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体験ルポ|国際高等専門学校に一泊。English×STEMを体験!

グローバルに活躍できるイノベーター(革新者)輩出をかかげる15歳からの全寮制の高等専門学校「国際高等専門学校」。今回は、なんと同校に一泊し、学校の授業まで体験できるという機会に恵まれました。体験ルポを綴ります。

主に1、2年生の勉強の拠点かつ寮を併設する白山麓(はくさんろく)キャンパスで、10月11日から12日にかけて1泊2日で 体験しました。

白山麓キャンパスのある白山麓は石川県南部に位置し、キャンパスの周辺には日本三大名山のひとつにも数えられるほどの白山麓の雄大な自然が広がっています。そんな自然環境に囲まれたキャンパスで行われる見学スケジュールの中には、英語で行う理工系の授業見学も組み込まれていて、英語の出来ない工学部卒の者としてはワクワクしつつも、「大丈夫だろうか…」と内心ドキドキしていました。

【レポート報告 1日目】

15歳から教授・准教授による専門的な授業を

1日目は、ルイス・バークスデール校長の英語での挨拶から始まりました。

バークスデール校長は、「15歳という吸収力抜群の学齢期から5年間にわたって技術的な事を学ぶという、日本の高等専門学校のあり方は、世界でも類を見ない。」と同校の特色をのべ、教育目標でもあるグローバルイノべーター育成への道すじについての講話が続きました。

通常、日本の4年制の理工系の大学に行っても、3、4年次から研究などを始めて行くところを大学と同じ高等教育機関である国際高専では、15歳から英語で教授・准教授の授業を受け、知識・技術を磨き、研究することができる。そうした内容に、技術立国ニッポン再生への道が見えてきたような気がしました。

その後は、同校国際理工学科長の松下教授よりパワーポイントによる学校説明がありました。

冒頭のテーマは、「国際高専は、どういった人材を育成するのか?」です。

同校では、未来の社会に必要なテクノロジースキルはもちろん「観察・共感」「定義」「概念化」「試作」「テスト」という5つのプロセスを繰り返し画期的なアイデアを生み出すデザイン思考(DesignThinking )、そして様々なピースをまとあげる対人関係スキル(Human skills)を 身につけ、問題解決のできる、理工系のグローバル人材、すなわちグローバルイノべーターを育成することが目標。それを実現するための緻密なシステムと革新的なカリキュラムについて、参加者一同、聞き入っていました。

松下教授曰く、同校では、「1年生の時から、例えばエンジニアリングデザインの授業でも、手を動しながら考え、ユーザー志向を常に意識した学習をしています。そうすることで自分が学んだものを実際の世界に活かそうとする学生が出てきています。上級生だけではなく下級生から、様々な学外コンテストに挑戦している姿が見られるのも、そうしたことの表れでしょう。もちろん、下級生の頃から少しずつ専門基礎を積みあげ、上級生になって自分の専門性の習得にむけて情熱を燃やしている学生も何人もいます」。

英語による工学系の授業に参加

そうしたお話の後、私たち一行は1年生の教室に移動。

すべてを英語で行うという、1年生の「物理」と「解析基礎」の授業と2年生の「エンジニアリングデザイン」の授業を見学しました。

私が見学した1年生の「解析」の授業は、日本人の先生が英語で行う形。

そして次に見学した2年生の「エンジニアリングデザイン」の授業は、グループ形式で、学生と教員がお互いの考え方などを英語でぶつけ合いながらプロジェクトを進めていました。

学生たちの英語力についても、先述の松下教授に伺ったところ、

「全員が最初から英語ができるわけではないですが、英語クラスは英語力に応じたグループ分けをして学習する中で、まずは英語の聞き取りができるようになってきた、というのが1年生の状況です。入学当初より、外国人教員の言っていることについてこれるようになってきています。IELTSは、年1回受けるのですが、全員ではないにしても、2年生の後半の時期で、1年時は4.0や4.5の学生が5.0、5.5に上がる学生もおります。特に、ライティングが伸びている様子が伺えます。もちろん最初からこのようなテスティング時の書き方のポイントを知っている学生はほとんどおりませんので、授業を通してライティング指導、構成の仕方等も学んでいる結果かと思います」との回答を頂きました。

木のぬくもりに包まれた校舎に専門的な工学設備が

授業見学終了後は、キャンパスツアーとして学校内の見学をしました。

校舎は、木質感のある弓型の変わった形状の2階建てになります。中に入ると、高い天井の広々とした空間が出迎えてくれました。

1階と2階には、学びの場となる、ゆったりとした「ライブラリー&ワークコモンズとリビングコモンズ」というスペースがあります。

ここでは、授業のスペースとして利用したり、学生の自習の場にもなるとのこと。空間に多くの専門書が蔵書され、その中心にゆったりとした学習スペースが広がる。そうした光景を見ていると、どこか欧米の大学に自分がいるような、そんな気持ちにもなってきました。

その後、1階のメーカースタジオ(工房)に移動。3Dプリンターやレーザーカッターなど、学生が授業で使う他、授業時間外でも活用できるようになっていました。

こうした専門的な設備が多数あり、常にアイデアを仲間とともにブラッシュアップさせる環境が整備されているのも、全寮制の高等専門学校である国際高専の強みだと感じました。

校内ではその他、体育館やジム、ボルダリングができる設備もあり、心置きなく運動できる環境も整っていました。

個室で快適な寮。敷地内にはなんと温泉も!

