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インタビュー|加藤ローサさん 「いい親」を演じない。人間だから間違うこともありますよ!

元サッカー日本代表選手の妻として、3カ国で暮らした経験のある加藤ローサさん。
泣いたり、笑ったり、孤独を感じたり、とにかく目まぐるしい日々だったというなかで得た教訓と、子どもたちへの思いを伺いました。

母からの教えは「借金の連帯保証人にはなるな」(笑)

――――加藤さんはイタリア人のお父様と日本人のお母様の間にお生まれになって、6歳まではイタリアに住んでいたとか。幼少期はどんなお子さんだったのですか?

加藤ローサさん(以下、加藤) 小学校に入る前に母と鹿児島に引っ越して、それからは母とふたり暮らしでした。ものすごい田舎に住んでいて、自然相手にひとりで遊ぶことが多かったです。屋根に登ったり、水着に着替えて水たまりに入ったり(笑)。でも、4年生のときにマンモス校に転校してからは、人の多さに圧倒されてしまって。それからは、結構ずっと内気でした。

イタリア人の父と日本人の母の間に生まれた。上/イタリアのナポリに住んでいた頃。3歳の愛くるしい加藤さん(右から2番目)。 右下/イタリアにて4歳の頃。左下/6歳の誕生日会。この 後、母と鹿児島県に引っ越してからは「引っ込み思案で、自然のなかひとりで黙々と遊ぶ子でした( 笑)」

―――高校1年生のときにモデルデビューしてからも、高校卒業までは鹿児島で過ごされたのですよね。

加藤 はい。それまで母はがむしゃらに働いて私を育ててくれました。参観日とかも来られないくらい忙しくて。でも、節目節目に人生で大切なことを教えてくれるんです。たとえば私が二十歳になったときは、母から「人生失敗の3大要素」という件名のメールが。何だろうと思ったら、「①ギャンブル、酒」「②異性」「③借金の連帯保証人」と書いてありました。あなただけじゃなく将来の子どもたちも困るから、連帯保証人にだけはなるな、と(笑)。

―――堅実な教えですね! 加藤さんは26歳のときに、元サッカー日本代表選手で、現在はY.S.C.C.横浜所属選手の松井大輔さんとご結婚なさいました。当時は松井選手がフランスリーグ在籍だったため、ご自身も渡仏。このとき妊娠8カ月だったそうですが、海外での出産に不安はなかったですか?

加藤 あの頃は、結婚したのだからそれが自然と思っていたのですが、今思えば、日本で出産してから行くのがベストでした。フランスの田舎町にある唯一の総合病院で出産したのですが、大変で……。最初、母乳が一滴も出なかったんですけど、フランスでは「赤ちゃんに最初に与えるのは絶対に初乳」という考え。ミルクを提供してくれないんです。私はフランス語ができないので、言いたいことをうまく言えずにいたら、子どもの口がカラカラに…。体重も減ってしまって。それなのに、まだ『母乳をあげろ』と言う。私もう限界で、うわーっ! と大泣きしちゃったんです。そうしたら、今まで敵だと思っていた看護師さんが私を急に抱きしめて、すぐにミルクをくれて(笑)。海外では、意思をはっきり主張しないと通じないんだなと実感しました。

左/初めての滞在地フランスにて。クリスマスにパリのシャンゼリゼまで足を伸ばした。右/フランスのディジョンで、生まれたばかりの長男をおんぶして。ふたりの息子さんは現在小5と小3。「どちらも自由で、我が強いです。周りから浮くぐらい元気だけど、ま、いっか! と思っています( 笑)」

何かに取りつかれていたのかも 帰国時はまるで余裕がなく……

大泣きしたり精神不安定になったり
頑張りすぎて心に余裕がありませんでした。

―――――フランスの次は、ブルガリアで10カ月過ごされたのですよね。

加藤 滞在地は首都で、和食屋さんがたくさんあって食に困らなかったし、子どもをベビーシッターさんにお願いして夫婦でカフェに行ったり。ヨガ教室や英語の語学学校に通って、そこでできた友だちと外食をしたり。楽しい思い出がいっぱい。「首都最高!」と感激しました(笑)。

