「科学のオリンピック」で日本代表が快挙!
未来の研究者たちが国際舞台で大活躍
2026年5月9~15日、米国アリゾナ州フェニックスで、世界最大の中高生向け科学研究コンテスト「リジェネロン国際学生科学技術フェア(Regeneron ISEF)2026」(Regeneron International Science and Engineering Fairの略。以下、ISEF)が開催されました。科学・技術・工学・数学(STEM)分野など22のカテゴリーで研究成果を発表する国際大会で、世界の高校生が自分たちの研究を披露しあう、いわば「科学のオリンピック」です。
76回目を迎えた今大会の賞金総額は約900万ドル(約14億円)にのぼり、世界65の国と地域から1725名のファイナリストが集結。日本からは19研究・29名が参加し、市立札幌開成中等教育学校の栗林輝さんが最高賞である「ジョージ・ヤンコポーロス革新賞」を受賞する歴史的な快挙を成し遂げました。さらに、日本代表からは過去最多となる8研究が各研究部門における優秀賞を受賞し、3研究で計4つの特別賞を受賞するなど、次世代を担う未来の研究者たちが国際舞台で高い研究力と国際的な発表能力を示しました。
ISEF参加68年の日本の歴史の中で初の快挙
大会スポンサー企業(Regeneron Pharmaceuticals, Inc.)の社長兼最高科学責任者の名を冠した「ジョージ・ヤンコポーロス革新賞」は、全22部門の部門優秀賞1等の中から、1件のみが選出されるISEF最高賞。今年はその最高賞を北海道札幌市の栗林輝さんが受賞しました。1958年に日本代表として派遣が開始されて以来、史上初の快挙です。
最高賞【ジョージ・ヤンコポーロス革新賞】
【物理学・天文学部門 優秀賞1等】
栗林輝さん(市立札幌開成中等教育学校)
「マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたリンク機構に関する研究」
Sampling the Complete Configuration Space of Origami and Linkages Using Markov Chain Monte Carlo
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/phys021-config-space-sampling-of-origami-and-linkages
主催者インタビューに対し、栗林さんは研究内容についてと受賞の喜びを次のように述べました。
「私のプロジェクトは、折り紙とリンク機構に関するものです。折り紙とは、一枚の紙だけで立体構造を作り出す日本の芸術であり、リンク機構は、いわば折り紙の2次元版のようなものです。つまり、折り紙とリンク機構には複数の動きがあり、その動きには複数の経路が存在します。
そこで私の研究では、折り紙やリンケージが持つあらゆる可能な動きをサンプリングする手法を開発するとともに、それらの動きを分析し、工学的な応用などへの展開を行いました。この手法は、自然界に見られる折り紙的なパターンの分析にも応用できると考えています。自然界では、まさに、植物や動物などが、構造上として、効率的に折りたたんだり展開したりするための折り紙的なパターンを実際に持っているからです。こうした構造について、わたし自身の研究による手法を用いて分析したところ、多くのケースで活用できるような明確な経路や区分が観察されました。
例えば、効率的に折り畳んだり展開したりする構造を設計したい場合、私の手法を用いて自然界の折り紙パターンを分析し、それを模倣することができます。同様に、宇宙工学や建築など、他の多くの分野に応用することも可能です。
まさかこのような最高賞を受賞できるとは思っていなかったので、とても驚いています。本当に、なんというか、びっくりでした。将来は、自身の研究を深めたいと考えています。より国際的な視野を持ち、世界中の多くの人々と交流できるよう、自ら積極的に国際的な環境に身を置きたいと思っています」
※実際のインタビューは英語/日本語訳提供:NPO法人日本サイエンスサービス
その他、7研究が優秀賞と特別賞を受賞
【物理学・天文学部門 優秀賞2等】
喜多俊介さん(筑波大学附属駒場高等学校)
「物質中で磁場の力は境界面にのみ生じるのか」
Do Magnetic Forces in Matter Act Solely on the Boundary Surfaces? Evaluating the Formulations of Minkowski, Helmholtz and Lorentz
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/phys027-do-magnetic-forces-act-solely-on-the-intersurface
【植物科学部門 優秀賞2等】
特別賞【アリゾナ州立大学賞】
特別賞【トルコ科学技術研究会議賞】
小松和滉 さん(長野県諏訪清陵高等学校)
「オジギソウの刺激識別と学習能力-刺激装置とAI葉開閉度評価を用いた実証-」
Autonomous Underwater Vehicle (AUV) for Real-Time 3D Microplastic Concentration and Toxicity Mapping via Deep Learning and Integrated Microscopy
