国際的な学習到達度に関する調査「PISA」
OECD(経済開発協力機構)が行っている国際的な学習到達度に関する調査「PISA(Programme for International Student Assessment)」。日本では国立教育政策研究所が調査を担当している。15歳を対象に読解リテラシー、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について3年ごとに実施しており、昨年12月に「PISA2022」調査結果が発表された。
喜ばしいところでは、日本は数学的リテラシーにおいてOECD加盟国(37カ国)で1位となった。今日と明日とで「PISA2022」を詳しく見ていこう。
【PISA2022】
- 日本からは、全国の高等学校、中等教育学校後期課程、高等専門学校の1年生のうち、国際的な規定に基づき抽出された183校(学科)、約6000人が参加(2022年6~8月に実施)。
- 中心分野は、数学的リテラシー。
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、2021年に予定されていた調査を2022年に延期して実施。
※表・グラフ等出典:国立教育政策研究所ホームページ内「OECD生徒の学習到達度調査2022年調査(PISA2022)のポイント 」
日本は世界トップレベルで、平均点も上昇
数学・読解・科学、3分野のOECD加盟国中における日本の順位は以下の通り。
- 数学的リテラシー(1位)
- 読解力(2位)
- 科学的リテラシー(1位)
3分野すべてにおいて日本は世界トップレベルだ。前回2018年調査から、OECDの平均得点は低下した一方、日本は3分野とも前回調査より平均得点が上昇している。
社会経済文化的水準の差、日本では影響小
PISA調査では、保護者の学歴や家庭の所有物に関する生徒質問調査の回答から「社会経済文化的背景」(ESCS)指標を作成。この値が大きいほど、社会経済文化的水準が高いとみなしている。ESCSの値の高低により生徒を4群に分け、3分野の得点との関係などを分析している。
ESCSの水準が高いほど習熟度レベルが高い生徒の割合が多く、ESCSの水準が低いほど習熟度レベルが低い生徒の割合が多いのは、日本もOECD平均も同じ。その差異について、特に調査の中心分野である数学的リテラシーについて見てみよう。
日本は国内のESCSの水準が「最下位25%」群の生徒の数学得点は494点、これは国際的にみるとかなり高い。そして、「最上位25%」群の生徒の数学得点は575点であり、両群の差は81点。これに対して、OECD平均の両群の差は93点。日本は経済的な差が数学的リテラシーにそれほど大きくは響いていないようで、それも評価してよい点だろう。
日本の数学の授業は規律ある雰囲気
調査では「数学の授業の規律ある雰囲気」指標も出されている。「授業中は騒がしくて、荒れている」「生徒は、先生の言うことを聞いていない」などの質問に対する回答から指標値を算出。日本はOECD加盟国中第1位で、日本の数学の授業は規律ある雰囲気の中で行われているようだ。
「PISA2022」について、特に日本の好成績など喜ばしい点について見てきた。明日もPISAの続き、特に調査結果から見られた日本の課題などを見ていくことにしよう。
(取材・文/大友康子)