校則以外で「意見を伝えたい」中高校生が6割超え
認定特定非営利活動法人カタリバは、2019年より生徒主体の学校づくりを目指す「みんなのルールメイキング」を全国に広げる活動を続けてきました。
今回、よりよい学校づくりに必要な機会や環境を明らかにするため、全国の中高生約3,000人を対象に大規模調査を実施し、分析や専門家の考察を含めた詳細レポートを公開したので、さっそくその結果を見ていきましょう。
全国約3,000人の中高生に意見表明の実態調査
近年、「生徒指導提要」改訂や「こども基本法」施行を背景に、子どもたちの意見を取り入れ、時代に合わせて校則を見直す動きが全国で広がっています。文部科学省が2025年に発表した調査では、9割以上の学校で校則見直しが行われ、さらにそのうちの8割以上の学校が生徒・保護者の意見を聴く機会を設けていると回答しており、生徒の声を取り入れた校則見直しは全国に広がっています。(*1)
「みんなのルールメイキング」は、現在全国600校以上へ広がり、自治体との連携も進んでいます。その中で見えてきたのは、生徒が声を届けたいテーマは校則に限らず、授業や学校行事、学級運営、部活動など多岐にわたるということです。こうした“学校生活全般での意見表明・参画”の実態や、生徒自身が望む関わり方については、これまで十分に把握されてきませんでした。
*1 ⽂部科学省(通知)校則等の⾒直し状況調査結果及び今後の取組について: https://www.mext.go.jp/content/20250702-mxt_jidou01-000043523_1.pdf
学校の多様な場面で「意見を伝えたい」ニーズがある
「クラスの決まり」「授業の進め方」「部活動」「学校行事」「施設や設備」「校則・ルール」の6つの項目において、「生徒の気持ちが聞かれたり、考えを伝えることができる機会が欲しいですか?」とたずねたところ、全ての項目において、全体の約6割〜約8割が「そう思う(とてもそう思う+ややそう思うの合計)」と回答しました。
校則・ルール見直しを含む校内のさまざまな場面において、一定の「意見を伝えたい」ニーズがあるということが明らかになりました。
意見表明のために必要なのは「安心して話せる雰囲気」
さらに、「学校のことについて、あなたの気持ちや考えを伝えたいときに、どのような支援や条件があると伝えやすいですか?」という設問に対しては、全体の約7割が「安心して話せる雰囲気・空間」、続いて約半数以上の生徒が「信頼できる友達や先生がいる」ことや「秘密が守られる」ことと回答しました。
意見表明の機会がある学校の生徒ほど
「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」意識が高い
学校における意見表明の機会の有無と、「自尊感情」「学校所属感」「政治的有効性感覚」「共生・合意形成」「主体性」の関係について見てみると、特に学校に関する意見表明の機会がある学校の生徒ほど「自分の行動で、国や社会を変えられると思う」といった政治的有効性感覚が高いという傾向が明らかになりました。
*本設問における「学校における意見表明の機会」は、校則・学校行事・施設設備の3項目での機会のことを指す。
意見表明ニーズと、不登校傾向との関係
学校の様々な場面別の意見表明ニーズと、不登校・不登校傾向との関係を見てみると、不登校(30日以上欠席)及び不登校傾向(教室外登校)の生徒たちは、ほぼ全ての項目で意見表明のニーズが低い傾向にあることが分かりました。
一方で、不登校傾向(教室外登校)の「学校行事」への意見表明ニーズのみ、平均値を上回っており他とは異なる傾向を示していることがわかりました。 このことから、不登校傾向(教室外登校)の生徒は、学校行事においては一定の意見表明ニーズがある可能性が伺えます。
生徒の声やニーズは一枚岩ではなく、その多様性に丁寧に目を向けたい
こうした調査を経て、筑波大学人間系(教育学域) 助教 古田雄一氏は、次のように述べています。
「本調査は、学校における子どもの意見表明・参加の現在地について、こうしたテーマの大規模調査が少ない中で、全国の中高生の視点から知ることができる、貴重な調査だと思います。
中高生の多くは、学校の様々なことについて意見があり、それを伝えたいと思っていました。大人側が子どもの意見がほしいテーマだけでなく、子どもの側が話したいことも含めて俎上にあげ、様々なことについて大人との対話の機会を作っていくことが大切だと思います。
