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専門家に聞く・中学受験事情第1回「2018年度の志願者動向は?」

日能研関東・関東中学情報部部長の長谷川信誓氏
日能研関東・関東中学情報部部長の長谷川信誓氏

都心部で増える中学受験者

日本では小学校卒業後、私立中学や公立中高一貫校を目指す子どもが、都心部を中心に増えているという。こうした中学受験の現状をシリーズでレポートする。

お話を伺ったのは『日能研関東・関東中学情報部』部長の長谷川信誓(はせがわのぶちか)氏だ。

首都圏の中学受験者は3年連続で増加している。2018年度の受験率を都道府県別にみると、東京都は29.8%(0.8ポイント増)神奈川県は15.1%(0.3ポイント増)、埼玉県は15.4%(0.6ポイント増)、千葉県は15.5%(0.8ポイント増)だった。

2018年度入試で志願者数を増やしたのは、難関校といわれる早稲田、慶應をはじめ、明治、法政、中央と大学付属校が目立った。これは、2020年度からの大学入試改革により、どんな入試になるかわからないという保護者の不安が要因のようだ。

「内部進学できる付属校であれば、大学入試への心配はありません。一方、進学校では高三時に、『センター試験(2020年度から大学入学共通テスト)』対策に追われますが、大学付属校であればその時間を、その他の学びに有効に使えるというメリットもあります」(長谷川氏)。

グローバル教育の他、学校改革にも注目

スーパーグローバルハイスクールへの関心

グローバル化に対応した学校も人気だ。その代表格ともいわれる『渋谷教育学園渋谷中学校』や『広尾学園中学校』、英語の他に理系教育を強化した『三田国際学園中学校』、国際バカロレア教育を行う『開智日本橋学園中学校』などがそれだ。

充実した英語教育や国際化教育が一般的になりつつある中、卒業後の進路として、海外大学を視野に入れる学校も出てきている。海外大学進学で高実績を出す『渋谷教育学園幕張中学校』は帰国生入試、一般入試共に志願者を増やした。

このほか、理数教育の強化を進める学校も注目株だ。『東京農業大学第一高等学校中等部』や『品川女子学院中等部』などは、いわゆる理系女子の志願者が増加したという。

特色ある教育を打ち出す学校がある一方で、伝統校の共学化や校名変更、ICT環境の整備などの学校改革も志願者動向を左右する。

「保護者は、我が子が中高6年間をどう過ごし、その着地点はどうなるのか、という視点で学校をみています。学校のそれぞれの取り組みを“点”だとすれば、それを入学から卒業までの“線”として繋げて見せることで、学校への期待値も上がるようです。教育の多様性と中身のわかりやすさも、学校選択のポイントとなっています」と長谷川氏は言う。

では、実際の入試はどんなものなのか、次回は入学試験について取り上げる。

(取材/文:橘晶子)

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