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世界に誇る日本のアニメ、どんな人がつくっているの?(後編)

ビジョンを明確にすることが大切

みんなが大好きなアニメはどんな人がつくっているのか、どんな仕事をしているのか、子どもたちに伝えるオンライントークイベント「アニメってどんな人がつくっているの?アニプレックスの人に聞いてみよう!」のリポート(後編)をお届けする。主催は、ソニーの教育プログラム「CurioStep with Sony(キュリオステップ)」で、「CurioStepサマーチャレンジ2023」の一環として開催された。

登場したのは、アニメ作品制作のリーダーで<企画する人>であるアニプレックスのプロデューサー丹羽将己(にわ・まさみ)氏、<アニメーションをつくる人>であるA-1 Picturesの金子敦史(かねこ・あつし)氏、<届ける人>であるアニプレックスの栃木淑人(とちぎ・よしと)氏とソニー・ミュージックソリューションズの松崎知子(まつざき・ともこ)氏の4名だ。それぞれの仕事内容について説明した後(前編)、やりがいや目標についても語った。

アニプレックス プロデューサーの丹羽将己氏

仕事をするうえで特に気を付けていることとして、丹羽氏は「僕が見ているビジョンが明確でないと一緒に仕事をする仲間がどう動けばよいのかわからなくなってしまうので、明確なビジョンを持ち、判断をしていくことが大事だと思います」と言い、金子氏は「僕は今年で40歳なんです。年を重ねていっているからこそ、一番アニメやゲームを楽しんでくれている若い世代の人の話をよく聞くように心掛けています」と話した。また、やりがいを感じる瞬間について、丹羽氏は「続編を発表したときにみんなが喜んでくれる瞬間が嬉しい」と言い、視聴者の声が励みになっていることを伝えた。

A-1 Pictures 金子敦史氏

 海外ではNGの表現も。見せ方に工夫が必要

また、<届ける人>として海外を担当している栃木氏は、「展開する国や地域の文化によっては、激しい戦闘シーンは流せないなど映像表現に規制があることも少なくありません。そのルールに従いつつも、そのシーンを丸ごとカットしてしまうと作品の大事なところを見せることができずお客様もつまらなくなってしまうので、少し見せ方を変えて激しい部分はカットしつつストーリーはそのまま見ていただけるように工夫をしています。作品の世界と展開する国・地域の文化とのバランスに気をつけています」と話した。

アニプレックス 栃木淑人氏(左)、丹羽将己氏(右)

今後の目標としては、松崎氏が「新宿ダンジョン攻略体験施設<THE TOKYO MATRIX>をつくりましたが、地方の方はなかなか足を運べないので、今後は遠くに住んでいる人々も施設で遊んでいる人々と一緒に冒険できるような仕組みをつくっていきたいと思います」と夢を語った。

好きな気持ちを持ち続けてほしい

視聴者からの質問に答えるコーナーを経て、最後は視聴者へのメッセージで締めくくられた。

松崎氏は「アニメが大好きな人が見てくれていると思いますが、アニメをつくる仕事以外にも本当にいろいろな仕事があります。一見違う仕事をしていてもずっと好きでいるとどこかで繋がってくることもあるので、その気持ちを持ち続けていてほしいな、と思います」とコメント。

ソニー・ミュージックソリューションズ 松崎知子氏(中央)

栃木氏は、数年かけて念願のアニメ担当になったという自身の経験も踏まえ「好きな気持ちに加えて、何かひとつ自分の武器を鍛えておくだけでも、それをきっかけにアニメの仕事に関われることがあります。また、人との縁を大事にしていってもらいたいと思います」と語った。金子氏は「僕は社会人になる前はクリエイターになりたかったのですが、その夢は少しずつ形を変え今は制作をしています。ただ、15年間やってみて、僕は制作の仕事に向いてるなと思いました。夢は日々変化・進化していくものなので、今掲げている一つの夢にこだわらず、視野を広げていくといいのかなと思います」と話し、丹羽氏は「アニメ業界では、日々の楽しいことのすべてが糧になり、生かせる業界です。いつかみなさんと仕事をできる日を楽しみにしています」と子どもたちにエールを送った。

1つのアニメ作品が完成して視聴者のもとに届き、さらにイベントなどを通じて長く楽しまれる過程には、実に多くの作業があり、多くの人がかかわっていることがわかったトークイベントだった。アニメが好きな人はもちろんのこと、アートやカルチャーに関する仕事に興味を持っている人にとっても興味深いお話だったのではないだろうか。
(取材・文/中山恵子)

●YouTubeにてイベントのアーカイブ公開中