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大塚作一教授らが世界初の発見を発表|国際高等専門学校

【世界初】国際高専の大塚作一教授らが、朝の見え方が生活パターンの影響で大きく異なることを発見。

国際高等専門学校(International College of Technology, Kanazawa 以下、国際高専)の大塚作一教授らの研究グループは、これまでは同じだと考えられていた朝の光景の見え方が、人それぞれの生活パターン(概日リズム)の影響によって、大きく異なるこという、世界初となる発見を発表しました。

この研究成果は、世界最大の電子ディスプレイ装置に関する学会「The Society for Information Display(SID)」(日本語名:国際情報ディスプレイ学会)の学術誌『Journal of the SOCIETY for INFORMATION DISPLAY』(Volume32, Issue6, June 2024)で発表されました。論文のタイトルは、「適応型ダイナミックレンジ圧縮技術を採用し、個人の概日リズム視覚特性の多様性に対応する次世代のパーソナライズされたディスプレイシステム」です。

次世代光学ディスプレイの開発につながる大発見

色の見え方は人によって違い、性別による差など、個体差があるといわれています。大塚教授らが発見したのは、「朝型の人」と「夜型の人」とでは、同じ朝の光景でも見え方が異なるという事実です。例えば、春先に「今朝は桜の花が青空に映えて、とても清々しいですね」といった会話が当然のことのように交わされていても、実は人によって、感じ方がまったく異なっていたということを示唆しています。

この研究の成果は、「朝型」「夜型」によって、コントラストを自動的に変える次世代の光学ディスプレイの開発につながるものとして大きな注目を集めています。さらに、この概日リズムが視覚に与える影響について、医学や生物学、照明学、建築学などの学際的研究が進めば、総合的な解明や応用への可能性が高まることが期待されます。

朝方の人は、メリハリのある画像で
夜型の人は、全体に明るい画像で朝を感じる

研究の概要

現実世界にある明暗のコントラストをそのまま再現するには、普段、私たちが目にしている標準的({SDR:Standard Dynamic Range})な映像や写真で表現できる限界を超えた「HDR(High Dynamic Range)」が必要になります。

大塚教授らの研究チームは、人間の感性に合わせて自然でリアルな描写を保ったままHDRで撮影された画像をSDRに変換する新たな方法を開発。変換後の写真を被験者に見せることで、それぞれの写真が日中のどの時刻に撮影されたと感じるかを調査しました。

その結果、同じ風景でも朝型の人は「メリハリのある写真(コントラストを上げ、輝度を下げた写真)を朝だ」と感じるのに対して、夜型の人は「全体に明るく白っぽい写真(輝度を上げ、コントラストを下げた写真)を朝だ」と感じることがわかりました。
なお、夜型の人には、早朝に起床してもそのまま室内で過ごす人(本人は。自分は朝型と認識されているケースが多い)も含まれています。

月明かりの夜では、人は身の安全を図るため、暗いところも視認できるよう視覚の感度とダイナミックレンジをともに上げ、コントラストを下げて見ているといわれます。
夜型の人は、こうした夜の状態を残してコントラストを下げたまま、午前を迎え、午後はコントラストを少し高めた状態で外界を見ています。これに対し、朝型の人は朝、日光を浴びることで、暗く不必要な情報を視野に入れない、つまり、メリハリのある見え方に切り替え、午後になると、再び、夜に備えて徐々にコントラストを下げていくことが明らかになりました。

さらに、一定条件下では目を動かしても明るさの感覚が変化しないことから、この制御機構は脳内の一次視覚野に入る前段階に存在する可能性が高いこともわかりました。本研究の成果は、コントラストを自動的に変えることで、それぞれの人に対応した朝の見え方を表示する次世代ディスプレイの開発に応用できるものとして、今後も大きな関心を集めるでしょう。

大塚教授の研究グループの研究成果が紹介された
『Journal of the SOCIETY for INFORMATION DISPLAY』
(Volume 32, Issue 6, June 2024)の表紙。

【掲載論文誌】『Journal of the SOCIETY for INFORMATION DISPLAY』
【論文タイトル】Next generation personalized display systems employing adaptive dynamic-range compression techniques to address diversity in individual circadian visual features(概日視覚特徴の個人間の多様性に対応する適応的ダイナミックレンジ圧縮技術を用いた次世代パーソナライズド・ディスプレイ・システム)
【発行日】17 April 2024(オンライン初出)
【執筆者】大塚作一(国際高等専門学校)、岩井田早紀(鹿児島天文館メディカルカレッジ)、 折田裕一朗(鹿児島大学)、 比良祥子(鹿児島大学)、鹿嶋雅之(鹿児島大学)

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