慣れない海外での子育ては、不安や心配も多いもの。良い姿勢は見た目だけでなく、勉強やスポーツにも影響があるようです。これを機に大人も一緒に取り組めば、一石二鳥です。
子どものやる気が上向く!スポーツが上手くなる!
Q1. 姿勢の良し悪しは子どもにどのような影響がありますか?
猫背や反り腰、左右に偏った姿勢は、呼吸機能の低下、首や腰に痛み、けがをしやすいなどの傾向があり、集中力の低下も顕著です。
じつは姿勢は、切り替えのスイッチ。「さあ何かするぞ」というときに、正しい姿勢を取れないと、心身にスイッチが入らないのです。休んでいるときも勉強を始めるときも、だらっとした姿勢のままでは、スイッチの切り替えになりませんよね。 そのため、勉強を始めるときに姿勢が悪いと、「勉強するぞ!」というスイッチが入りません。逆に、姿勢が良い子どもは集中力が高い、集中力が続くといった傾向にあります。
姿勢が良くなると、スポーツパフォーマンスが上がるという特徴もあります。姿勢が悪いと筋出力(100%の筋力を出せる力)が減ってしまい、走る、投げる、蹴るなどに影響します。姿勢が良いと筋出力が増え、効率よく力を伝えられるためパフォーマンスが上がるのです。効率が良いということは、過剰な力が必要なくなり、筋疲労の軽減にもつながります。
ほかにも姿勢の良い子どもは、「自分はできそう」「やっていけそう」といった自己効力感が高いという研究結果も出ています。人が自信のないときに肩を丸めた姿勢になるように、心は姿勢に大きく影響します。反対に姿勢を正すと心にポジティブな影響を与えられるのです。
Q2. 姿勢を改善するにはどうすればいいですか?
今回はイスの座り方を紹介します。イスに座り、お尻の下に手を入れるとゴリゴリするところ(座骨)がありますよね。前傾していくと、ゴリゴリを感じなくなる。後傾すると、またゴリゴリを感じない。背中を真ん中に戻して、ゴリゴリが一番強いところで手をお尻から抜く。この状態が「姿勢の100点」です。これは骨盤がきちんと立っている状態なのです。このとき上半身はリラックスすること。骨盤さえ立てば、上半身は力を抜いても姿勢は安定します。逆に、骨盤が寝ていて胸だけ張っても疲れるだけ。これは姿勢を良くしていることにはなりません。
この100点の姿勢を、①勉強を始めるときの最初の1分、②食事を始めるときの最初の1分、この二つのタイミングでつくることをおすすめします。姿勢改善は、100点の姿勢を持続することではなく、一日のなかで何回か100点をつくることで、次第に良い姿勢が身につきます。②は親子で実践すれば、親も姿勢が良くなり一石二鳥です。
Q3. 親ができるサポートはありますか?
姿勢の0点を取らないように環境を整えてあげること、一番は机とイスの高さです。イスは深く座り、100点の姿勢をつくったときに膝が90度になること。足の裏が付かなければ足台を用意、背もたれと背中が空くようならクッションやランバーサポート(背骨をS字に保つ機能製品)を用意するといいでしょう。机は、ひじが無理なくリラックスして机にのる高さがベストです。
Q4. 海外生活で気をつける点などありますか?
良い姿勢には靴も大きく影響します。注意したいのは靴のサイズ表記。日本のセンチメートルにした場合のサイズ換算表は、メーカーにより差があります。必ず履いて確認してください。靴選びのポイントは、かかとがしっかりしていること。適正サイズは、中敷きをかかとに合わせた状態で、前が0.5~1センチ(あるいはその子どもの指1本分、親指以外)空いているのがベスト。0.5以下は小さすぎ、1センチ以上は大きすぎです。
お話を伺った方
武田純一(たけだ・じゅんいち)先生
理学療法士。横浜権太坂中央クリニック所属。「Healthcare Support NRehabilitation Labo」主宰。「親子姿勢教室」をはじめ各種教室・講座を多数実施。
編集/本誌編集部、小野眞由子、イラスト/小林晃