「帰国生はこうあるべき」とは考えなくていい
812名の帰国生たちに最後に聞いたのは、「進路の希望」と「将来の夢・理想の人物像」。
Q1|小・中・高卒業後の進路、希望はある?
ある 73.1% | ない26.9%
Q2|将来の夢や「いつかこんな人になりたい」という目標はある?
ある 63.3% | 今はない 36.7%
将来の夢
- 世界中の人の心を豊かにする何かを開発する科学者。JOさん(アメリカ 1~2年、中2男子)
- 漫画家。『鬼滅の刃』のように人を励ましたい。HIさん(ポルトガルほか 6~8年、中1女子)
- 芸人。笑顔は世界共通! HKさん(中国 6~8年、高1男子)
- 英語でも対応できる獣医。CHさん(タイ 4~6年、中1女子)
- 医師。医療が十分でない国や地域があると知って。KKさん(中国4~6年、中2女子)
- 国連の職員。海外の人たちと働く父に憧れて。HAさん(中国 6~8年、中1性別無回答)
- 音楽で人を幸せにしたい。日本でもイギリスでもずっとピアノを続けてきたから。YRさん(イギリス 6~8年、高1女子)
- 建築家。海外にはホームレスの人が多くいて、みんなに家があるといいなと思った。自分も面白い家に住みたいし。SHさん(アメリカ 2~4年、中1男子)
- 教師になって、日本人の「外国人に対する考え方」を変えていきたい。YKさん(滞在国無回答 8~10年、高3男子)
- 総合馬術を極めたい。アメリカで体験して、どハマリしてしまったから。死ぬまでにオリンピックに出たいと思う。HSさん(アメリカ 2~4年、高1女子)
理想の人物像
- 協力できる人。GTさん(イギリス 4~6年、中1男子)
- どんな相手にも優しく、身近で困っている人をできる範囲で助けられる人。ASさん(デンマーク 6~8年、中1男子)
- 全員の意見を聞ける人。NMさん(アメリカ 4~6年、中1女子)
- 外国のお洒落な雰囲気が似合う、ダンディな男。YMさん(中国 2~4年、高3男子)
- 世界の平和に少しでも貢献できるような人。より多くの人が互いを思いやる心と知識を身につけたら、世の中は今よりもっとよくなると思う。AOさん(イギリス 2~4年、高2女子)
まず「進路の希望」として最も多かったのは、小中学校の卒業後では日本の私立校、高校卒業後では日本の大学だった。また、再び海外で学びたいという帰国生も小学生で14.3%、中学生で12.8%、高校生では30.1%いた。一方で、まだ進路を決めかねている帰国生も一定数いた。「将来の夢・理想の人物像」は実に様々だった。
現在、海外で特別な毎日を過ごしている我が子。保護者が「進路や夢にはここで得た力を活かして…」と願うのは自然なことだろう。とはいえ、こうして数多くの帰国生たちの言葉を直に見てみると、海外での毎日は進路や夢を決める材料の1つではあるが、すべてではないのだと感じさせられる。英語力が高くても、海外の学校に進んだり英語力をメインで使う職業に就いたりしなくていい。海外経験とは全然関係のない道を歩んでもいい。「得た力は必ず活かすべきだ」「帰国生とはこうあるべきだ」といった大人の思い込みや先入観を取り払うことで、子どもの可能性はきっともっと広がっていく。
またご登場いただいた専門家3名の言葉には「我が子のフォローは柔軟にしよう」という共通のメッセージが込められていた。柔軟であるためにも、子どもだけでなく保護者自身も「帰国生の親だからこうあるべきだ」とは考えないことが大事だろう。そうすれば日本に帰国してからも、親子共々、自分らしく、自分たちらしく暮らしていけるはずだ。
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取材・文/帰国便利帳編集部・庭野真実 イラスト/Okuta