帰国生入試で私立中学に入る方法

熾烈な私立中学校(多くは中高一貫校)の「帰国生入試」。保護者が早め早めに動くのがベターです。

基礎知識

受け入れ方針

海外に住んでいる(いた)子ども(以下、帰国生)の多くが受験するのは、「帰国生の受け入れ体制」を持つ学校。方針は大きく3つ。

① 海外に長く滞在していた帰国生を対象に、学習のフォローや日本の学校生活への適応指導をする。
② 外国語能力や海外経験で得た特性などに期待し、その能力を評価する。
③ 国際理解や外国語教科の推進役として帰国生に期待するが、あえて特別扱いはしない。

①や②の場合、帰国生だけでクラスが構成されていたり、特定の教科(主に英語)を帰国生(またはその教科において優秀な者)のみで学ぶ、取り出し授業があることも多い。③は、一般生と同じクラスやカリキュラムで指導する場合が多い。

出願資格・条件

入学試験、編入学試験とともに、帰国生として受験する場合の出願資格・条件は左記の通り(代表例)。

①海外での学校種別
海外で学校教育を受けた者。在籍した学校が日本人学校のみの場合でも、帰国生としての受験を求める学校は多くある。

②海外(継続)滞在年数
一番多いのは「2年以上」。「1年半以上」という学校も非常に多くなってきた。

③帰国後の経過年数
多くは「帰国後3年以内まで」で地域や学校によって様々。海外滞在年数によって経過年数を変動させるなど、細かな規定を設けている学校も。

ただし、こうした学校の定める規定を完璧に満たしていなくても、近ければ柔軟に対応してくれる学校もある(特に帰国後の経過年数の規定は近年ゆるくなってきている)。すぐにあきらめずに問い合わせてみることをおすすめしたい。

選考方法

主な選考方法は次の通りだが、コロナ禍をきっかけに試験をオンラインでも実施する学校が増加している。オンラインでの試験は一時帰国する必要がない利点があるが環境整備や機械の操作方法など独自に対策をする必要がある。志望校の入試要項をしっかり確認し、準備万端で挑みたい。

●入試試験

帰国生として受ける入試試験。その選考方法は次の3つに大別される。

①一般入試とは別日程・別内容の特別試験
一般入試とは別に、帰国生“専用”の日程・内容で行われる。選考内容で多いパターンは、「国語、算数」の2教科、または、「国語・算数、外国語(主に英語)」の3教科の教科試験に「面接(日本語または外国語=主に英語)」や「作文(日本語、または外国語=主に英語)」が加わったものだ。

そのほかにも、「外国語(主に英語)」の1教科のみという学校もある。「算数のみ」「国語+英語」「算数+英語」「適性試験」「教科試験は行わない」という学校もあり、帰国生の入試はますます多様化している。

②一般入試と同日程・同内容で合格基準は特別に設定
一般入試と同じ日程・内容で実施されるが、選考にあたっては帰国生であることに配慮がある(一般生とは別枠で合否判定を行ったり、合格基準点を一般生より低めに設定するなど)。

③日程・内容・合格基準が一般入試と同一
帰国生枠があっても、一般入試とまったく同じ日程と内容で実施される。合格基準に関しても特別な配慮がないと考えられる。

ただし、こうした学校の定める規定を完璧に満たしていなくても、近ければ柔軟に対応してくれる学校もある(特に帰国後の経過年数の規定は近年ゆるくなってきている)。すぐにあきらめずに問い合わせてみることをおすすめしたい。


●編入学試験

編入学試験の多くは、次の方法で選考される。

①3教科(国語、数学、外国語=主に英語)+面接
主流パターン。これに「作文」が加わることもある。

②外国語=主に英語(強化試験やエッセイなど)+面接
英語圏の現地校やインターナショナルスクールなど、「英語による学校教育を受けてきた者」を意識した内容で行う。
英検®やTOEFLiBT®など外国語能力の試験のスコアを評価の対象にする学校もある。

Point
東京都024年度入試から帰国生入試の出願資格を「海外滞在1年以上、帰国後3年以内」と明確化。
入試日も2025年度からは11月20日以降となりました。