―――そして次は、ポーランドへ。

加藤 ポーランドでは、上の子に手がかかるうえに、第2子を妊娠中で気持ちが不安定。さらに昼の3時ぐらいに日没しちゃって……。精神的に参っていたんですけど、そんなときに、静岡県のジュビロ磐田が夫に声をかけて下さって。「希望の光! 神様はいるんだ!」と真剣に思いました。その後は日本に帰り、夫は先に静岡に行き、私は鹿児島で次男を産んで、その1カ月後に静岡に移りました。

―――出産と育児だけでも大変なうえに、見知らぬ土地を転々として。気持ちが休まらなかったのでは。

加藤 そうなんです。次々と移動して、わけがわからない感じで日本に帰ってきました。スマホもまだ機能が充実してない頃で「小児科どこ? スーパーどこ?」と右も左もわからない状態で始まって。シッターさんにお願いするとか保育園に入れるとかすればよかったのに、その発想が思いつかないほど何かに取りつかれていたというか……、頑張りすぎて心に余裕がなくなっていましたね。

―――その状態をどうやって乗り越えたのですか?

加藤 子どもたちが幼稚園に入ってから、ママ友がたくさんできたんです。みんなには本当に助けられました。私にとって、静岡は第2の故郷。子育て中は周りに頼るほうがいいですね。反省点は多くて、夫に対しても、育児や家事にもっと関わるよう促せばよかったと思っています。最近は、食器洗いや洗濯をしてくれますけど(笑)。結婚して10年。こんなにいろいろな経験を味わえたのは彼のおかげ。もちろん感謝しています。

子どもには何でも話す「一生懸命」を伝えたい

心身のバランスを整えて孤立しないこと
海外での生活ではそれが大事です

――――夫婦共通の子育ての方針や、育児での心がけはありますか?

加藤 過保護に育てず、やりたいことは何でもやらせたいと思っています。彼らの人生は彼らのものですから。育児での心がけは、母からも教わった「ものを大事にする心」を養うこと。なので、新しいものは買い渋ります(笑)。それから、「いいお母さん」を演じない。怒りすぎたときは、「ごめん。今のはNGワードだね。こうしてほしかったから、つい言いすぎた」と、何でも話す。一所懸命やった結果こうなったと伝わればいいかなと。だって、人間ですから。間違うことはありますよ。

――――最後に、海外で子育て中の親御さんにひと言お願いします。

加藤 パートナーにSOSを出してほしい。それから、現地にある日本のコミュニティに参加して情報収集することも大切です。少し面倒かもしれないけれど、結局は自分が助かりますから。それと、家にいる時間が多いママは、何かひとつでいいから自分のやりたいことをやるといいと思います。私は、日本の通信教育の編み物講座を母から送ってもらって、編み物をやっていましたよ。とにかく心身のバランスを整えて、孤立しないこと。海外生活ではそれが大事です!

加藤ローサさんの一問一答×10

❶好きな言葉は?
乾杯!

❷嫌いな言葉は?
ママがやってよ

❸どんなときにウキウキする?
仕事の前日。仕事に復帰できて幸せ。
やりたいことをやる時間は大事!

❹どんなときにげんなりする?
台所の流しに溜まった食器を見るとき

❺好きな食べ物は?
酸っぱいもの 焼き肉

❻嫌いな食べ物は?
魚卵

❼朝起きていつもすることは?
お湯の次にコーヒーを飲み、気持ちを落ち着けてから子どもを起こしに行く

❽寝る前にいつもすることは?
子どもと一緒に九九の歌を歌う

❾マイブームは?
ゴルフ!

❿生まれ変わったら何になりたい?
自分

プロフィール

加藤ローサ(かとう・ローサ)さん

1985年、イタリア生まれ。6歳の頃から鹿児島県で過ごし、高校1年生のときにモデルデビュー。’04年、結婚情報誌『ゼクシィ』のCMで注目を集め、以後、女優としても活躍。’11年、元サッカー日本代表選手で現Y.S.C.C.横浜所属の松井大輔氏と結婚し、’13年からは家庭優先を理由に芸能活動を休止。’21年にはドラマ『きれいのくに』(NHK)で10年ぶりに地上波に復帰した。’22年8月、出演映画『凪の島』が公開される。ふたりの男児の母。

文・編集/『帰国便利帳』編集部 田中亜希
撮影/浜田啓子(浜田啓子写真事務所)  スタイリスト/浜木沙友里  hair+make/三宅茜  衣装/ピアスagete¥18,700(税込)
※2021年夏インタビュー

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