武道教育研究家が「心を護る技」を公開

10月10日は「世界メンタルヘルスデー」ということをご存じですか?株式会社コンコルド21は、この世界メンタルヘルスデーに合わせて、40年以上にわたり青少年支援の現場で実践を重ねてきた武道教育研究家・風間健さん(気練・武心道 創始者)の対談記事をnoteで公開しました。

▼対談記事:『心を鍛える言葉──武道教育研究家・風間健が伝える「生き抜く力」』
掲載先:https://note.com/kiren_bushindo/n/n5f250b4facc6?sub_rt=share_pw

武道は「人を倒す技術」ではなく、「心を整え・護るための道」として捉え直し、〈折れる前に休む〉〈“してあげる”より“そばにいる”〉など日常に落とし込める実践を紹介するなど、学校・家庭・職場で今日から試せる、メンタルヘルスとレジリエンスの具体的なヒントが提示されています。
今回は、その中から〝心にとどめておきたい言葉&すぐに実践できるヒント〟を抜粋してご紹介します。

▼プロフィール紹介
・風間 健(かざま・けん)
武道教育研究家/気練・武心道創始者。40年以上にわたり児童自立支援の現場で青少年と向き合う。著書『ブレない・折れない・曲がらない「心の軸」のつくりかた』ほか。全国で講演・ワークショップを実施。

武道は「人を倒す技術」ではなく「心を整える道」

武道の本義は「争いを止める」ことだと風間氏は言います。本当の強さとは外への攻撃性ではなく、自分の中の怒り・恐れ・弱さと向き合い、「振り回されない力」であると。技は心の護身術であり、心を守るために磨くものだと風間氏は語ります。

支え方の再定義──「してあげる」より「そばにいる」

風間氏は40年以上、児童自立支援施設「誠明学園」に通い続けました。そこにいるのは家庭や社会に居場所を失った子どもたちです。児童自立支援の現場で実感したのは、「大事なのは、何かを“してあげる”ことではなく、ただ“そばにいる”こと」だと言います。言葉や行動ではなく、「存在することそのもの」が支えになるという考えは、支える側にも大切な気づきを与えるのではないでしょうか。

折れる前に「妥協する勇気」──立ち止まるという選択 

「頑張りすぎなくていい。何もしなくてもいい。折れる前に“立ち止まる勇気”こそが命を守る力になる」
風間氏は現場での経験を踏まえ、心を守るためには“あえて止まる”選択も必要だと語ります。妥協は弱さではなく知恵であり、心が折れないための生き延びる技として位置付け直します。

社会全体で「心を守る空気」を育てる

「失敗を許し、弱さを出してもいい社会」それこそが心を守る社会の空気だと風間氏は言います。本記事は教育関係者、保護者、福祉に関わる方々だけでなく、「自分を守る術」を探すすべての人のヒントになる内容です。学校・家庭・職場の小さなルール変更、例えば、叱責より対話、即アドバイスより共感、休む権利の明文化……など、小さな一歩から始めることが大切です。

強さとは、折れる前に休める力

対談記事の公開にあたり、「子どもから大人まで、心の健康を保つために最も大切にすべきこととはなんでしょうか?」と質問したところ、風間氏は以下のように指南してくれました。

心の健康を保つためには、「自分」と「他者」との関係の中で、それぞれ大切にすべきことがあります。まず自分との関係では、いちばん大切なのは無理を重ねないことです。強さとは、折れるまで頑張ることではなく、折れる前に休める力だと考えています。

次に他者との関係では、言葉で相手を変えようとしたり助言を急いだりする前に、“そばにいる”時間をつくることです。相手の呼吸や表情に合わせて静かに寄り添う、黙って隣に座る——こうした存在そのものが、心の土台になります。さらに、失敗を学びに変える視点も欠かせません。完璧を目指すより、転んだら立ち上がる稽古を重ねること。小さな実践で十分です。たとえば「一回休憩」の合図を決める/一日の終わりに“できたことを三つ”数える/深呼吸を三回そろえる——この反復が、年齢に関係なく、心を整える力になります。

家庭は居場所、目の前のあなたを尊重する

最後に、世界で学ぶ『グローバル子女教育便利帳』の読者に、風間氏は以下のメッセージを届けてくれました。

家庭は「成果を出す場所」ではなく、まず居場所であってほしいと考えています。点数や結果の前に、”いま目の前のあなたを尊重”するということを行える家族関係を築いてほしいと思います。人は、安心が先、挑戦はそのあとで育ちます。
関係の質は、むずかしいことをしなくても上がります。名前を呼ぶ、目を見る、相手の言葉を一度そのまま返す。この3つをていねいに行うだけで、心の温度が変わります。
家庭は毎日の道場です。無理のない心の強さを育てていきましょう。

(取材・文/小野眞由子)