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世界における日本の科学技術の動向は落ち目? まだまだイケテル?(後編)

昨日は文部科学省直轄の国立試験研究機関「科学技術・学術政策研究所」の『科学技術指標2023』から、世界における日本の科学技術の現状をチェック。研究開発費、研究者数は主要国内で第3位、世界の複数国への特許出願数が世界1位。ハイテクノロジー産業(医薬品、電子機器、航空・宇宙)の貿易収支比は主要国中第6位と落ち目ながら、ミディアムハイテクノロジー産業(化学品と化学製品、電気機器、機械器具、自動車など)はいまだ主要国第1位をキープしている、という現状を見た。

本日は『科学研究のベンチマーキング2023』の中から、日本の科学技術分野の論文数を見てみよう。

出典:村上昭義 西川開 伊神正貫 「科学研究のベンチマーキング2023」,NISTEP RESEARCH MATERIAL,No.329,文部科学省科学技術・学術政策研究所. DOI: http: s //doi.org/10.15108/rm 329

日本の論文数は過去最低ランク

論文数のカウント方法には、「整数カウント法」と「分数カウント法」という2通りの方法がある。国をまたがって共に行う国際共著論文の場合に、参画した国それぞれが「論文件数1」と数えるのが整数カウント法。論文1件に対し、その国の貢献分を分数で数えていくのが分数カウント法。例えば、日本のA大学、日本のB大学、米国のC大学の共著論文の場合、各機関は1/3と重み付けし、日本2/3件、米国1/3件と集計する。整数カウント法では論文生産への関与度を見ることができ、分数カウント法では貢献度を見ることができる。

最新年(2019-2021 年の平均)を見ると、整数カウント法では、日本の論文数は第6 位、世界の注目度の高いTop10%の論文数をカウントするTop10%補正論文数は第12 位、Top1%補正論文数は第12 位である。

分数カウント法では、日本の論文数は第5 位、Top10%補正論文数は第13 位、Top1%補正論文数は第12 位となり、初めて韓国に抜かれた。

日本の論文数は停滞を脱し増加するも、他国の伸び率がより上昇

世界における日本の論文数ランキングの低下は残念だが、その点に関し、「科学技術・学術政策研究所」は次のように解説する。

「日本の論文数は、2010 年代半ばから整数カウント法と分数カウント法の両方で増加している。注目度の高い論文数(Top10%・Top1%補正論文数)は、整数カウント法では継続して増加している。分数カウント法では2000 年代から減少していたが、近年は下げ止まりの兆しが見られる。

日本の整数カウント法の論文数は、過去に停滞していた時期に比べて明らかに増加しているが、他国の伸び率がそれを上回っているため、順位上昇までにはつながっていない」

世界の中で、科学技術や学術振興における中国の躍進に対し、日本の地位低下が気になるところではあるが、「停滞していた時期」は脱しているようなので、再びの日本の躍進を望みたい。

(取材・文/大友康子)