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2022年度版 私立中学校に帰国生入試で入る方法①

帰国後の選択肢として高い人気を誇る、私立の中学校(多くは中高一貫校)。近年、入学競争は熾烈です。保護者として、滞在中から準備をしっかり始めておきましょう。

基礎知識

受け入れ方針

 海外に住んでいる(いた)子ども(以下、帰国生)の多くが受験するのは、「帰国生の受け入れ体制」を持つ学校。その方針は大きく3つに分かれる。

❶海外に長く滞在していた帰国生を対象に、学習のフォローや日本の学校生活への適応指導をする。
❷外国語能力や海外経験で得た特性などに期待し、その能力を伸ばす。
❸国際理解や外国語教科の推進役として帰国生に期待するが、あえて特別扱いはしない。

 ❶や❷の場合、帰国生だけでクラスが構成されていたり、特定の教科(主に「英語」)を帰国生(またはその教科において優秀な者)のみで学ぶ、取り出し授業があることも多い。❸は、一般生と同じクラスやカリキュラムで指導する。

出願資格・条件

 入学試験、編入学試験ともに、帰国生として受験する場合の出願資格・条件は下記の通り(代表例)。

❶海外での学校種別

海外で外国の学校教育を受けた者。
在籍した学校が日本人学校のみの場合、帰国生としての受験が認められないこともある。

❷海外(継続)滞在年数

一番多いのは「2年以上」だ。「1年以上」という学校もある。

❸帰国後の経過年数

多くは「帰国後3年以内まで」で、地域や学校によって様々。海外滞在年数によって経過年数を変動させるなど、細かい規定を設けている学校も。

 ただし、こうした学校の定める規定を完璧に満たしていなくても、近ければ柔軟に対応してくれる学校もある(特に帰国後の経過年数の規定は近年ゆるくなってきている)。そのため、すぐにあきらめずに問い合わせてみることをおすすめしたい。

選考方法

 主な選考方法は次の通りだが、コロナ禍をきっかけに試験をオンラインでも実施する学校が増加している。オンラインでの試験は一時帰国をする必要がない利点があるが、環境整備や機械の操作方法など独自に対策をする必要がある。志望校の入試要項をしっかり確認し、準備万端で挑みたい。

入学試験

帰国生として受ける入学試験。その選考方法は次の3つに大別される。

❶一般入試とは別の日程・内容の特別試験

一般入試とは別に、帰国生〝専用〟の日程・内容で行われる。選考内容で多いパターンは、「国語、算数」の 2教科、または、「国語、算数、外国語(主に英語)」の3教科の教科試験に「面接(日本語または外国語=主に英語)」や「作文(日本語または外国語=主に英語)」が加わったものだ。
 そのほかにも、「外国語(主に英語)」の1教科のみという学校も増えてきている。さらには「算数のみ」「国語+英語」「算数+英語」「適性試験」「教科試験は行わない」という学校もあり、帰国生の入試はますます多様化している。

❷一般入試と同日程・内容合格基準は特別に設定

 一般入試と同じ日程・内容で実施されるが、選考にあたっては帰国生であることに配慮がある(合格基準点を一般生より低めに設定など)。

❸日程・内容・合格基準が一般入試と同一

 帰国生枠があっても,一般入試とまったく同じ日程と内容で実施される。合格基準に関しても特別な配慮 がないと考えられる。

編入学試験

 編入学試験の多くは、次の方法で選考される。

❶3教科(国語、数学、外国語=主に英語)+面接

主流パターン。これに「作文」が加わることもある。

❷外国語=主に英語(教科試験やエッセイなど)+面接

英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通っていた生徒、つまり「英語による学校教育を受けてきた生徒」を意識した内容で行う。TOEIC®など外国語能力試験のスコアを評価の対象にする学校もある。

コロナ禍を機にオンライン(編)入試の導入校が増加中。入試時期が早まる傾向があるほか、特有の試験対策も必要です。

時期と募集人数

*表中で線が分断されているところは、他行と時期がずれて1、2校のみが該当することを意味します。*編入学に関しては、随時募集しているケースもあり、そのケースに当てはまる学校については表中には反映していません。

