高等部を卒業する際の進路選択と注意点
「海外で受けた教育を継続できる」「英語力をもっと伸ばせる」等々、海外から日本に帰国後、我が子がインターナショナルスクールに通うメリットは数多くあります。でも日本でインターナショナルスクールに通うということは、教育制度上は、日本で外国人学校に通うのと同じこと。卒業後に向けて注意すべき点はいろいろとあります。
今特集では、そうした注意点を日本のインターナショナルスクール事情に詳しい国際教育評論家の村田学氏にヒアリング。また、日本にあるインターナショナルスクール6校に進学サポートや実際の進路について伺いました。
最終回となる今回は、日本でインターナショナルスクールの高等部を卒業した後によくある進路を3通り紹介しつつ、その進路に進むメリットと注意点をお伝えします。
高等部卒業後によくある進路3つ
- 英語で授業を行う日本の大学
- 日本語で授業を行う日本の大学
- 海外の大学
高等部卒業後の主な進学先のメリットと注意点
英語で授業を行う日本の大学
メリット
学習言語がインターナショナルスクールと同じで、学生構成も似ている場合が多いので、安心できる環境になりやすい。また、日本国内の大学は一定の高いレベルで学べて、授業料が安いのも特徴。「私立大学でも年間110 ~ 160万円ほど。海外の600万円などと比べると大きな差があります。その分を貯金しておいて、子どもが望んだときの留学資金にするのもありでしょう。実際、在学中に留学するインターナショナルスクール卒業生は多いです」(村田氏)。
注意点
インターナショナルスクールで学んできた子どもの強みは探求力と実践力。「学びかたがインターナショナルスクールとは違うので、その2つの力が若干弱くなるケースはあると聞きます」(村田氏)。
日本語で授業を行う日本の大学
メリット
「医師や弁護士、公認会計士、教師など、国家試験が日本語で実施される職業に就きたい場合は、日本語で授業を行う日本の大学で学ぶのが鉄則です。インターナショナルスクール卒業生は、日本の高校の卒業生に比べると日本語力が弱い場合が多いため、最初は苦労するかもしれません。でも、日本語力の土台はあるはずです。慣れたら、あとは勢いを持って勉強を進められるでしょう」(村田氏)。
注意点
知識暗記型の授業が中心の大学の場合、魅力を感じられないインターナショナルスクール卒業生もいるという。「こうした場合、海外の大学や、知識暗記型の授業が中心でない日本の大学に再度進学するケースもあります」(村田氏)。
海外の大学
メリット
「努力次第で世界大学ランキング上位の大学に入って学ぶことも、日本にはない学部・学科を選ぶこともできます。また、英語でリベラルアーツを学べる大学も日本にはまだ少ないですが、海外には数多くあります」(村田氏)。
注意点
昨今の円安が続けば、それが大きな負担に。また、「住む場所も安全な地域は家賃が高く、学費+家賃で予想以上の出費になります。人気のアメリカは近年、学費がより高騰。金銭面と安全面を考えて、カナダやオーストラリアを選ぶケースが増加。専攻を絞り込めない場合は、学費がかからないドイツやノルウェーなどの大学を選ぶ手も」(村田氏)。
実際の進路を見てみよう
Aoba-Japan International Schoolの例
高等部卒業後の進学実績(2013~2022年期生)
【海外の大学】イギリス(Imperial College London、Univ. College Londonほか)、アメリカ(Univ. ofCalifornia, Berkeley、The Univ. of Chicagoほか)、オーストラリア(The Univ. of Melbourneほ
か)、カナダ(Univ. of British Columbiaほか)、オランダ(Univ. of Amsterdamほか)など。
【日本の大学】東北大、東京大、国際基督教大、慶應義塾大、早稲田大、東京医科歯科大など。
在籍可能学年はK2(1歳半)からG12(高等部)までで、幼小中高一貫校のため、初等部から中等部、中等部から高等部に進む生徒が共に80%以上。生徒は国内外の大学の理系・文系・アート系の様々な学部へ。
Nagoya International Schoolの例
高等部卒業後の進学実績( 円グラフは2022年期生、進学先学校名は2022年現在)
【海外の大学】アメリカ(Boston Univ.、Univ. of California, Los Angeles、Purdue Univ.ほか)、
イギリス(Warwick Univ. and Imperial Collegeほか)、オランダ(Univ. of Amsterdamほか)など。
【日本の大学】早稲田大、岡山大、会津大、立命館大、上智大、国際基督教大、法政大など。
在籍可能学年はプリスクール(3歳)からG12(高等部)までで、幼小中高一貫校のため、小学部から中等部、中等部から高等部に進む生徒が共に90%以上。 インター卒業生を受け入れる日本の大学・学部の増加に加え、コロナの影響もあり、近年は英語で授業を行う日本の大学への進学者が増加傾向に。
こんなときはどうする?Q&A
Q. 進路に迷いが…。
日本のインターでは、生徒の進路をどうサポートしているの? ―高等部編―
A. 考える機会の提供から出願まで。幅広く、丁寧に。
今回お話を伺った、日本にあるインターナショナルスクールによる高等部でのサポートは次の通り。
「経験豊かなアドバイザーが在籍しています。また、大学フェアを毎年実施し、世界中の大学や専門学校の代表者がそれぞれの魅力を紹介。本校の高等部生徒が様々な選択肢を知る機会としています。生徒と大学のマッチングリサーチを行うプログラムなども採用しています」(Aoba)。
「日本の大学進学者に向けては、入試の一部となる文章・面接指導を通して『受験する予定の大学・学部・学科で本当に4年間学びたいか』を考える機会を持ち、その分野の学問に進む意味や意義を将来像から何度も深めていきます。海外大学進学者には、奨学金の獲得などもサポート」(KIU ACADEMY)
「10〜12年生を対象にキャリアガイダンスの授業を展開しています。また、IB-DPのコース選択、大学の選択やエッセイの書き方、出願手続きなど、学年・時期に合わせて、保護者も対象とした説明会を、年間を通じて何度も行っています。先日は4校の大学入試担当者と本校の卒業生を招き、カレッジフェアを開催。好評でした」(Nagoya)
Q. 大学進学時の奨学金。日本のインターではどんなサポートが?
A. 過去の実績に基づいた情報を提供してもらえる。
奨学金について在籍しているインターナショナルスクールに尋ねると、それまでの過去の実績に基づいた情報を提供してもらえる場合が多い。また多くのインターナショナルスクールでは、推薦状の用意など、必要に応じたサポートも受けられる。
「海外の大学であれば、IBの成績優秀者に授与される奨学金などもあります。情報収集をなるべくこまめに行って、我が子に合った申請枠を見つけられるといいですね」(村田氏)。
お話を伺った方
国際教育評論家 村田学(むらた・まなぶ)氏
国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了した国際教育評論家で、プリスクール元経営者、幼小中インターナショナルスクールの共同オーナー。ウェブサイト「インターナショナルスクールタイムズ」(https://istimes.net/)の編集長。アメリカで生まれ、6歳で帰国して英語力を丸ごと失った、という苦い経験を現職に活かしている。
協力校(五十音順)/Aoba-Japan International School、Osaka YMCA International School、KIU ACADEMY-KYOTO INTERNATIONAL UNIVERSITY ACADEMY、Tokyo YMCA International School、Nagoya International School(学校法人名古屋国際学園)、Nishimachi International School
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