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/plnt017-stimulus-discrimination-and-memory-in-m-pudica
【ロボット工学・知能機械部門 優秀賞2等】
特別賞【アブドゥルアズィーズ国王財団の才能創造性賞】
五十嵐夕剛 さん(アメリカンスクールインジャパン)
「半自律潜水艇を用いたマイクロプラスチック検出のための機械学習アルゴリズムの開発」
Autonomous Underwater Vehicle (AUV) for Real-Time 3D Microplastic Concentration and Toxicity Mapping via Deep Learning and Integrated Microscopy
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/robo019-autonomous-auv-for-real-time-microplastic-imaging
【動物科学部門 優秀賞4等】
加藤豪 さん(東京学芸大学附属高等学校)
「刺身断面の筋原繊維の微細構造と構造色の関係に関する検討」
Quantitative Analysis of Angle-Dependent Surface Coloration on Sashimi: Testing Thin-Film Interference, Muscle-Fiber Structural Color, and Optical Activity
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/anim018-quantitative-analysis-of-sashimi-iridescence
【動物科学部門 優秀賞4等】
石橋桐磨さん、石塚太一郎さん、川合麻夢さん(静岡県立焼津中央高等学校)
「クワガタムシ幼虫のメス斑とは?」
“Female Spot” of Stag Beetle Larvae is a Symbiont Organ
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/anim023t-female-spot-of-stag-beetle-is-a-symbiont-organ
【生化学部門 優秀賞4等】
特別賞【アルムナイ特別賞】
長坂ソフィア怜 さん(東京都立日比谷高等学校)
「ドラッグ・リポジショニングを活用した遺伝子操作技術の開発」
Drug Repositioning for Novel Genome Engineering: Technology With High Therapeutic Efficacy and Low Side Effects
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/bchm010-drug-repositioning-for-novel-genome-engineering
【テクノロジーによる芸術の拡張部門 優秀賞4等】
植松菜生 さん(桜蔭高等学校)
「持続可能で美しい金継ぎ3D点群データセットの提案」
Kintsugi 4D: Image-Based Kintsugi-Aware Framework for Fragment-Level 3D Point-Cloud Reconstruction and Chronicle Integration
研究プレゼン資料:https://isef.net/project/teca006-kintsugi-4d?
探究心を大切に、挑戦を支える環境の広がりに期待
今回のこの快挙に対し、若き研究者の育成を支援するNPO法人日本サイエンスサービス(NSS)の理事・村本哲哉(むらもと・てつや)氏からコメントをいただきました。氏は東邦大学理学部准教授であり、NSSの理事としてISEF出場者を選ぶ科学コンテスト全国大会の審査員や、日本代表がISEFで発表できるようにサポートするISEFフェアディレクターを務めています。
「ISEFで日本から世界一を目指して、スポンサー企業や政府機関とともに、NPOおよび研究者の立場から四半世紀関わってきましたので、今回の世界一や数多くの受賞は、大変うれしく思っています。
ISEFでは、単に高度な実験や専門的な知識が評価されるわけではありません。評価されるのは生徒自身の強い興味や疑問から研究が始まっていること、専門家による適切なメンタリングを受けながらも研究の主体が本人にあること、そして得られた結果を個別の事例にとどめずにより広い視点からその意義を説明できることです。
さらに重要なのは、自らの研究を自分自身の言葉で説明できることです。今回の受賞者たちの多くは、通訳を介さずに自分が何を明らかにしたかったのか、なぜその研究に取り組んだのか、そしてその成果がどのような意味を持つのかを説明していました。英語力や伝える姿勢が世界の研究者や審査員の共感を呼んだのだと思います。
その一方で、このような成果は一部の特別な生徒だけによって生まれるものではありません。近年、全国の学校で探究活動や課題研究が広がり、多くの生徒が自ら問いを立てて研究に取り組む機会を得ています。こうした裾野の広がりがあるからこそ、その中から世界に挑戦する研究者の卵が育ってきています。
生徒一人ひとりの『なぜだろう』という純粋な探究心を大切にしながら、挑戦を支える環境が広がることを期待しています」
(写真・資料提供/NPO法人日本サイエンスサービス)
(取材・文/大友康子)








