現在日本に8校あるフェアトレード大学とは?

フェリス女学院大学が8校目として認定
2025年7月、一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(以下、FTFJ)は、フェリス女学院大学を日本国内で8大学目となるフェアトレード大学に認定しました。 フェアトレード大学とは、いったいどんな大学のことでしょうか? 詳しく見てみましょう。
フェアトレード大学とは?
フェアトレード大学とは、「大学ぐるみ」でフェアトレードを普及させることを目指している大学のこと。日本国内でもフェアトレード大学への関心が高まり、2014年にイギリスの基準をもとに日本のフェアトレード大学基準が完成。
基準1. フェアトレードの普及を目指す学生団体が存在する。
基準2. フェアトレードの普及活動、並びにフェアトレードに関する研究・教育活動がキャンパス内外で行われている。
基準3. 大学当局がフェアトレード産品を購入し使用している。
基準4. 複数のフェアトレード産品がキャンパス内で購入可能となっている。
基準5. フェアトレードの理念を支持し、その普及をうたったフェアトレード大学憲章を策定し、フェアトレード普及学生団体、学生自治会(ないし学友会などそれに準ずる組織)、大学当局の三者が同憲章に賛同している。
※各基準の指標等は省略。詳細はFTFJのHP内、「日本のフェアトレード大学基準」ページをご参照ください。
フェアトレードタウン運動&大学運動はイギリス発祥
「フェアトレード大学運動」の前に、まず、「まちぐるみ」でフェアトレードの輪を広げることで、弱い立場に置かれた途上国の生産者の自立や環境の保護保全に貢献しようとする「フェアトレードタウン運動」が2000年にイギリス・ガースタンでスタートしました。今では世界30カ国以上に広がり、フェアトレードタウンは2000以上に達しています。日本でも、2011年に日本初のフェアトレードタウンとなった熊本市を始め、7都市が認定されています。
その後、「フェアトレード大学運動」がやはりイギリスで始まりました。2003年にオックスフォードにある「オックスフォード・ブルックス大学」が、初のフェアトレード大学に認定。フェアトレードタウン運動と同様、フェアトレード大学運動も世界各地へと広がっていきました。
日本のフェアトレード大学8校の活動は?
「日本のフェアトレード大学基準」に則り、2018年に日本で初めて認定されたのが静岡県浜松市の静岡文化芸術大学。その後、札幌学院大学・北星学園大学(ともに北海道札幌市)、青山学院大学(東京都渋谷区)、千葉商科大学(千葉県市川市)、新潟国際情報大学(新潟県新潟市)、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)が認定され、今回のフェリス女学院大学(神奈川県横浜市)で8校となりました。
それぞれのフェアトレード活動を簡単に見てみましょう。詳しくは大学名にリンクさせた該当ページをご参照ください。
【静岡県文化芸術大学】
複数のフェアトレード・エシカル系の学生団体が立ち上がり、コスタリカのフェアトレードタウンで生産されるコーヒーの廃棄物を活用したお茶を開発するなど、環境系フェアトレードを実践。フェアトレードに特化した授業「フェアトレード論」を開講。フェアトレード研究を行うための研究費が付与され、教員および学生の共同研究に使われています。
【札幌学院大学】
経営学部のゼミナールを中心に、フェアトレードに関する教育研究活動を実施。さらに、活動を全学に拡げるためにフェアトレードサークルを発足。サークルと札幌市内の企業がコラボレーションし、オリジナルフェアトレードスイーツ「さっぽろゆめ結晶」を開発。有機シナモンパウダー(スリランカ)、はちみつ(アルゼンチン)、ココアパウダー(ガーナ)といったフェアトレード素材と北海道産の黒米、もちきび等を使用し、ベジタリアンの方や卵・小麦などのアレルギーの方でも安心して食べられるヘルシーなお菓子です。
【北星学園大学・北星学園大学短期大学部】
経済学部の科目としてフェアトレードの講義・実習を開設。まだ世界にあまり知られていない、主にアジアの優れた手工芸品を紹介し、公正な価格で販売して生産者と消費者の間に公正な関係を作りだすことを目指しています。これまで、バングラデシュ、ネパール、タイ、ベトナムの生産者の方々の製品を発掘し、フェアトレードイベントなどで紹介・販売してきました。
【青山学院大学】
学生団体を中心にフェアトレードに関する活動を積極的に行い、現在では学部学科、ゼミナール、課外活動等を通じてフェアトレードに寄与。学内の購買会で学生の開発・企画によるフェアトレード商品を販売。「経営学部学生リーダーズ(SBSL)」は日本の和紙工場とアフリカのバナナ農家のコラボで生まれたバナナペーパーを用いた付箋・ノートなどを開発。「総合文化政策学部フェアトレード・ラボ」はフェアトレード認証のティーバッグ・はちみつなどの食料品セット、フェアトレード認証のコットンを使用したタオル・マルシェバッグといった日用品セットの福袋を販売し、売上の一部をフェアトレード・ジャパンに寄付するなどの活動を行っています。
【千葉商科大学】
主に、認定学生団体「CUCエシカル学生クラブ」が中心となってフェアトレード活動を実施。学園祭ではもちろん、近隣のSDGs関連イベントに際し地域住民に対して啓蒙活動を行っています。近隣ショッピングセンターのイベントでは、学生企画のカフェでフェアトレード商品の販売やフェアトレードチョコバナナ教室なども行っています。
【新潟国際情報大学】
学内でのフェアトレード商品の提供や販売、講義での貿易ゲームの使用、学生団体「NUIS FT」によるイベントや展示などを通して、フェアトレードの理解浸透に取り組んでいます。
【立命館アジア太平洋大学】
大学公認の6つの学生サークルと協力しながら、大学内のフェアトレード普及に積極的に取り組んでいます。特に「Ones’1 Fair Trade」はフェアトレード商品の販売のために、現地訪問や学内外での啓発イベントなどを継続して活動。例えば、2023年にはタイやラオスでのホームステイを通してコーヒーの生産過程や現地の暮らしを体験。学内イベント「フェアトレードin APU」で、現地で直接取り引きしたフェアトレード商品の販売と渡航の様子を展示しました。
【フェリス女学院大学】
フェアトレード品の販売といった普及活動に加え、フェアトレードに関する勉強会の開催、写真展や講演会の開催といった教育活動を行い、フェアトレードの理解浸透に取り組んでいます。日本の女子大として初めての認定ということもあり、ジェンダーの観点からもフェアトレードをさらに推進していきます。
フェアトレードに取り組む大学は増加傾向にあります。「大学名+フェアトレード」で検索すると、その大学のフェアトレードへの取り組み状況が分かります。高校生は志望大学のフェアトレード取り組み状況を調べてみるのもいいかもしれないですね。
(取材・文/大友康子)