分析からは、学校での意見表明・聴取の機会が、生徒の政治的有効性感覚とも関連しているという知見も得られました。生徒が学校のことに意見を言える場や環境の充実は、子どもの権利として重要であるとともに、民主主義社会の形成に参加していく主権者/市民を育むという教育的側面においても意義があるといえます。
ただし、単に意見を言える機会を設ければ良いというわけでは必ずしもなく、安心して思いや考えを話せる環境や、信頼できる友達や大人との関係性などが重要であることも、調査から浮かび上がってきました。
さらに、近年増えている不登校/不登校傾向の生徒は、他の生徒とは学校への意見表明に対する受け止め方やニーズに違いがあるという示唆も、注目すべき点です。
生徒の声やニーズは一枚岩ではなく、その多様性に丁寧に目を向けながら、取りこぼされている声がないか、どうすれば掬い上げていくことができるか、考えていくことが求められています。今回の調査結果を見ながら、先生方で、あるいは先生と生徒とで、是非対話をしてみていただけたらと思います。」
「信頼できる関係性」といった対話の土台を丁寧に築くこと
本調査を実施した、カタリバ・みんなのルールメイキング事業の古野さんは、より良い学校づくりに大切なこととして、次のようにコメントを寄せてくれました。
「今回の調査から、生徒たちの多くが校則だけでなく、学校行事や施設・設備、授業や部活動といった学校生活のあらゆる場面で、『自分たちの意見を伝えたい』と感じていることが明らかになりました。
しかし、単に意見を聴く場を形式的に設けるだけでは不十分かもしれません。
生徒が『ここでは何を言っても大丈夫』と感じられる『安心して話せる雰囲気・空間』や、先生・友人との『信頼できる関係性』といった対話の土台を丁寧に築くこと、そして不登校傾向の生徒などの『届きにくい声』がないかを見渡していくことが重要であると示唆されました。 これからの学校では、より多くの生徒が意見を伝えやすい環境づくりを進めるとともに、生徒を学校を共に創る「パートナー」として位置づけ、先生方と共に対話や協働を重ねていくこと。それが、よりよい学校づくりへと繋がっていくのではないでしょうか。」
「ルールメイキング」の機会は、学校だけでなく家庭でも
最後に、世界で学ぶ『グローバル子女教育便利帳』の読者に、古野さんは以下のメッセージを届けてくれました。
「海外という異なる文化やルールの中で過ごす経験は、子どもたちにとって『当たり前を疑い、異なる他者との対話を通じて納得解をつくる力』を養う、貴重な学びの機会であると感じます。
今回の調査では、学校運営に関する意見表明の機会がある生徒ほど、『自分の行動で国や社会を変えられる』という意識(政治的有効性感覚)が高い傾向にあることが明らかになりました。
こうした『ルールメイキング』の機会は、学校だけでなくご家庭でも作ることができます。保護者の皆様には、ぜひご家庭においても、子どもたちが抱く小さなモヤモヤや『こうしたい』という願いに耳を傾けてみてください。そして、『どうすれば皆が納得できる結論を導き出せるか?』を、ぜひ一緒に考えていただければと願っています。」
(取材・文/小野眞由子)
●筑波大学人間系(教育学域) 助教 古田雄一氏 プロフィール:
筑波大学人間系助教。博士(教育学)。大阪国際大学短期大学部専任講師、同准教授を経て、現職。認定NPO法人カタリバ「みんなのルールメイキングプロジェクト」調査研究・実施協力。主著に『現代アメリカ貧困地域の市民性教育改革』(東信堂、2021年)、『校則が変わる、生徒が変わる、学校が変わる―みんなのルールメイキングプロジェクト』(学事出版、2022年、共編著)、『世界に学ぶ主権者教育の最前線』(学事出版、2023年、共著)など。
●本調査の詳細レポートはこちら:
https://www.katariba.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/0887cc1fea965473d5eb20344ee2f5ec.pdf
●調査概要
調査期間:2025年11月20日〜11月25日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の中学生・高校生約3,000人を対象に調査
有効回答数:2,986人(スクリーニング後の中学生・高校生の合計)











