悩んだことはある?ない?帰国生たちの2択
様々な項目についてシンプルに「悩んだことがあるか、ないか」を聞きました。帰国生の答えを%で示し、コメントもあわせて紹介していきます。
教科の成績について悩んだことは?
ある 67.2%
- 「国語」では、漢字はもちろん、解き方に慣れていない読解問題にも苦労して、テストでなかなか点数がとれない。ATさん(マレーシア4~6年、中3女子)
- 補習校で学んでいない科目はすべて壊滅的。大縄、リコーダー、ミシンなども経験がなく、帰国して半年は苦労した。RHさん(アメリカほか6~8年、中1女子)
- テストの点数ばかりが成績につながることに悩んだ。授業中の態度、宿題の頑張りなどは、成績にあまり反映されない。海外とは違う。HHさん(シンガポールほか8~10年、高1女子)
- 帰国生中心の学校に通っているため、やはり「英語」の授業がハイレベル。日本人学校出身なので覚悟はしていたが、どうしたらついていけるのかと結構悩んだ。WTさん(オランダ2~4年、高1男子)
ない 32.8%
- 日本人学校出身なので。MMさん(ドイツほか2~4年、高2女子)
- 日系オンライン塾で日本のカリキュラム通り学んでいたから。RKさん(ロシアほか4~6年、小6女子)
- 長期休み中に行った日本人学校のサマースクールが◎。MTさん(アメリカほか8~10年、高1女子)
- 帰国前、何冊も日本語の本を読んでいたから「国語」は得意。ESさん(アメリカ4~6年、中2女子)
- 漢検の勉強をしていた過去の自分よ、ありがとう。SUさん(ブラジルほか8~10年、中3男子)
- 「理科」「社会」は帰国してからでも何とかなるかも。私は小4~中1の内容がすっぽり抜けているが、帰国後1年くらいの努力で学年トップレベルに。AKさん(オーストラリア4~6年、高3女子)
“悩んだ教科”ランキング
■小学校時代
1位:国語 2位:社会 3位:算数
■中学校時代
1位:国語 2位:社会 3位:数学
■高校時代
1位:数学 2位:国語 3位:理科(物理、化学など)
注目すべきは小中共通の2位が「社会」であること。「歴史」なら歴史上の人物、「地理」なら都道府県など、基礎的な知識がないことで苦労した帰国生多数。
“悩まなかった教科”ランキング
■小学校時代
1位:外国語活動(英語) 2位:算数 3位:体育
■中学校時代
1位:外国語(英語) 2位:数学 3位:国語
■高校時代
1位:外国語(英語) 2位:国語、数学(同率2位)
国際化の折、1位がすべて「外国語(英語)」という頼もしい結果に。帰国生入試に備えて学んだ「国語」と「算数・数学」には悩まずに済んだという声も多かった。
授業や勉強のやり方について悩んだことは?
ある 62.1%
- 小学校時代、授業中、分かっているのに手をあげて発言しない子の多さに驚いた。RHさん(アメリカ6~8年、中1女子)
- 授業の進みが早い。先取り学習が不可欠で大変。JOさん(ロシア4~6年、中2女子)
- できる人が待たされる。先に進めずもどかしい。RKさん(タイ2~4年、中1男子)
- 座ってノートをとる授業が多くて眠くなる。THさん(カナダ6~8年、高2女子)
- 「暗記科目」という概念がなく、どうテスト勉強をすればいいか分からなかった。EKさん(リビアなど6~8年、高3女子)
- 「英語」は教科書と丸っきり同じように訳せないとテストで不正解になることも(怒)。MKさん(フランス2~4年、高3女子)
ない 37.9%
- どの教科の先生も、生徒が興味を持つよう授業を工夫してくれている。YDさん(ベトナム2~4年、中3女子)
- 滞在国で通った補習校のおかげで日本の学校や授業のイメージが分かっていたから、特に戸惑うことはなかった。KMさん(アメリカ2~4年、中3男子)
- 海外滞在時も帰国後もインター。大きく変わったことはなし。HKさん(香港ほか10年以上、高2男子)
- 授業がほぼ全部英語で行われるコースを選択しているので、分かりやすい。SOさん(ベトナム4~6年、中2男子)
- 校外学習の頻度が高くて嬉しい。SKさん(中国ほか4~6年、高2男子)
- 質問しやすい先生がいる。SWさん(フィリピン1~2年、小6性別無回答)
- 日々ただただ必死で悩む暇がない。MTさん(アメリカ10年以上、中3女子)
休み時間の過ごし方について悩んだことは?
