働き始めてもいないうちから退職意向
新年度が始まって約1カ月、親としても我が子が新しい環境に適応できるかどうか気になる時期だろう。なかでも劇的に環境が変わったのは、学生から新社会人となった新入社員たち。実は彼らが社会に出る前の3月、卒業を控えた大学生の約4割は内定しただけでまだ働き始めてもいないうちから、いずれ「会社を辞める」つもりでいた、という。
そんな驚きの調査結果が出たのは、人事のための総合メディアサイト「@人事」を運営する株式会社イーディアス(東京都千代田区)が3月7~14日にかけて2019年3月卒業予定の大学生男女487名を対象に行った「内定先企業の退職予定時期」に関する調査。
「内定先企業を辞めよう」と想定している時期について尋ねたところ、最も多かった回答は「辞めることを検討していない」(60.8%)だが、裏を返せば、約4割は会社を辞めるつもりがあるということ。それでも、「辞めようと思うが、具体的な時期は分からない」(14.8%)と答えた学生は次第に会社に慣れてそのまま居つくことになるかもしれないが、「半年~1年未満」「1年~3年未満」など具体的な退職時期を想定している学生も計24.4%にも上った。
「内定企業を辞めたい」と思う理由を尋ねたところ、「キャリアアップしたいから」(23.6%)、「理想とのギャップ」(15.7%)、「残業、休日出勤が多い」(14.7%)など。
「キャリアアップしたいから」と回答した理由としては、「元々第一志望の会社ではない」「いろいろ挑戦したいから」などが挙げられた。近年では転職することが当たり前だという認識が広がっており、新卒として入社する企業に対して「あくまで1社目」という意識が強いのかもしれない。
また、「理想とのギャップ」と回答した人からは、「内定者研修で、働いている人が会社を悪く言うから」「研修を受け、思っていた仕事とかけ離れていたから」といった声が挙がった。内定先企業の社員や実情に触れ、ギャップを感じたようだ。
親は安定を望むが……
辞めたいと思う理由のフリーコメントのなかには、「そもそも働きたくないという気持ちが根底にある」といった困った意見や、「内定承諾後にいろいろな詳細を知り、ブラックだということが分かった」などと、近年問題となっているブラック企業の存在も垣間見えた。
親の世代からすると、入社する前からもう辞めるつもりでいるとは隔世の感を禁じ得ないであろう。「終身雇用制度は崩壊した」といわれて久しく、「定年まで勤めあげなさい」と子どもに諭すのはナンセンスだとしても、親としては安定した形で仕事を続けてくれるのが安心だろう。せめて辞めようと思う理由が、「キャリアアップしたいから」といった、前向きな理由であることを望むばかりだ。
(取材・文/大友康子)