時期と募集人数

●入学試験

【時期】
帰国生向けの入試は、海外入試などを含めると早いと「10月」から始まり、「2月中旬(ごく数校は3月)」まで続く。長期戦のため、負担削減策として中学の帰国生入試の場合、受験の1,2年前に帰国して受験準備をしている子供も多くいる。

【募集人数】
「定めず」、「若干名」など数を示さない学校が多い。

Point
昨年、私立の中高一貫校で「高校での募集停止」の動きが広まっています。情報を日々チェックする必要がありそうです。


●編入学試験

【時期】
「9月編入」に向けての1学期末(7~8月頃)と、「4月編入」に向けての3学期末(3月頃)に集中している。
また、数は多くないが、「1月編入」に向けて2学期末(12月頃)に実施したり、試験を「随時実施」してくれる学校もある。(実際の編入時期は、「随時」や、「学期の開始から」と様々)。

ただし、編入学試験は「欠員募集」であることが多いため、実施されない年度もある。
また、実施することが決まったとしても、募集要項が募集時期ギリギリにならないと決まらないことも多い。たとえば9月編入用なら、「6月頃に出願書類を入手し、7月に試験を受ける」という具合だ。

対策としては、とにかく日頃から志望校のホームページなどを調査しておき、帰国のタイミングが突然来てもすぐに動けるようにしておくことだろう。
また、公表はしていなくても、個別に相談すれば特別に試験を実施してくれる学校もあることも知っておきたい。

【募集人数】
「定めず」、「若干名」など数をはっきり示さない学校が大半だ。一定の人数を各学年で定期的に募集している学校はかなり少ない。また、募集する学年は「1、2年生」が主で「3年生」を対象にする学校は少ない。

滞在時からの準備

情報収集

下記を参考に準備しよう。
①模擬試験や英検®、TOEFL®などを受けて学力・英語力を把握する。
②インターネットで総合&学校独自のサイトを閲覧。
③日本から受験関連の情報誌を入手。
④海外にある「日本の受験塾」で情報を入手。
⑤海外の大都市をメインにして行われる、日本の学校の(合同)説明会に参加。
⑥一時帰国を利用して、日本で行われる「学校説明会」や「入試説明会」「学校フェア(JOBA主催)」などに参加。
⑦学校や学習塾、帰国便利帳などが主催するオンラインでの学校説明会に参加。
⑧一時帰国時などに、文化祭などの学校行事を見学。
⑨各学校に直接電話やメールで問い合わせる。

学習の準備

●教科試験

対策は選考方法に沿って行うのが効率的だ。

【入学試験】

帰国生専用に、「国語」、「算数」(理科、社会)が出題される場合、問題の多くや合格基準は「一般入試の基礎的なレベル」だ。それを念頭に置き、学習を進めておきたい。
“一般入試とほぼ同一”で実施・選考されるなら、国内生と同様、通信教育や進学塾を活用するなど、さらなる対策が必要だ。
「外国語(主に英語)」が出題される場合は、概してレベルが高い。入手できれば過去問題や高校の参考書で学習を進めたい。また、教科試験が「外国語(主に英語)のみ」であれば、難易度はさらに高い。外国語能力試験などの問題集で、文法、語彙、読解力、文章作成能力などを強化しておくとよい。


【編入学試験】

基本的には入学試験と同じ対策でよいだろう。ただし、「試験直前の学期」で履修した範囲から出題されることが多いため、志望校の進度を確認しておきたい(私立の進学校は総じて進度が速い)。「算数」が「数学」に変わることにも注意。

<作文>
使用言語は「日本語」または「外国語(主に英語)」。「外国語(主に英語)」の場合に注意すべきなのは、口語英語の力だけでは不十分ということ。文法や文章表現としての語彙がしっかり見られる。問題意識を持って自らの考えを決まった文字数で記述する力をつけることも大切だ。

<面接>
使用言語は「日本語」が多いが、「外国語(主に英語)」の場合も。表現方法を学ぶほか、経験や考えを整理しておくとよいだろう。