面接まで代行業者が行う「採用アウトソーシング」
昨日は、「インターンシップ」に関するアンケート調査を紹介し、いまどきの学生はインターンシップなどの企業選びは検索などで自ら探すより、お知らせメールやスカウトメールを活用している現状を見た。
本日は、採用コンサルティング業務などを行う株式会社アールナイン(東京都港区)が行った「採用アウトソーシング」に関するアンケートから、昨今の就職活動事情を読み解いていこう。
採用アウトソーシングとは、採用活動に関する業務を企業に代わって代行業者が実施すること。2016年頃から浸透しだし(株式会社アールナインの実感)、当初は広報活動の支援や応募者管理などが主だったが、近年は面接や内定者のフォローなど、採用の根幹にかかわる部分も代行業者が行うケースも多々出てきているという。
実際に採用アウトソーシングを行って調査
調査を行った株式会社アールナインは自社の2023年卒採用の選考プロセスの一部に採用アウトソーシングの概念を導入。自社が顧客に対して行っているように、第三者の人材プロフェッショナル(業務委託パートナー)に初回面談と一次面接を担当してもらった。
人材プロフェッショナルは自分が社員ではないことを学生にきちんと伝えたうえで業務を遂行。そして後日、「社員ではない人が採用プロセスを代行することについてどう思いますか?」という質問を実施した。その際、アンケートは「選考結果には一切影響しない」という旨を説明会参加時に口頭にて伝えており、基本的には学生の本音が表れているものと思われる。その結果は次のとおり。
9割以上の学生が採用代行を「よいと思う」
「社員ではない人が採用プロセスを代行することについてどう思いますか?」という質問に対し、68.4%の学生が「非常によいと思う」、27%の学生が「よいと思う」と回答。合計95.4%の学生が採用代行を「よい」と思っていることが分かった。
採用代行は「客観性な視点から企業を理解することができる」
採用代行を「よいと思う」理由について、主な学生の声(概要)は下記のとおり。
<実際の学生の声①>
- 会社を客観的に見ることができる人の立場から色々な話を聞けることが貴重だと思った。
- 客観的な視点で就活生と企業がマッチしているかを見てもらえるため、両方が納得出来る就活・採用を効率的にできると感じた。
- 第三者ということもあり、通常では聞きにくい他企業との差や類似点、パートナーから見てどう思っているかといった質問をしやすかったのでよかった。企業をそのように第三者の視点から見た意見というのは就活生にとって非常に貴重なものだった。
- 第三者の方から見た、企業の強みを聞けたため、非常に良いと感じた。
- とてもフランクに話すことができ、客観的な社風を知ることができた。
- 客観的な視点から会社の説明を聞くことができ、さらに納得できる部分も多かった。
第三者ではなく実際の社員から話をする方が、日々の経験に基づいたリアルな話を聞くことが出来るだろう。しかし、学生の立場としては「ポジティブな面ばかり話そうとしていないか?」「ネガティブな面を隠そうとしていないか?」と勘ぐり、実情はどうなのだろうと気になることが多そうだ。かといって、ネット上に掲載されている情報だと信憑性が定かではなかったり、同級生や先輩に聞いた話も結局は社員から聞いた情報だったりと、真の意味で第三者の立場から見た客観的な情報を得ることがとても難しい。
採用代行は、学生としては第三者からの客観的な意見を聴くことができ、実際の社員が面談するよりもむしろ会社への信頼性や面談への信頼度が上がる場合が多くあるようだ。
採用代行だと「就活やキャリアについての相談ができる」
採用代行を「よいと思う」理由について、次のような声も挙がった。
<実際の学生の声②>
- 会社の説明がわかりやすかったのはもちろんだが、個人的な話も聞いてもらえて雑談もできたので、初めての面談だったがリラックスしてできたし、面談してよかったと思えた。
- 会社とどのあたりがマッチングしているのかを第三者的視点から教えてもらい、これまでの経験や長所・短所話しした際にこの部分は強調したほうがいいなど詳細にアドバイスをもらえた。
- 初めての面談ということで不安があったが、会社についてはもちろん、個人的な就活の相談にものっていただき、とても有意義な時間を過ごすことができた。
- 就活の状況や人事目線からの面接のアドバイスなど参考になる情報を教えていただけた。
- サイトでは入手できない情報や、面接に関するアドバイスなどをいただき、話もとても盛り上がった。
- 就活に関しても私自身にあった話をしてくれたため、とても興味を持てた。
実際に面談や面接を代行する第三者のなかには採用に関する豊富な知識を持ち、多くの学生や転職者のキャリア相談にのってきた経験があるプロが多い。そのため、学生が就活の軸として掲げている項目と企業の魅力をうまく結びつけて伝えたり、学生の将来のキャリアを一緒に考える中で企業のビジョンを浸透させるなど、ただの人生相談ではなく、採用成功のための布石として戦略的に面談を行うことなどもできる。
イマどき就活を知り、子どもの就活を見守る
保護者世代からすると、「志望企業の選考プロセスを第三者が代行しているなんてガッカリ」などと思ってしまうかもしれないが、現在の学生はそのような選考方法も柔軟に受け入れ、前向きに就活を進めていっているようだ。
成人した大学生の就職活動に対して、親の過剰な口出しは控えたいところだが、そもそも就職活動の仕方が自分たちの頃とはあまりにも異なり、口出しするのも難しいかもしれない。せめて、インターンシップやスカウトメール、採用アウトソーシングなど、現在の就活の潮流だけでもおさえておくと、子どもから就活の相談を受けた際に多少なりとも時代に即したアドバイスができて良いかもしれない。
(取材・文/大友康子)