ある 26.2%
- 友だちができる前は、休み時間に気まずさを感じた。TYさん(カナダ6~8年、中2男子)
- みんながスマホやゲームで遊んでいるため、自分もそれしかやることがなくなる。YKさん(アメリカ4~6年、中2女子)
- 短い休み時間が分散されていて、帰国してすぐの頃は、時間をどう使えばいいか分からなかった。KKさん(スイス2~4年、高2女子)
- グループ行動が多く、自分がしたいことをしにくい。MNさん(タイ4~6年、中3女子)
- 現地ではお昼休みは家に帰って昼食をとっていた。日本の学校では、そんなことはできない。RHさん(スイス10年以上、高1女子)
- スナックタイムがないのが不満。SHさん(イギリス4~6年、小6男子)
ない 73.8%
- 体育館や校庭、屋上など、いろいろな場所で、他学年の子とも一緒に遊ぶことができた。海外ではできなかったので新鮮。YTさん(中国2~4年、中1女子)
- 小学生の頃は、毎日のようにドッジボールをしていた。休み時間が待ち遠しかった。HKさん(中国6~8年、高1男子)
- 小6のときは休み時間も委員や係の用事がよく入り、忙しくも充実していた。RHさん(アメリカ6~8年、中1女子)
- 花いちもんめなど、日本ならではの遊びを知れた。YTさん(アメリカ2~4年、中2女子)
- 昼休みに購買でおやつを買うのが楽しみ。つい買いすぎる。YTさん(タイ6~8年、中1男子)
- ときには、友だちと中庭で寝たりもする(笑)。IKさん(アメリカ2~4年、中1男子)
- 休み時間のおしゃべりがきっかけで、親友ができた。THさん(カナダ6~8年、高2女子)
学校の給食について悩んだことは?
ある 20.4%
- 海外には無かった給食当番は、意外と大変な任務。みんなに同じ量を盛りつけるのが難しく、プレッシャーを感じた。AKさん(アメリカ2~4年、中1女子)
- 魚が苦手(涙)。HSさん(アメリカ4~6年、中3女子)
- 給食で出される飲み物は牛乳。和食に牛乳は合わない気が。RSさん(シンガポール4~6年、小6男子)
- 完食しないといけないわけではないが、残すのはよくないと思い、いつの間にか給食の時間がイヤになってしまった。TOさん(フランス4~6年、高2女子)
- 給食時間が短い。私は食べるのが遅いので、急がなければならない。YKさん(アメリカ4~6年、中2女子)
- 学食が大混雑。KOさん(アメリカ2~4年、高1男子)
- コロナ禍では給食時間のおしゃべりが禁じられていた。シーン。OGさん(メキシコほか2~4年、高2女子)
ない 79.6%
- 海外滞在時から給食に憧れていたので、初めて食べたときは感動した。YKさん(アルジェリアほか6~8年、中3男子)
- おかわり自由、バンザーイ! ALさん(アメリカほか8~10年、中1男子)
- ガチでおいしい。一番人気はカレーでしょ!SHさん(フランスほか2~4年、中1男子)
- 余ったデザートをかけて行うジャンケンが熱戦。眺めているだけで笑ってしまう。RTさん(アメリカ6~8年、高2女子)
- 小学校では給食が校内で作られるため、毎日ホカホカのものを食べられて最高だった。ESさん(アメリカ4~6年、中2女子)
- 1日ごとに献立が変わるので、毎日とても楽しみ。MHさん(アメリカ4~6年、小6女子)
教室などの掃除について悩んだことは?
ある 30.1%
- 毎日毎日、同じ部屋を掃除する必要はあるのかな? NIさん(ドイツ6~8年、中2女子)
- 海外の学校では掃除を業者さんがしていた。だから「日本ではなぜ生徒がやらなきゃいけないんだろう…」と正直、思った。KMさん(アメリカ8~10年、中3女子)
- 自分のぞうきんをよく洗わない人がいて、教室がニオった。JOさん(アメリカ4~6年、中2男子)
- 適当な人、さぼる人が必ずいる。SHさん(アメリカ4~6年、中1性別無回答)
- 掃除当番になっている日は、部活に行く時間が結構遅くなるから困ってしまう。MKさん(アメリカ2~4年、中2女子)
- 僕たちがちゃんと掃除しているかを、いつも先生がたが目を光らせて見ている…。SKさん(タイ2~4年、中2男子)
ない 69.9%
- 掃除の時間は「日本の学校にいる」と実感できていい。KOさん(インドネシアほか4~6年、高1女子)
- 自分たちが使う場所をきれいにするのは気持ちがいい。SYさん(アメリカ4~6年、高1男子)
- 先生のチェックをクリアできるように、みんなで工夫するのは楽しい。THさん(カナダ6~8年、高2女子)
- 毎度、ぞうきんがけレースが盛り上がる。HSさん(アメリカ4~6年、中3女子)
- みんなで熱唱しながら掃除をする時間が大好き。HSさん(オランダほか4~6年、高3女子)
- 小学校のプール開きの前に、先生と生徒全員で掃除をした。大変だったけど、いい思い出。ILさん(タイ2~4年、中2男子)
同級生や先生との関係で悩んだことは?