今回のセミナーでは、学生たちが暮らす寮に滞在しました。安全面では、カードキーを使用しているので、外部からの侵入を防げることが安心でした。

1,2年生が共同で生活する寮は、校舎に併設しています。これは学生たちに好評で、外に出なくても自分の部屋と教室を行き来出来るのがとても便利だそうです。。

部屋は、1ユニット6人制(6部屋)になっていて、冷暖房完備・家具備え付けの個室です。ユニット内は、洗面、トイレ、シャワーが共同、それ以外寮内には共同ランドリーもあります。

寮のルールとして、学生の役割分担が固定されないよう工夫がされ、学期ごとに部屋替えになっているようです。

それからびっくりしたのは、学校の敷地内に地域の方も利用できる温泉施設があり、学生は毎日無料で温泉に入れるそうです。これには本当にびっくりしました。

寮生活を通して学生たちは大きく成長するそうで、洗濯や掃除を自分ですることなどを通じて、身の回りの生活を管理することができるようになってきた、あるいは意識してするようになった、という学生たちの声をよく聞くそうです。

実際の学生の声「将来はJAXAで活躍したい」

夕食後、学生たちがリビングコモンズで行っている『夜の学習ラーニングセッション』を見学しました。その中で、学生さんに話を聞いてみました。

福岡県出身の1年生のAくんに「国際高専で学ぼうと決めた理由」を聞いてみたところ、こんな返事が返ってきました。

「最初は地元の九州で高専を探していましたが、宇宙工学やロボットに興味があったのと、エンジニアになるにもこれからの時代は英語が絶対に必要だと感じていたので、英語で理工学の勉強ができるここを自分で選びました。」

それから「英語は、得意だったの?」の問いには、

「そんなに英語は出来るほうではなかったですが、今では英語での授業もわかるようになりました。」とも答えてくれました。

そして最後に、「将来は、国際高専で学んだことをJAXAで活かしたい」という夢も語ってくれました。

限られた夜の勉強時間でしたので、邪魔にならないようリビングコモンズをあとに 敷地内にある温泉施設「比咩(ひめ)の湯」を堪能後、就寝。明日STEM授業体験に備えることにしました。

【レポート報告 2日目】

STEM(ステム)授業を体験

朝食後、今回の参加者一行は、デザインとプログラミングをテーマにしたSTEM授業の一部を体験しました。STEMとは、それぞれScienceTechnologyEngineeringMathematicsの頭文字を取ったもの。科学・技術・工学・数学の学問領域の境を越えてIT社会とグローバル社会に適応した理工系のイノベーターを育成する21世紀型の教育システムです。国際高専ではこのSTEMを最新の機器と大学に匹敵するような専門的かつ発展的な学びで行えます。

さて、私は、デザインの授業を選び人生初のレーザーカッター体験しました。レーザーカッターとは、レーザーの光で木材やプラスチック樹脂など様々な素材を切ることができる装置のこと。私はやや緊張しつつ、レーザーカッターでプラスチック樹脂を使い、キーホルダーを作成できた喜びと達成感の余韻に浸りつつ、教室を後にしました。

最終2学年は金沢工業大学と密接に学ぶ

その後は、白山麓キャンパスから離れて4・5年生が学ぶ金沢キャンパスに移動しました。

金沢キャンパスは、金沢工業大学に隣接。そのため金沢工業大学の学生や大学院生と共同でより専門性の高い研究を数多くしているそうです。

金沢工業大学は工学部、情報フロンティア学部、建築学部、バイオ・化学部を擁する理工系に特化した大学。大学院は工学研究科、心理科学研究科、イノベーションマネジメント研究科などを設けて高度な研究を行っています。実際に金沢工業大学も見学しましたが、施設・設備共にとても充実していて学生には、研究するにはたまらなく良い環境だと思いました。

日本三大名山のひとつ、雄大な白山麓のふもとに広がる壮大な高等専門学校から、将来、国内外で活躍するイノベーターが現れることに確信と期待を胸に抱きつつ、国際高専を後にしました。

【学校へのお問い合わせ】

金沢キャンパス
〒921-8601 石川県金沢市久安2-270
白山麓キャンパス
〒920-2331 石川県白山市瀬戸辰3-1
国際高専入試センター
Mail:admissions@ict-kanazawa.ac.jp

帰国便利帳 スタッフより