日本への帰国を前提とした海外での暮らしの中で、子どもの教育に疑問や悩みを持っている保護者も少なくないようです。そこで、海外に住む保護者からの様々な質問に、帰国子女対象の英語塾「帰国子女アカデミー」の英語ネイティブの先生が答えてくれました。
Q. ホリスティック教育って何ですか?
A. 子どものトータルな成長に着目する教育のことです。
「ホリスティック教育」についてご説明する前に、まずは「Holistic (ホリスティック:全体、関連、つながり~)」という単語についてみていきましょう。
この単語が使われ始めたのは、医学の世界。「ホリスティック医学」とは、“病気の症状”だけでなく、運動や食生活改善による“体力増進”や、病気の予防を考慮しながら“精神面の健康”を図ることにも着目。人間のからだ全体を1つのまとまりとして捉え、治療を行うものです。
これを「教育」に置き換えたものが「ホリスティック教育」です。つまり、「数学の成績」など細かいところだけではなく、子どもの全体的な成長に着目する教育です。この教育手法は、近年世界で注目される教育メソッドの生みの親でもある数々の教育者たち(※)の哲学に基づいています。
彼らは、教育でゴールとすべきは「学ぶことに喜びを感じ、自然を愛し、自らが暮らす社会に対して繋がりと責任を感じ、己をよく理解して自分に自信が持てる子どもを育てること」だと説いています。
※ラルフ・ウォルドー・エマーソン、ヘンリー・デイビッド・ソロー、マリア・モンテッソーリ、ジョーセフ・シュタイナー、ジョン・ドゥイー
どんな精神で教育が行われるか
ホリスティック教育では、そうした子どもを育てるべく、次のようなことをベースにした教育が行われます。
- 一人ではなく、 ほかの年齢の生徒たちと協力し合い、一つの課題に取り組み、学ぶ。
- 教師は権力者ではなく、あくまで手助けをする人。「教える」のではなく、子どもたちが自分たちで色々なことを発見できるようにサポートする。
- 教師は、生徒一人ひとりによって学ぶスピードが異なることを理解し、それに合わせて授業を進めるスピードを調節する。
- 子どもが自分に自信を持つことはとても重要なので、罰を与えることや生徒同士を比較すること、ミスばかりに注目することは避ける。
- 授業科目は調和させ、混合させる(学んでいる事柄の理解を深めるため、1つ事柄をさまざまな科目によって色々な角度から学んでいく)。
- 教師は子どもたちには一人ひとりに違う能力があることを理解する。心理学者のハワード・ガードナー氏が分類した下記の8つの才能を育てることを目標とする。
- 言語学:読み書き、話すことが得意
- 論理・数学:記号、数字、様式が得意
- 視覚・空間:ビジュアル感覚が優れている
- 身体・運動感覚:整合、触感、体力に自信がある
- 音楽・リズム:タイミング、メロディー、ハーモニーが得意
- 対人:他者とのコミュニケーションが得意
- 内向:自分のことをよく理解している
- 自然主義:自然をよく理解している
お話を伺った方
チャールズ ・エム・ カヌーセン Charles M. Knudsen氏
帰国生向け英語塾『帰国子女アカデミー』校長
同塾創設者。国内有数の中高一貫校で英語アドバンストプログラムを立ち上げるなど、日本での帰国生教育は15年に渡る。英語学習テキスト『Stranger than Fiction』(南雲堂)などテキストや小説の執筆も。
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