海外滞在中にどれだけの言語力を身につけさせられるか。帰国後、どう保持&伸長させてあげられるか……。気になる「子どもの言語力」について、4名のママたちがお話しくださいました。今回は2回シリーズの前編です。 ※座談会はコロナ禍以前に開催
【帰国子女の母親・座談会メンバー紹介】
Aさん | ブラジルに約3年→コロンビアに約5年→帰国 |
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長男(高1)日本人学校(ブラジル)→インターナショナルスクール(コロンビア)→帰国後、公立中3年に編入学→私立高に入学 |
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Bさん | アメリカに約2年半→ドイツに約3年→帰国 |
長女(社会人3年目)現地校(アメリカ)→インターナショナルスクール(ドイツ)→帰国後、私立高2年に編入学→私立大→社会人長男(社会人1年目)現地校(アメリカ)→インターナショナルスクール(ドイツ)→帰国後、公立中3年に編入学→私立高→私立大→社会人 |
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Cさん | アメリカに約5年→ドイツに約3年→帰国 |
長女(社会人1年目)現地校(アメリカ)→帰国後、公立小5年に編入学→公立中→私立高→私立大→社会人長男(大学2年)現地校(アメリカ)→日本人学校(ドイツ)→帰国後、公立高に入学→私立大 |
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Dさん | 上海に約3年→香港に約6年→帰国 |
長女(大学2年)現地園(上海)→日本人学校(香港)→帰国後、私立中に入学→私立高→私立大次女(高3)現地園(上海)→インターナショナルスクール(香港)→旧イギリス現地校(香港)→帰国後、公立小5年に編入学→私立中→私立高 |
外国語力は、学校種別と保護者の考え方で変わる
Aさん
子どもの外国語力って、同じ国に同じ期間住んでも、通う学校種別(現地校・日本人学校・インターナショナルスクール)や、各ご家庭の考え方によって大きく変わりますよね。
Dさん
我が家は姉妹で学校の種別が違いました。
上海から香港に移動した際に、インター幼稚園を卒園したばかりの長女は日本人学校へ編入。次女も日系の幼稚園に入園させるつもりだったんですがたまたま空きがなく。ウェイティング中にインター幼稚園のサマースクールに参加させたら気に入って、そのまま入園させたんです。ですから英語力に関しては断然次女ができます。
Bさん
上のお子さんを日本人学校に行かせたのはどんな理由だったんですか?
Dさん
実は長女も最初の上海ではインター幼稚園に通っていたんですが、英語は話せないし、すでにコミュニティが出来上がっていて、なかなか自分を出せずにストレスで脱毛症になってしまったんです……。
そんなこともあって、長女の場合は小学校をインターナショナルスクールにする勇気はありませんでした。
Cさん
学校の種別が選べる地域だと、子どもの性格やタイミングによってどちらを選ぶべきか悩みますよね。
うちも2度目の赴任先のドイツでは息子をインターナショナルスクールに行かせることも考えましたが、帯同は中学3年間と決めていたので日本人学校にしたんです。
無理やりインターナショナルスクールに行かせても学年の途中からになってしまうし、しかも一気に難しくなると言われる小4以降の勉強に英語でついていくことなりましたから。それには相当な覚悟が必要ですし、息子が辛い思いをするのではないかと思ったんです。
Dさん
本当に迷いますよね。とはいえ、日本人学校に行った長女は帰国後「妹を見ているとインターナショナルスクールも楽しそうだったな」と言ったんです。それを聞き、自分が昔通ったインター幼稚園での日々が「嫌な思い出」ではなく、英語環境・海外生活の「良い経験」と受け止めてくれていたのだと思い、ほっとしました。
Aさん
うちはブラジルでは日本人学校だったので、次のコロンビアでもそのまま日本人学校に通わすつもりでいたのですが、事前に調べたら男子がクラスで2名と非常に少なくて…。
かなり悩みましたが、息子が大好きな野球ができる環境を与えてあげたくて、男子も多いインターナショナルスクールに入れてみました。もちろん、自分から「行きたい!」と言うようにうまく仕向けて(笑)。
言語については、7、8割が現地のコロンビア人のお子さんでしたから、授業は英語、日常会話はスペイン語でした。
Bさん
英語だけじゃなくてスペイン語も? すごい!
Aさん
でも…一度に2カ国の外国語の習得は厳しく、結局どちらも中途半端になってしまった感があります。頑張って勉強はしていましたけどね。
帰国後の外国語力保持の方策・心構えは?
