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ネット上の誹謗中傷、したことある人、された人の実態は?(後編)

一般人へ誹謗中傷をしたことがある人は5.2%

(前編)から引き続き、<誹謗中傷に関する実態調査:2023年版>を見ていこう。芸能人や有名人に対する誹謗中傷だけでなく、一般人(芸能人や有名人以外)に誹謗中傷したことがあるかどうかを質問したところ、「ある」と回答した人は5.2%で、著名人に対する誹謗中傷の数字(3.5%)よりも多かった。

集計結果を合算すると、芸能人・有名人と一般人のいずれかに誹謗中傷したことが「ある」と回答した人は7.2%にものぼった。

一般人への誹謗中傷について投稿したソーシャルメディアは、「X(旧Twitter)」が最も多く38.6%、次いで「匿名掲示板」が37.1%で、両者が抜きん出て高かった。他には、「ニュースメディアのコメント欄(Yahoo!ニュースなど)」が10.0%、「Google Mapの口コミ欄」が8.6%、「LINE」が7.1%、「Facebook」と「YouTube」と「ブログ」が4.3%、「Instagram」が2.9%、「TikTok」が1.4%、「その他」が20.0%となった。

誹謗中傷の認識はなく、正義感から加害者に…

投稿した誹謗中傷の内容について、芸能人や有名人に対する調査と同様に、内容を4種類に分類して回答(複数選択可)してもらったところ、「ある」と答えた人のうち、「容姿や性格、人格に関する悪口」が77.1%、「プライバシー情報の暴露」が17.1%、「虚偽または真偽不明情報を流す」が11.4%、「脅迫」が4.3%となった。

一般人への誹謗中傷の動機(複数選択可)は、「正当な批判・論評だと思ったから(誹謗中傷と認識していなかった)」が50%でもっとも多く、次いで「その人物の間違いを指摘しようとする正義感から」が41.4%となり、正義感から意図せず加害者になっている人が多い実態が明らかになった。

「匿名で中傷するようなコメントをしてしまった」

一般人に対する誹謗中傷では、職場の人間関係や家族・知人との対人トラブルについて投稿していることが多いようだ。具体的には、「私も書かれたから同じことをした。書かれた人の気持ちも考えてみたらいいと思ったから」(40代・女性)、「お客様の声で、匿名で中傷するようなコメントをしてしまった」(30代・女性)、「職場の握りつぶされた不祥事を匿名掲示板に投稿した」(50代・男性)、「知人女性のダブル不倫相手の会社の口コミにコメントしました」(50代・男性)などの声が寄せられた。

34.7%が誹謗中傷の「被害経験」あり

一方、回答者全体に対してこれまでに誹謗中傷を受けたことがあるかを尋ねたところ、「ある」と答えた人は34.7%にのぼった。誹謗中傷された内容は、「容姿や性格、人格に関する悪口」が56.6%、「虚偽または真偽不明情報を流す」が53.2%、「プライバシー情報の暴露」が35.1%、「脅迫」が24.0%、「その他」が11.7%と続き、「家庭環境について悪口を書き込まれた」、「取引先への一斉告発メール」といった回答もあった。

誹謗中傷への厳罰化、67.3%が「必要」

2022年に誹謗中傷被害対策として侮辱罪が厳罰化されたが、さらなる厳罰化が必要かを尋ねたところ、「必要」が67.3%、「不要」が9.2%、「わからない」が23.5%となった。また、厳罰化については、「言論の自由が奪われかねないと危惧している」(男性・40代)という声もあり、「匿名での投稿はなしにすべきだと思います」(男性・40代)と実名制を提案する声もあった。

面と向かってその言葉を言えるのか、を判断基準に

今回の調査結果について、清水陽平弁護士(法律事務所アルシエン)のコメント。

「アンケートでは、誹謗中傷投稿をした理由として『正当な批判・論評だと思ったから』『その人物が事件、不祥事を起こしたから』を挙げる人が多い結果となっています。芸能人や有名人は論評を受ける立場にあり、一定程度の限度を超えないと『違法な中傷である』と判断されにくい傾向自体はあるといえます。

もっとも、デマを拡散するような行為や、過度にプライバシーを暴くような行為、執拗に中傷するような行為などは、権利侵害となる可能性は十分あり、民事上の責任を追及されたり、場合によっては刑事責任の追及を受ける場合もあります。

最近は、芸能人などでも積極的に誹謗中傷と戦っている方も目にするようになりました。芸能人、著名人だから何を言ってもよいというのは全く間違いです。

一方で、何が違法な中傷か分からないと言う方は多く、このアンケートの回答でも同趣旨の指摘がされています。「違法でなければ言いたい」という考えがあるのでしょうが、言葉の意味は流動的であり、前後の文脈や言い方(書き方)によってもその印象は大きく変わり、何が違法かという客観的で明確な線引きをすることは不可能です。

そこで、主観的な基準として、面と向かって、一対一でその人にその言葉を言えるか、という観点で考えるとよいのではないかと思います。言えないということであれば、それによって相手が傷つくということが分かっているということでしょう。そういった言動は権利侵害に当たる可能性があると考えておくとよいといえます」

誹謗中傷をめぐるニュースを親子で考えるきっかけに

ネット上の誹謗中傷は、子どもも加害者・被害者になりうる。今回の調査を実施した弁護士ドットコム株式会社に子どもと保護者に向けてのアドバイスを尋ねたところ、弁護士ドットコム・ニュース編集部から、次のようなコメントが寄せられた。

「ネットの誹謗中傷は、直接、相手と向き合って伝えるわけではないので、誰でも手軽にできてしまいます。本当にその言葉を相手に投げかけていいのか、投稿ボタンを押す前に、一呼吸おいて考えてみましょう。誹謗中傷をめぐっては様々なニュースも流れているので、親子で考えるきっかけにするのもよいでしょう」