海外大学進学が前提のカリキュラムを履修
3つ目は、A-Level[用語①]やIBディプロマ[用語②]を取得できる高校の場合だ。海外大学への進学を前提として学ぶ。そのため、進学ルートもシンプルで盤石なものになるという。
「A-LevelやIBディプロマを取得できれば、日本の高校卒業資格だけでは難しい、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの大学への直接入学の道が開かれます。これは大きなメリットと言えるでしょう」(YGC)。
ただし念頭に置くべき点も。
「近年、A-Levelを提供しているケンブリッジ認定校は日本で増えつつあるものの、一条校(学校教育法第一条で学校と定められた学校)ではまだわずかであるため、一条校以外での取得を考える場合はインターナショナルスクールのケンブリッジ認定校に通ったり、個人でオンライン履修をしたりすることに」(YGC)
そうした場合は、比較的高額なインターナショナルスクール通学のための費用、あるいはオンラインで履修するための費用を計算に入れる必要が出てくる。
IBディプロマはどうか。
「IBディプロマの成績がよいと、GPA[用語③]は高くなります。これは海外大学への進学に大変有利なことと言えます。ただしこのプログラムは習い事をする時間も取られないほど忙しいため、本人は時間管理に、保護者は我が子の体調管理に徹することが求められます」(YGC)
近年、文部科学省の後押しもあり、国公立の中高一貫校などを筆頭に、英語ではなく日本語で履修する日本語IB認定校も増加傾向に。海外大学進学において、そうした日本語IB認定校で学び、IBディプロマを取ることはハンディキャップにはならないのだろうか。「ハンディキャップにはなりません。ただし、海外大学に進んでから授業にしっかりついていけるように、英語力をあらかじめ高めておくことが大切です。開講されている英語の講座をプラスで取っておくといった対策を講じましょう」(YGC)。
高校進学前に大学をイメージできれば◎
A-Level とIBディプロマ、どちらを取得する場合にも重要なのは、できる限り早く、できれば日本帰国 後の学校を決める際に、いずれ進む 大学までイメージしておくことだと いう。
「国や大学、場合によっては専攻で出願要件(取っておくべき授業やスコア)が異なることもあります。そのため、高校に進学する前に大学をイメージしておくことで、A-LevelやIBディプロマで履修しておくべき科目や授業名、必要となるスコアなどが細かくわかるようになり、検討している高校でそれが実現可能かどうかを吟味できます。理想とするゴールに近づくカギはここにあるのです」(YGC)。
用語解説
用語①:A-Level
イギリスを中心に、日本を含む世界 約160カ国・地域、約10,000の学校で認定されているプログラムを経 て得られる大学入学資格。英国ケン ブリッジ大学傘下の教育機関である Cambridge Internationalが提供。約50科目から3~4科目を選択して英語 で学ぶ。成績は外部評価(試験)で付く。
用語②:IBディプロマ
イギリスを中心に、日本を含む世界 約160カ国・地日本を含む世界約159か国・地域、約5600の学校で認定されているプログラムを経て得られる大学入学資 格。スイスのジュネーブに本部を置くInternational Baccalaureate Organizationが提供。言語と文学 (母国語)、言語習得(外国語)、個人 と社会、理科、数学、芸術の6分野 から6科目を選択し、さらに3つのコア科目を履修して学ぶ。成績は内部評価と外部評価(試験)の総合で付く。域、約10,000の学 校で認定されているプログラムを経 て得られる大学入学資格。英国ケン ブリッジ大学傘下の教育機関である Cambridge Internationalが提供。約 50科目から3~4科目を選択して英語 で学ぶ。成績は外部評価(試験)で付く。
用語③:GPA
Grade Point Averageの略で、成績評価の指標のこと。アメリカの名門大学に入るために必要とされるGPAの目安は、3.5以上。大学入学の審査だけではなく、奨学金の審査にも用いられる。
お話を伺った方
Y-SAPIX Global Campus(YGC)
北米の高校・大学への進学をサポートする学習塾。「論理的思考力の育成」「対話力の向上」「自国の文化・社会と世界の多様性の理解」の3つを教育方針として掲げ、All English授業を行っている。生徒の海外大学合格実績は多数。
取材・文/本誌編集部・庭野真実 イラスト/佐伯ゆう子