Press "Enter" to skip to content

就活調査(後編)企業のガクチカ重要度は学生が思うほどは高くない

昨日は、2023年卒業予定の大学生(以下、「23年卒学生」)の「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」に対する考え方を調査したアンケート結果をご紹介。8割の学生は自信を持って企業にアピールできるガクチカを持っているが、4人に1人の学生はガクチカに事実とは異なる内容を盛り込んだことがある、などといった実態を垣間見た。

本日は、企業のガクチカに対する考え方を調査したアンケート結果を見てみよう。

「ガクチカ」の認知度、企業サイドは約6割

そもそも、「ガクチカ」とは就活生が学生間で使用しはじめた言葉で、今では就活を話題にするときにかなり一般的に使われるようになってきてはいるが、企業サイドでも広く認知されている言葉なのだろうか? 

そこで調査では「ガクチカという言葉を知っている」かどうか、企業と学生双方に聞いてみた。すると、学生は96.7%とほとんどが認知していたが、企業の認知度は61.5%で、35.2ポイントの差が出る結果となった。

選考時、7割の企業はガクチカを聞いている

そして、「選考時にガクチカを聞いているか」どうかを聞いたところ、企業の採用担当者の約7割(65.2%)が「選考時にガクチカを聞いている」と回答。企業側の認知度(61.5%)とほぼ同じ数値となった。

コロナ禍によりガクチカに代わる質問をする企業も

昨今のコロナ禍の影響で満足のいくキャンパスライフを送れていないことからガクチカに悩む学生も多い中で、約8割(77.0%)の企業は「ガクチカを代替する質問は設けていない」。コロナ禍でガクチカづくりに悪影響が出ている学生を考慮した代替質問を用意出来ている企業は4分の1未満にとどまっているようだ。

代替質問を設けていると回答した企業では、以下のようなコロナ禍ならではの質問や、環境に左右されずに人となりを把握できる本質的な質問を設けていた。

  • コロナ禍に新たに取り組んだことはありますか
  • コロナ禍がなければ、どのようなことをしたかったですか
  • 休日はどのように過ごしていますか
  • 学習時のスケジュールの組み立て方、また工夫した点は何ですか

学生と企業が考えるエントリーシート中の重要事項

最後にエントリーシートにおいて、学生が「重要視されているだろう」と思う項目と、実際に企業が重要視している項目を聞いたところ、「ガクチカ」で大きな乖離がみられた。

志望動機の重要視度は学生43.4%に対し企業34.8%と10ポイント近くの差があるものの、自己PRは学生23.1%に対し企業28%、文書力は学生7.4%に対し企業10.6%とさほど違いがないのに、「ガクチカ」では学生20.7%に対し企業8.7%とダブルスコア以上もの差がついた。

採用時にガクチカを問う手法の見直しも必要

株式会社ネオキャリアの就職エージェント事業部・副事業部長の橋本 健一(はしもと・けんいち)氏は調査結果を次のように総括する。

「エントリーシートに関する弊社の調査結果からもわかるように、学生と企業とではガクチカの重要度は違います。学生にとっては、就活の『入口』とも言えるエントリーシートの段階で、聞かれる頻度も高いことからガクチカを意識せざるを得ない状況です。一方で、企業はガクチカを通して学生の人となりや自社で活躍できる素養があるかどうかを見ているのであって、単純に学生時代に頑張ったことを聞きたいのではありません。これら双方の背景から、ガクチカの立ち位置に対するギャップが生じてしまっていると考えます。

そのせいで、ガクチカを通して学生が伝えようとしていることと、企業が求めていることにもズレが生じてしまっています。生じたこの”ズレ”は、毎年就活生は変わり、就活生に『良い』として就活情報サイトや就活本などで紹介されるガクチカの事例に小手先のテクニックや本質的ではない事例も多いことなどから、なかなか好転することがないのが現状です。

一方で、コロナ禍は、これまでの採用手法は通用しないと気づくキッカケを作ったと捉えることもできます。まずは企業が本来の目的を見据え、手法を見直すことを求められているのではないでしょうか」

(取材・文/大友康子)