昨日はOECDが行っている国際的な学習到達度に関する調査「PISA(Programme for International Student Assessment)2022」についてチェックした。本日も続けて見ていくことにしよう。
数学を使い実生活の課題を解決する自信が低い
調査の中心的分野である「数学的リテラシー」の定義は下記の通り。
「数学的に推論し、現実世界の様々な文脈の中で問題を解決するために数学を定式化し、活用し、解釈する個人の能力のことである。それは、事象を記述、説明、予測するために数学的な概念、手順、事実、ツールを使うことを含む。この能力は、現実社会において数学が果たす役割に精通し、建設的で積極的かつ思慮深い21世紀の市民に求められる、十分な根拠に基づく判断や意思決定をする助けとなるものである」
「数学的に推論し、現実世界の様々な文脈の中で問題を解決するため」の力を調査し、日本は世界トップレベルの成績を収めているのだから、その能力はあるはずなのだが、いざ、「実生活の課題にからませて、数学的な解を求めること」や「実社会の問題の中から、数学的な側面を見つけること」に対する自信を問うと、日本はOECD平均よりもぐっと数値が悪くなってしまう。
「実生活の課題にからませて、数学的な解を求めること」に自信があるかどうかを問うと、「とても自身がある」「自信がある」の合計がOECD平均は52.5%、日本は30%。「実社会の問題の中から、数学的な側面を見つけること」に自信があるのはOECD平均が51.2%、日本が22.7%。
自律学習を行う自信も低い
コロナ禍で学校が休校になるなどの背景があったため、「学校が再び休校になった場合に自律学習を行う自信があるか」、という質問も実施。日本では「自信がない」という回答が非常に多かった。OECDの平均指標値が0.01のところ、日本は-0.68で、これはOECD中かなり下位の34位にあたる。
ICTの整備は進んだが、探求型教育での活用頻度が低い
GIGAスクール構想によって児童生徒に「1人1台端末」に整備が進められ、「学校でのICTリソースの利用しやすさ」指標はOECD平均を上回っている。OECD平均0.00に対し、日本は0.31で5位。
しかし、高校生に情報を集める、集めた情報を記録する、分析する、報告するといった場面でデジタル・リソースを使う頻度について尋ねると、他国に比べて低く、「ICTを用いた探究型の教育の頻度」指標はOECD平均0.01を下回りる-0.82となり、世界で下位の29位となった。
自立した学習者の育成を!
日本は数学的リテラシー・読解力・科学的リテラシー、3分野全すべてにおいて世界トップレベルの成績を収めたものの、「実生活における課題について数学を使って解決する自信が低い」「自律学習を行う自信が低い」「ICTを用いた探求型の教育の頻度が低い」といった課題があることが分かった。
国立教育政策研究所は特に自律学習について、「感染症の流行・災害の発生といった非常時のみならず、変化の激しい社会を生きる子供達が普段から自律的に学んでいくことができるような経験を重ねることは重要であり、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の推進により、自ら思考し、判断・表現する機会を充実したり、児童生徒一人一人の学習進度や興味・関心等に応じて教材や学ぶ方法等を選択できるような環境を整えたりするなど、自立した学習者の育成に向けた取組を進めていく必要がある」としてる。
(取材・文/大友康子)