Cさん
アメリカから日本に帰ってきたとき、小5だった上の子の英語力をキープさせてあげたいと思ったんです。でも、近所にあった帰国子女向けの英語教室の同年齢クラスでは簡単すぎたし、国内生向けの英語教室では趣旨が違うし、合うクラスがなくて……。
Dさん
それ分かります。帰国子女向けのちょうどいい難易度の教室って、本当に少ないですよね。
Cさん
そうなんです、少ないですよね。それで頑張って探して、帰国子女向けのちょうどいい英語教室をやっと見つけたんですが、自宅から電車で1時間ぐらいかかる都心にあって…。通うのがとにかく大変ですし、そもそも本人が「つまらない」とやる気をなくしたので辞めてしまったんですよね。その後は、次第に〝英語が得意な普通の中学生”になっていきました。
Bさん
下のお子さんも英語教室に通われたんですか?
Cさん
はい、下の子も小1から小4まで、本人は気が進まないようでしたが家の近くの帰国子女向け英語教室に通わせました。成果のほどは「……」。
どこのご家庭も帰国後に「英語力を保持したい」というお気持ちはあると思うのですが、教室に通うなら、通いやすい場所かどうか、本人のやる気が続くかなども重要ですね。
Dさん
我が家は「日本人として生きていくのだから、日本にいる今、きちんと日本の勉強をしましょう」という方針で、あまり英語に固執しませんでした。
インターナショナルスクールってよく自分の意見を求められますが、下の子は香港のインターナショナルスクールで「日本人としてはどう思う?」と聞かれたり、「日本のことを教えて」と言われ、「日本で生活したことがないので分からない……」と、小さいながら悔しく思っていたらしいんです。
そんなこともあり、帰国後しばらくは「英語力保持」というよりは、日本の学校の勉強をきちんとして、茶道を習ったり日本の行事に参加したりして日本の生活を楽しむようにさせました。
その間、私は英語のことには触れなかったのだけれど、帰国して半年ほど経ったら余裕ができてきたのか「ちょっと英語が話したいな」と本人が言いだして。一緒に教室を探し、勉強を再開しました。
帰国後、「外国語力の保持」と「日本の勉強」の比重をどうするかは本当に各ご家庭の考え方次第ですが、帰国したばかりの時は環境も変わってストレスもあるでしょうから無理強いしないほうがいいのかもしれませんね。
Aさん
帰国後の外国語力の保持は、本人の意志がとにかく大切ですよね。
息子が今通う高校には英語圏出身の英語が堪能な帰国生が多く、また先日アメリカの高校生を我が家にホームステイさせた際に「英語を流暢に話せない」と自覚したらしく、1カ月程前から英語でリベラルアーツを教えてくれる教室に通い始めました。
Cさん
スペイン語も保持できていますか?
Aさん
残念ながら、日本で使う機会は皆無ですから忘れかけているようです。スペイン語も学び続けられる学校を選べばよかったかもしれません…。
Bさん
うちの娘は高2で帰国したので、英語に力を入れている高校に編入し、学校の勉強を通して保持していきました。英検1級を取ったのも帰国後です。
A・Cさん
頑張りましたね!
Bさん
はい、社会人になった今でも洋書を読んだり字幕付きで映画を観たり、英語にふれるようにしているようで。
中3で帰国した息子も帰国後も勉強を頑張り、つい最近受けたTOEIC®では自己最高点を取ることができました。中学なり高校なりで帰ってきた場合、その時点での英語力しかないので、年齢に応じた英語を身につけるためには努力を続けなければいけないのでしょうね。
Cさん
Bさんのお宅は大きくなるまで長い間を海外で過ごされているから、英語力も高いでしょう?
Bさん
確かにアメリカの現地校とドイツのインターナショナルスクール合わせて通算で5年半いたんですが、どちらも日本人が多い地域だったので日本人同士で固まりがちで、思ったより英語力はつかなかったかもしれません。英語の家庭教師はつけていましたが英語ネイティブまでには至らず。
ですので2人とも、「英語を武器に世界を渡り歩く」というよりは、「日本というホームグラウンドで英語を仕事のツールとして生かす」という立ち位置でしょうか。
今、上の子は日系の食品会社で営業をしていますが、通訳も頼まれるそうです。下の子は日系ホテルに勤めているため、海外からの要人のご案内をしたりも。外資系企業だったら目立たなかったでしょうけれど、日本の企業だからこそ英語がうまく活用できているのかなと思います。
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