そんな周囲の見え方ばかりを気にした就活、いうなれば「見栄就活」は果たして正しいのでしょうか?

光学・精密機器の開発製造を手掛けるカールツァイス株式会社(東京都千代田区)は、日本全国の20~50代の社会人1000名を対象に、キャリアを築く際の満足度に関する調査を実施しました。今回は、その中で、特に20代の会社員を対象にした就活関連の質問に着目し、「見栄就活」の実態を見ていきましょう。

<「ビジネスパーソンのキャリア形成における満足度に関する調査」概要>
調査期間:2025年8月22~25日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国20歳~59歳/ビジネスパーソン男女1000名(就活関連の質問は20代の500名が対象)

他者からの目線が、企業選定に大きな影響

新卒時の就職活動で企業選びの際に重視した点を聞いた質問では、48%が「家族・親からの評価・期待」、45.4%が「友人や周囲からの評価・印象」、44.4%が「異性から見られた時の企業イメージ」と回答。いずれかひとつでも重視した人は65%にのぼりました。20代会社員の3人に2人が周囲の見え方を重視した「見栄就活」を行ったことになります。

若手のビジネスパーソンにとって就職先は単なる働く場所ではなく、自身の価値やセンスを示す“ブランド”としての側面を持ち、やりがいなどに加え、他者からの目線も企業選定に大きな影響を与えていることがわかりました。

「見栄就活」をした人の約4割が入社3年未満で退職

20代会社員のうち新卒の企業選びを「家族」「友人」「異性」からの見え方で決めた人の39.7%が入社3年未満で退職しており、3年未満の退職者全体(31.8%)と比べて約10%も早期退職する割合が高いことが明らかになりました。つまり、周囲の評価を重視してキャリアをスタートさせた人は、早期退職に至る傾向があるといえます。

将来のビジョンから逆算してキャリアを築くことが大事

一方で、新卒の企業選びで「将来のキャリアプランに合っている業務内容」を重視した人(55%)のうち76.7%が当時の選択に「満足」と回答しました。全体の満足度(59.6%)と比べると約17%高く、明確なキャリア観を持って自身に適した仕事を選んだ人ほど、入社後の満足度も高い傾向が見られます。 これらの結果から、目先の肩書や他者からの評価ではなく、将来のビジョンから逆算してキャリアを築く「キャリア視力」こそが、充実したキャリアを歩むための鍵であることが示唆されました。

SNSで映える肩書や年収に惑わされない

カールツァイス株式会社は、カメラ用レンズや顕微鏡などを通して「物を見ること」を追求するだけでなく、コーポレートアイデンティティ「Seeing Beyond」を掲げ、「視る力」、つまりは「本質を見抜き、可能性を広げ、未来を切り拓く力」の重要性を社会に発信していくために本調査を行ったといいます。将来のビジョンから逆算してキャリアを築く力を「キャリア視力」と名付け、その重要性を次のように説きます。

「SNSが普及する現代社会では、他者の成功やライフスタイルが常に可視化され、『高年収』や『有名企業での勤務』といったステータスが“わかりやすい成功”として捉えられがちです。その結果、入社前のキャリア選択は『自分がどう働きたいか』よりも『誰からどう見られるか』といった外的価値観に左右されやすくなります。こうした状況は『キャリア視力』の問題だと捉えています。キャリア視力が低下すると、SNSで映える肩書や年収ばかりに目を奪われ、自分らしいキャリアの軸を見失いがちですが、逆に視力を高めることで、働きやすさや成長実感といった内的モチベーションに基づいた選択が可能になります。

今後のキャリア形成には、他者に示すための目先の肩書だけを追うのではなく、自身の価値観ややりがいに基づいてキャリアを切り開く高い『キャリア視力』 が不可欠であると言えます」

(取材・文/大友康子)