校則見直しで生徒・先生・保護者に好変化
昨日は、文部科学省が12年ぶりに「生徒指導提要(ていよう)」(児童や生徒を指導するための先生用の手引書)を改訂する案をまとめたことに加え、特に校則の運用・見直しについて、「児童・生徒自身が関与すること」が明記されたことを紹介した。本日は、そうした取り組みを先んじて2019年から中高生とともに行ってきた団体による意識調査の結果をみていこう。
その団体は、放課後教室や食事支援など子どもたちの教育支援を行う「認定特定非営利活動法人カタリバ」。校則を見直す活動を「みんなのルールメイキング」プロジェクトと名付け、生徒・先生・保護者や地域の方と対話を重ね、取り組んできた。
そして、2020年度・2021年度にルールメイキングを実践した全国13校に対し意識調査・アンケート調査を行い、校則見直しのプロセスを通じて生徒・先生・保護者それぞれにどのような変化が生まれるのかをまとめたという。
詳しく見てみよう。
校則見直し参加生徒「自分の意見に価値がある」
調査(*1)では、校則見直しの活動(プロジェクト内の呼び方は「ルールメイキング」)を中心的に進めてきた生徒と、活動へのかかわりが薄い生徒に分けて、さまざまな事柄を比較していく手法が取られた。その中で、「自分の意見に価値があると思う」という設問に対し、活動に取り組んだ生徒は、取り組まなかった生徒と比べて約25ポイント高いという結果になった。
また「社会をよりよくするために、社会問題の解決に関与したい」という設問には20ポイント高いという結果になった。
*1 調査名:「生徒の変化に関する調査研究」認定NPO法人カタリバ
みんなのルールメイキング調査研究報告書より
調査対象 | 2021年度ルールメイキングプロジェクト先進事例校・実証事業校 全国13校 |
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調査方法 | 質問紙調査、参与観察、インタビュー調査 |
調査実施者 | 研究統括 古田雄一、認定NPO法人カタリバ/データ取得・分析:研究コアチーム(10名)によって実施。 |
調査期間 | 2021年4月1日〜2022年3月31日 |
報告書 | https://onl.la/wvGBEjx |
校則見直し活動により教師も学校の魅力アップを実感
高校魅力化の取り組みの一環として校則見直しの活動に取り組んだ学校で、先生たちに勤務する学校の魅力について聞くと(*2)、活動2年目は約9割以上が「失敗してもよいという雰囲気がある」「人の挑戦に関わる機会がある」「立場や役割を超えて協働する機会がある」と回答。「本音を気兼ねなく発言できる雰囲気がある」との回答も約7割。いずれも活動初年度の回答よりも20~37ポイントもアップした。
*2 調査名:高校魅力化評価システム調査
調査対象 | 岩手県立大槌高校 生徒・先生 |
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調査実施者 | 地域・教育魅力化プラットフォーム、三菱UFJリサーチ&コンサルティング |
調査方法 | インターネットによるウェブアンケート |
調査期間 | 2019年5月〜2020年8月 |
校則見直し実践校の保護者8割、学校を評価
校則見直しを実践した学校で保護者に「学校は生徒自身が行事や学校生活のことを決めることを大切にしているか?」と聞くと(*3)、85.2%の保護者が「大切にしている」と回答。
また調査に参加した保護者からは、下記のような声が寄せられた。
- ルールメイキングは自主性や自立性を促すことにつながると思い、とても良い取り組みだと思います。
- 先生の指示待ちではなく、自ら考え行動にうつし失敗成功を繰り返し成長できるようになってきている。
- 時代に合わせただけの形だけの取り組みでは終わらせず、今後も続けていってもらいたいです。
*3 調査名:学校マネジメントプランにおける学校像検証調査
調査対象 | 泉大津市立小津中学校 生徒・保護者 |
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調査実施者 | 泉大津市立小津中学校 |
調査方法 | 質問紙調査 |
調査期間 | 2020年4月1日〜2022年3月31日 |
校則見直しの中身により日本の未来が変わる
同法人の山本晃史(やまもと・あきふみ)氏は、アンケート結果を総括し、次のように語る。
「『校則』を題材に、関係者との対話を重ね、納得解を導き出し『ルールは自分たちで変えられる』ことを実感した生徒が、社会参加に対して前向きに捉えるようになったり、そのような生徒たちの様子を目の当たりにした保護者の心境にも変化が生まれているということはとても興味深いと感じます。
今後、生徒指導提要の改訂により、さらに校則見直しの活動は全国に広がっていくことが予想されます。ただ単純に『校則を見直した』『校則が変わった』という結果というよりも、そのプロセスに生徒たちがどのような深度で関わり、そうしたルールメイキングの経験を元にどのようなことを考え、どのような力を育むことができるのか。その『校則見直しの中身』によって、生徒たちの未来、ひいては日本の未来が変わってくるのかもしれません」
(取材・文/大友康子)