入学試験

●時期

帰国生向けの入試は、海外入試などを含めると、早いところでは「10月」から始まり、「2月中旬(ごく数校は3月)」まで続く。  長期戦であるとともに年齢による負担軽減策として、中学段階の帰国生入試の場合、受験の1、2年前に帰国して、受験準備をしている子どもも多くいる。

●募集人数

「定めず」、「若干名」など数をはっきり示さない学校が多い。

編入学試験

●時期

「9月編入」に向けての1学期末(7〜8月頃)と、「4月編入」に向けての3学期末(3月頃)に集中している。
 また、数は少ないが、「1月編入」に向けて2学期末(12月頃)に実施したり、試験を「随時実施」してくれる学校もある(実際の編入時期は、「随時」や、「学期の開始から」と様々)。
 ただし、編入学試験は「欠員募集」であることが多いため、実施されない年度もある。また、実施することが決まったとしても、募集要項が募集時期ギリギリにならないと決まらないことも多い。たとえば、9月編入用なら、「6月頃に出願書類を入手し、7月に試験を受ける」という具合だ。対策としては、とにかく日頃から志望校ホームページなどを調査しておき、帰国のタイミングが突然来てもすぐに動けるようにしておくことだろう。
 また、公表はしていなくても、個別に相談すれば特別に試験を実施してくれる学校もあることも知っておきたい。

●募集人数

「欠員分」、「若干名」など数をはっきり示さない学校が大半だ。一定の人数を各学年で定期的に募集している学校はかなり少ない。また、募集する学年は「1、2年生」が主で、「3年生」を対象にする学校は少ない。

国立中学校・公立中学校・公立中高一貫校に帰国生入試で入る方法

国立中学校

 教育における実践的な研究の中で、日本への適応教育を行うことを目的にした受け入れを行っている。受け入れ態勢は学校によって異なり、帰国生学級を設ける学校と、普通学級に混合で受け入れる学校(混合受け入れ方式)の2種類がある。

帰国生学級(帰国子女教育学級)を設置している中学校
  • お茶の水女子大学付属中学校
  • 愛知教育大学付属名古屋中学校
  • 京都教育大学付属桃山中学校
普通学級への混合受け入れ方式の中学校
  • 埼玉大学教育学部附属中学校
  • 千葉大学教育学部附属中学校
  • 東京学芸大学附属国際中等教育学校
  • 横浜国立大学教育学部附属横浜中学校
  • 横浜国立大学教育学部附属鎌倉中学校
  • 静岡大学教育学部附属島田中学校
  • 大阪教育大学附属池田中学校
  • 神戸大学附属中等教育学校

 入学試験があるため私立中学校の受験者が併願することが多いが、日本全国での募集枠・人数が各校で15名前後と少ない上に(編入学は欠員募集のみ)、「自宅から片道60分以内」など通学時間のほか、明確な通学区域といった制限のある学校が多いことは留意しておきたい。

 試験内容は、教科試験、作文、適性検査、筆答の組み合わせ。教科試験がある場合は、多くが一般生と同問題で実施される。また本人面接は必ずあり、保護者が同席するケースも多い。

公立中学校・公立中高一貫校

 義務教育の中学3年間は、所定の手続きをすれば、帰国後の居住地にある公立校の年齢相当の学年にいつでも編入学することができる。通う学校は原則的には当該地域を所管する教育委員会から指定されるが、近年では「学校選択制」を導入している自治体が増え、公立校でも学校が選べる地域もある。

公立中学校への入学&編入学手続きの手順

海外滞在中

居住予定の地域を所管する教育委員会に問い合わせ、入学・編入学に必要な書類を確認する

現地の学校に発行してもらう(在学証明書など)
*帰国後すぐに必要になるので手荷物で持って帰る

日本帰国後

役所に転入届を提出する(帰国後~14日以内)

入学・編入学する学校に必要書類を提出する

公立中学校に入学または編入学

 一方、人気の高まっている公立中高一貫校の(編)入学試験では、一般入試で課されることの多い適正試験ではなく、日本語や英語での作文を課す学校が多い。入学試験での募集人数はおおむね各校30名前後。編入試験は欠員募集のみで日本人学校出身者は対象外となることもある。また、学校の指定する通学区域内に居住する必要がある。

監修/海外・帰国子女教育専門機関 JOBA

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