「キャンパスへ行きたい!」大学生の気持ちが表れたアンケート結果を菅総理にも提出
昨日ご紹介した各大学の「コロナ禍の中で学生の理解・納得を得るための工夫例」、各大学とも学生のために、さらに大学によっては心配する保護者のためにもさまざまな対策を行っており、それはもちろん大いに評価できる。しかしながら、1回目の緊急事態宣言解除後、小中高校はほとんどが100%対面授業を再開している状況を鑑みると、大学ももう少し何とかならないものか、とも思ってしまう。
そんななか、日本全国の大学から有志の学生が集い、「大学生対面授業再開プロジェクト」という団体を結成し、対面授業再開を目指して活動している。全大学の全面対面授業化を目指すというよりも、「対面とオンラインの選択制になること、最終的には大学生がより良い学びを享受できること」を目指しているという。
「大学生対面授業再開プロジェクト」WEBサイトでは、後期の対面授業の割合を調べたアンケート結果や入学式・新入生歓迎イベントが開催された大学一覧(随時更新)を掲載。彼らが行ったアンケート結果は菅総理にも届けられたという。
来年度まで遠隔授業の単位上限が撤廃されている特例に危機感
大学設置基準第32条第5項で遠隔授業は60単位を超えないこと(短期大学においては30単位)と定められているが、来年度末までの遠隔授業の単位はこれに含まない、とする特例が令和2年7月27日に定められた。
一般的な学生は半期で16~24単位程度取得する。来年度末まで現在のようなほとんどの講義が遠隔で行われる状態が続くと、遠隔授業で取得する単位が80単位程度になる。この分が算入不要となり、令和4年度より従来の上限60単位分を想定した遠隔授業が展開されると、卒業所要単位のすべてが遠隔授業で取得できることになる。
それはオーバーな想定かもしれないが、通信環境を整えたり、パソコンやプリンタ―の購入、対面授業であれば大学側で印刷して配られる資料を各自印刷しなくてはならないなど、学生側に大きな負担がかかっていることは事実。私立大学の場合、ほとんど活用できていない施設の維持管理にかかる施設設備費などの返還もなく、学費も対面授業が行われていた時と同じだけ徴収されており、通信制大学やオンライン大学と比べるとはるかに高い学費が設定されたまま。
「大学生対面授業再開プロジェクト」では、遠隔授業の単位数を制限することでこれを是正していただきたいと考え、サイト上で「遠隔授業の60単位上限算入不要の特例の撤廃の署名」の募集も行っている。
対面でさまざまな人と関わり合う経験ができるような工夫を大学に求める
「大学生対面授業再開プロジェクト」のハンドルネーム・みやさん(首都圏私大1年)に、対面授業再開への思いやプロジェクトとしての活動内容、昨日の記事でご紹介したような「コロナ禍における各大学の工夫例」についてご意見をお聞きした。
「当プロジェクトは、『大学に行きたい』という同じ願いを持った学生たちによって構成されていますが、私たちのひとつの目標として、今の大学生の状況を世間の皆さまの知っていただき、そして大学生の大学に通いたい気持ちを社会に届けるということがあります。
そこで我々の主な活動としてアンケート調査と、そしてそれをメディアや政府に届けるということを主に行っております。アンケートは現在までに2回行いました。まずひとつ目のアンケートは主に前期の振り返りと、後期の対面率はどのくらいになりそうかということを調査しました。2回目は大学名、学部名を記入してもらい後期の対面率を答えていただくというものでした。
いずれのアンケート結果も多数のメディアに取り上げていただきました。さらに、議員の方々や文科省の方々にも我々のアンケート結果のみならず、意見書もお渡しすることができました。これらの活動により、ニュースや記事に我々の活動が取り上げられたことで世の中に大学生の現状を伝えられたのではないかと思っています。
また、匿名のアンケートであることから、大学生のリアルな声が集まったとも感じています。オンライン授業を望んでいる学生も多数います。しかし、現状では対面授業を望む学生には対面授業を受ける自由、選択肢がありません。そのことが大きな問題と感じています。
文部科学省が発表した工夫例には、特に1年生対象のオリエンテーションや交流会など、オンライン授業になって各学生に細やかな目が行き届かなくなった部分を上手く補っている事例が多いと感じています。
しかしながら、オンライン座談会、オンライン相談会などが未だ多く、それには疑問を感じています。なぜならオンラインでの開催には、偶然というものが存在しないからです。話す相手も、時間もすべて予約をする必要があります。そのため自らアクションを起こすことが難しい学生にとっては、その予約という行為が一つの大きな壁となっている場合が考えられ、対面でさまざまな人と関わり合うということを、より経験できるような工夫を大学にはこれからも求めたいと考えます」
(取材・大友康子)