日本人移民の「食」はどう変わり、受け継がれてきたか
日本はもちろんのこと世界中の食卓で親しまれている「しょうゆ」。そんなしょうゆの製造販売メーカーであり、世界100ヵ国以上に展開しているキッコーマンが設立した「キッコーマン国際食文化研究センター」が、食文化講座「レシピ集に見る日系人と食 ~食の変遷と日系文化の伝承~」を開催する。日時は、日本時間4月24日(日)14時~。海外在住の人もYouTubeライブ配信により無料で視聴可能だ(視聴の申し込み期限は21日まで。詳細は文末に記載)。
講師は、早稲田大学人間総合研究センター招聘研究員の小嶋茂(こじま・しげる)氏。日本人移民の「食」が、移住先の地で世代を重ねるにしたがって、どのように変化し、受け継がれていったのか、第二次世界大戦後から現在に至るまでの90点を超えるアメリカやブラジルなどの日系人のレシピ集や現地調査による情報をもとに紹介する。
企画について、キッコーマン国際食文化研究センター長の山下弘太郎(やました・こうたろう)氏は、「日本食や日本の食文化が世界に広がった経緯として、日本人移民の影響は大きいと考えます。そこで、2012年より、日本人移民の食生活や日本食の伝承などについての調査を講師の小嶋氏に委託してまいりました。その研究成果を広くお披露目する目的で今回の講座を企画しました」と説明する。
しょうゆは祖国の味、海外でも調味料として定着
海外に渡った人々にとって、しょうゆはどのようなものなのか。山下氏は、「戦時中に北米で強制収容された日系人や日本人移民に、しょうゆ、みそ、緑茶などの支援物資が赤十字を通じて届けられましたが、中でもみなさまに喜ばれたものがしょうゆだったといいます。しょうゆは祖国の味、アイデンティティといえるのではないでしょうか」と話す。
そんな祖国の味が世界各地の食文化と融合することで、新しいおいしさが生まれるのだろう。
「海外でのしょうゆは、日本料理の調味料としてだけでなく、現地の料理に使う調味料として受け入れられ、定着していきました。肉としょうゆの相性の良さを生かした「teriyaki」は、海外でのしょうゆの使われ方を日本に紹介したといえます。キッコーマンしょうゆの品質は世界共通ですが、現在では世界各地の人々の嗜好に合ったさまざまなしょうゆや、しょうゆ周辺調味料も発売しています」と山下氏は説明する。
さらに、山下氏は、海外で暮らす弊誌の読者に向けて、
「生まれ育った土地や家庭の味は、まさにその人のアイデンティティです。おいしさの記憶は色褪せることのない幸せの記憶なのです。日本を離れて生活をされているみなさまは、これまでと異なる環境で思い通りにいかないことがあるかもしれません。そんなときに、しょうゆの香りと味でホッとするひとときを過ごしていただければ、これ以上の喜びはございません」とメッセージを寄せた。
今回の講座は長年の研究の集大成
小嶋氏はキッコーマン国際食文化研究センターの支援を受け、2012年から2018年まで、北米、ブラジル、ハワイなどで現地調査を実施し、その都度、同センターの食文化講座や機関紙などで研究結果の報告をしてきた。今回の講座はこれまでの集大成となるという。
このほか、料理のプロが講師を務める「KCC食文化と料理の講習会」も毎月開催。最近はオンラインで開催しているため、海外からも参加可能。料理好きな人は、こちらも併せてチェックしたい。
(取材・文/中山恵子)
◆イベント概要◆ ※日時の記載はすべて日本時間
キッコーマン国際食文化研究センターの食文化講座 「レシピ集に見る日系人と食」~食の変遷と日系文化の伝承~ |
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日時 | 2022年4月24日(日)、14時~15時30分 |
視聴方法 | YouTube無料ライブ配信 視聴希望者は、2022年4月21日(木)までに、キッコーマン国際食文化研究センターホームページより申し込みが必要。 ※申し込み後、事務局より視聴URLが届く。ライブ配信を視聴できるほか、2022年6月30日(木)までアーカイブを視聴可能 |
講師 | 早稲田大学人間総合研究センター 招聘研究員 小嶋茂氏 上智大学在学中にブラジルへ留学し、パラナ連邦大学大学院歴史科社会史修士課程修了。約10年の滞在を経て帰国。大学等に勤務後、JICA横浜 海外移住資料館の設立に関わり、現在まで同業務室で学芸担当を務める。ブラジル・アメリカ・カナダなどの多文化社会における日本人移民の歴史、日系人のアイデンティティや日系コミュニティの変容に関心をもつ。 |