ある 50.5%
- 「帰国生の子」という前提で接して来られるのが苦痛だった。また、常夏の国にいたので他の生徒よりも肌の色が黒く、そのことを言われるととても悲しかった。SKさん(タイ10年以上、高3女子)
- 意見を言わない子が多くてイヤ。RTさん(香港2~4年、中2女子)
- 「謙遜」や「忖度」が面倒。YBさん(ベトナム2~4年、高2女子)
- 海外の学校では1クラス15人。今は40人と多すぎて戸惑う。HOさん(アメリカ4~6年、中3男子)
- 男女差別をする先生がいた。AKさん(アメリカ2~4年、中1女子)
- 日本は言葉や言葉のかけ方が優しいのでその場では気づけないが、よくよく考えると注意されていたということがある。MHさん(イギリス2~4年、中1女子)
ない 49.5%
- みんな、優しくて面白い。RRさん(イタリア4~6年、高1女子)
- 帰国生にはコミュニケーション力が高く多様性も尊重できる子が多い。積極的に友だち作りをする場面をよく見かけて、かっこいいなと思う。SHさん(アメリカほか2~4年、中1男子)
- クラスのほとんどの生徒が帰国生だから、すぐ仲よくなれた。YNさん(中国ほか10年以上、中1女子)
- はっちゃけすぎても「そういう人」と受け入れてもらえる。OSさん(アメリカ4~6年、中3女子)
- いじめをする子が周りにいないのでラッキーなのかも。NEさん(イギリスほか8~10年、中2女子)
- 大きなもめごともなく平和に過ごせている。先生はフレンドリーだし、生徒に寄り添ってくれるからありがたい。HNさん(タイ6~8年、中3女子)
どんなことで悩んだ? ※複数選択可
友だちとの会話の内容・・・・・・・・・44.6%
友だちとの距離感・・・・・・・・・・・40.2%
同調圧力・・・・・・・・・・・・・・・35.8%
友だち作り・・・・・・・・・・・・・・35.3%
クラスの雰囲気・・・・・・・・・・・・27.0%
過剰な気遣い・・・・・・・・・・・・・18.1%
SNSでの交流・・・・・・・・・・・・・12.3%
いじめ・・・・・・・・・・・・・・・・ 9.3%
「友だちとの会話の内容」「友だちとの距離感」に関しては「進路のことなど肝心な話をあまりしない」「本音を話さないから距離が縮まらない」といった声が。「同調圧力」に関しては「みんなと違うことをしたら仲間はずれにされた」という経験談も。
悩んだ帰国生最多|教科の成績、保護者は帰国後にどうフォローする?
スモールステップとポジティブワードを大事に
帰国後、学校生活に慣れていく段階で教科の成績に悩むのは当たり前。そう話すのは臨床心理士・公認心理師の中里氏。「勉強するどころか、学校生活を送ることで精一杯だからです。この時期に、親子共々求められるのは『すべてをすぐに完ぺきにしようとしない姿勢』。お子さんにはまず『これならできるかも』と思うものを1つ決めさせ、それを頑張るよう伝えます。スモールステップで小目標の達成を重ねさせるのです。保護者は都度おおいに褒め、愚痴は共感的に聞きます」(中里氏)。
フォローの際は、『こうでなければダメだ』『~すべき』といったストレスのもとになる言葉を控えるといいという。「代わりに『~はいいかも』『~という勉強方法もあるね』などのポジティブワードを。これで子どもの過度な緊張がゆるみ、気持ちも前向きに」(中里氏)。
お話を伺った方
臨床心理士・公認心理師
中里文子(なかざと・あやこ)氏
AGヒューマンサービス株式会社代表。児童相談所・教育委員会での相談業務、民間企業EAPカウンセリング業務、海外赴任者と家族のメンタルケア等の支援業務を担い、心理学研究も続ける。
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取材・文/帰国便利帳編集部・庭野真実 イラスト/Okuta