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海外からの保活体験記 ①|タイ・バンコクからの保活

企業の海外駐在員として若い世代の活躍が目立っている。未就学児を帯同する駐在員家族も増えており、また現地での出産も珍しいものではなくなった。こうした家族が帰国にともない直面する問題の1つに、保育園探し、いわゆる「保活」がある。

今回から連載で、そんな海外帯同家庭の保活体験記を紹介したい。これから帰国と保活を予定している読者の皆さんはぜひ参考にしてほしい。

海外からの保活で直面した厳しい現実

連載第1回は、夫の海外赴任に帯同し、タイ・バンコクで長男の出産を経験したR・Uさんの体験記を紹介しよう。2016年から4年間の帯同を予定していたが、夫の任期変更により2018年3月に突然の帰国が決定した。バンコクでは専業主婦として生活していたが、渡航前には管理職としてフルタイムでキャリアを築いてきたR・Uさんには、帰国後もしっかり日本で就業したいという意向があった。

「私としては子どもが3歳になる頃までバンコクで暮らすつもりでいたので、予定外の帰国決定には戸惑いました。帰任先は東京都でしたが、待機児童の数が膨大な上、区ごとに制度が異なっています。しかも居住予定の区は、『転入の手続きを済ませなければ認可園の申込みができない』というルールになっていました。正直言ってお手上げ状態でした」

本帰国後は、新しい生活環境に慣れることから始めたという。
「息子が新しい生活に慣れるように、どんな園がどこにあるのかを調べながら、近所の公園をたくさん歩いて回りました。これが保活のスタートです。就職は就活期間を含め預け先が決まらない限り難しいため、保活が優先事項でした」

しかし保活では制度上の不利が痛手になったという。指数による保育ニーズの数値化には帰国家庭の状況が反映されにくく、待機児童となる確立が高いのだ。

「私の場合、帰国が決まったタイミングで、すでに認可保育園の申込み期限は過ぎていました。帯同妻の立場では現地で専業主婦にならざるを得ないという事情がありましたが、“ライバル”は復職が決まっている共働きの方ばかり。みな0歳児から保活を行っていたようでした。私はといえば就職活動中の身で、情報収集や保活開始のタイミングで遅れをとるばかりか、指数の面でも太刀打ちできません。そのため認可外の保育園を探したのですが、どこも100人から200人待ちという状況でした」

インター/バイリンガルのプリスクールという選択肢

「帰国当初はなかなか保育園が決まらず、子どもに十分な環境を与えられないという焦りから、つらい思いもずいぶんしました。しかし、その間も子どもはどんどん成長していきます。社会性も身につけていく年齢ですから、いつまでも家族だけの空間で育児を続けることに不安を感じました」とR・Uさん。そこで、インターナショナルプリスクール、バイリンガルプリスクールへの入園を検討することにした。

「バンコクというダイバーシティに富んだ都市で生まれ育ち、日本語、英語、タイ語という3ヵ国語を覚え始めていた息子の姿を見て、無理して日本語環境の保育園に入園させる必要はないかもしれないと頭を切り替えました。とはいえ外国語だけの環境では、これからの日本の生活で子どもが不自由な思いをすることになるかもしれない。そこで、日本語の先生と英語の先生が両方いて、バランスよく言語を身につけられるスクールを探しました。私もそれまで知らなかったのですが、実は都内にはこうしたスクールが何校かあるのです」

新たな気付きを得て、受け入れ先の選択肢はぐっと広がった。ほどなくR・Uさんは、都内のバイリンガルプリスクールへと長男を入園させることができた。日本語を話す子どもたちに加え、様々な国籍の子どもたちが通う環境のおかげで、海外で培ったグローバルな感性を伸ばすことにもつながったという。

バイリンガルプリスクールに在籍したのは約半年。その後、R・Uさんは就職活動に成功。指数の加算もあったことで、認可園への入園許可を受け取った。

「自宅から通える範囲のプリスクールはどこも延長保育時間が合わず、残念ながら転園となりました。半年間という期間でしたが、帰国して最初にバイリンガルのプリスクールに通ったことは、日本生活の準備期間として子どもにとって大きな意義があったと感じています」

ハンデではなく、メリットと考えよう

R・Uさんに、これから保活を行う海外在住のご家族へのアドバイスを伺った。

「帰国する地域によって差もあるでしょうが、基本的に待機児童の多い地域での保活、しかもそれが海外からとなると困難を極めます。帰国前後には大変な思いをする人が多いと思いますが、視点を変えてみることも一つの手。グローバルな背景を持つ帰国子女には、言語にとらわれずに受け入れ先を選べるというメリットもあるのです。また、帰任先の住所が決まっていない場合は、まず待機児童の状況を調べてから、入りやすい地域で住まいを探すという作戦もあります。あきらめなければ、きっと道はひらけます」

 

R・Uさんお話を伺った方

R・Uさん
滞在国:タイ
滞在期間:2016年~2018年