体験入学の準備
注意したいこと
ここでは、通学開始までに準備すべきこと、注意点などを紹介したい。実際に体験入学する際に必要となる基礎知識も、保護者が事前に必ず教えておこう。
・余裕を持って少なくとも1週間前には帰国する
日本への一時帰国の日は、少なくとも通学開始の1週間前に設定しよう。時差ボケを解消し、環境の変化に体を慣らすためにも余裕をもったスケジューリングが必要だ。子どもの体調管理はぬかりなく行い、万全な状態で当日を迎えさせたい。
・日本の交通ルールを教えておく
車社会であるアメリカなどからの一時帰国生となると、徒歩での通学経験も少ないだろう。なじみのない日本の街でのはじめての徒歩通学となる場合には特に注意が必要だ。このような場合には、事前に親子で学校までのルートをシミュレーションしておこう。事故につながりやすい箇所を見つけたら注意を促し、どうふるまうべきか教えよう。日本の交通ルールの基本的なものについても事前に必ず教えておきたい。
・学校のルールを確認し、子どもと共有する
服装や禁止事項といった学校のルールについては事前に問い合わせて確認し、子どもと共有しておく。
・日本の学校ならではの習慣について説明する
海外の学校ではあまり見られない日本の学校ならではの習慣について、予備知識なく登校して子どもが面食らわないように、あらかじめ説明しよう。例えば、上履きの習慣や給食当番、掃除当番といった「当番制」などがこれにあたる。
日本を知っている保護者にとっては当たり前の習慣でも、はじめて見る子どもの目には奇異に映ることもあるようだ。こうした感情が日本の学校に対する苦手意識につながらないようにするためにも、充分に注意したい項目だ。
用意するものと費用
可能なら一時帰国する前に学校に問い合わせ、何を準備すべきなのかを具体的に確認しよう。
教科書はどの出版社のものが必要かを確認し、もし補習校などで共通して利用しているものがあるならば日本に持ち帰る。同じものを持っていなくても、学校が余剰の教科書を保有している場合には貸与してくれることが多い。また、日本の親戚・知人などから借りられるものがあるならば助けてもらうのも一つの手だ。
そのほか必要となるもののリストには、上履き、通学帽子、体操服、スクール水着、鍵盤ハーモニカやリコーダー、絵具や筆、習字道具などがよく挙げられる。ただし、本帰国後に使用予定があるならばまだしも、一時的な通学のためだけに無理をしてまでそろえるのは現実的ではないので、先生とも相談しつつ、できる範囲で用意しておこう。
費用について、特に大きな出費が必要になるようなことはないだろう。公立校ならば授業料は概ね不要と考えてよい。
給食がある学校では、給食費が日割りで請求されることがある。しかし、1食あたり2~3百円といった金額が一般的なので、2週間程度の通学ならばわずかな額だ。
また、ケガや事故を保障するための共済への加入を求められることがある。こちらはたとえ短期間の通学でも年額での支払いを求められるが、もともと数百~千円程度と大きな額ではない。
保護者としての心構え
体験入学は、あくまでも気軽に日本の学校を覗いてみよう、といったスタンスで行うものだ。経験しておかなければデメリットがあるといった性質のものでは決してなく、私立校への入試などで経験の有無が考慮されるといった事例もほぼ見られない。わざわざ海外校を欠席したり、無理にスケジュールを調整してまで行う必要はないだろう。
子どもがうまく学校に溶け込めるかどうかは、クラスの雰囲気や本人の性格に依る面もあるため、誰にとっても一様にメリットがあるわけではないことを理解しよう。特に人見知りであったり、新しい環境に馴染むのに時間のかかる子どもにとっては、体験入学がかえってストレスになることも。せっかく日本の学校の空気をつかみに行ったのに、逆に悪い印象を持って帰ってしまっては本末転倒なので、ここは当人の資質や希望を汲んで判断してほしい。
また、保護者として、「日本は何かと面倒だ」「だから日本の学校はよくない」などといった、日本の学校を貶める愚痴をこぼすことは絶対にしないように気をつけたい。このような空気のもとでは、子どもも日本に対する拒否反応を起こしがちになる。まずは保護者が日本の学校を前向きにとらえ、そして万全な準備で、かつ子どもの心に負担を与えないよう送り出してあげるべきだろう。