多くの地域でまん延防止等重点措置が採られる中で行われた2022年度の中学入試。受験者側では早めの日程の試験を受ける児童が増え、学校側では入試日を早めたり一次試験の合格者数を増やしたりする動きがありました。双方で早めに決着をつけようという意識が働いたようです。
~関西&中国エリア|大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県・岡山県・広島県~
2年ぶりに中学受験率が上昇
近畿2府4県(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)の受験者数は16,892人となり、昨年より187人減少した。しかこれは、小学6年生の児童の総数が3,825人減少したことが影響しているため。中学受験率(統一入試開始日の午前の受験者数÷近畿2府4県の小6児童数)は9.74%(昨年は9.64%)となり、2年ぶりに上昇した。
総志願者数は増加
受験者数が減少する一方で、総志願者数は62,264人で昨年より219人増加。1人あたりの平均出願数は3.69(昨年は3.63)と増えた。これは、午後入試が定着するなか、人気校の午後入試への参入が増えたことが影響していると思われる。そのため初日から2日間で3回以上受験しているケースが多く、出願数が増えても短期決戦であることは変わっていない。
安全志向の2022年入試
関西圏の2022年入試はこれまでにない安全志向の受験傾向となった。男子校の灘、甲陽学院、大阪星光学院、女子校の神戸女学院、四天王寺で志願者数が減少した。安全志向となった要因は、無理をさせたくない保護者心理が影響しており、コロナ禍で受験勉強への取り組ませ方が想定通りではなかったことが、より確実な選択へ向かわせたと思われる。
全国区の灘中入試
毎年全国から受験生が集まる灘の入試は昨年より志願者数が34人減少し、653人となった。首都圏からの出願数は、昨年はコロナ感染リスクから大幅に減少したが、今年は16人増加した。首都圏を含む関西圏以外の地域からの志願者数はほぼ横ばいとなった。志願者数の減少分の多くは兵庫と大阪であったことから、ここでも2022年入試が安全志向だったことがわかる
府県またぎの受験が減少
コロナ禍の影響で、昨年に続き「府県またぎ」の受験が減少。特に兵庫から大阪や奈良方面の受験が減少し、県内に留まる傾向が強くなっている。これは併願日程での兵庫県の志願者数の増加にも表れている。昨年は「ラッシュ時の長時間通学を避けたい」というコロナ禍ならではの動きとみられたが、コロナがきっかけとなり、「(通学)時間」への考え方が変化していると思われる。
共学の進学校が人気に
昨年大幅に難化した須磨学園夙川は志願者総数が減少したものの、合格者数を絞ったこともあり、全日程で倍率が上がり、さらに難化した。こうした難化傾向を受けて、同じ共学の進学校というカテゴリーへの志望校変更が増え、兵庫の三田学園や雲雀丘学園、滝川第二が注目された。志望変更という視点であっても、各学校が持つ魅力が伝わり、大きく志願者数を増やした。
大学付属校人気が頭打ちに?
近年右肩上がりだった大学付属校人気が落ち着いてきた。統一入試開始日の午前の志願者数でみると、関関同立系の付属校で合計122人減少した。一方で、産近甲龍の付属校は56人増加していることから、大学付属校でも安全志向であったことがわかる。志願者数が減少した同志社女子と立命館は昨年志願者数が多く、大幅に難化した反動と思われる。
新型入試が落ち着きを見せる
近年増加傾向であった新タイプ(プレゼン・プログラミングなど)の入試は、今年については足踏み状態となった。コロナ禍で体験イベントの実施が難しいことから、十分に意図を伝えるのが難しいと判断されたからかもしれない。今年の新入試で注目されたのは金蘭千里の中期入試で実施された得意科目選択入試(国語または算数)で、あわせて107人の志願者が集まった。
制作協力/日能研関東、日能研関西、日能研東海 日能研 https://www.nichinoken.co.jp